誰がログ

歯切れが悪いのは仕様です。

2回目の緊急事態宣言翌日の出勤,保育園,大江戸線など

2回目の緊急事態宣言が出ましたね。前回も宣言直後に何か書いていたようなので,記録も兼ねて少し。

保育園は

やはり一番心配だったのは保育園がどうなるかでした。1回目の緊急事態宣言時に書いた記事は次のような書き出しになっています。

東京都江東区に住んでいるのですが,緊急事態宣言への対応として,江東区では今日からGWまで保育園が原則休園です。うちでも4歳児を預けていたので,今日からしばらく家で一緒に過ごすことになります。
大学のオンライン化と保育園の休園 - 誰がログ

今回は,区からも保育園からも基本的に休園にはしないという連絡が来て少し安心しました。ただ前回よりかなり感染が拡大しているので,園関係で感染者が出て短期間の休園になるという可能性はかなり高くなっているのではないかと思います。

前回の大変さについては下記の記事に少し書きました。

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たまたま翌日に出勤

ところで,下記の記事のように宣言翌日も人出が減っていないという記事をいくつか見かけました。

www.asahi.com www3.nhk.or.jp

私もこの「翌日」に出勤した人間の1人でして,正直言うと読んだ時はややげんなりしました。なぜかというと,昨年末の12/29日から宣言が出た日までずっと在宅勤務にしていて,1/8日も予定では休むはずだったところ,どうしても出勤しなければ片付けられない業務が発生したので急遽行かざるを得なかったという事情があったからです。こういう見方をする時は個々の事情は捨象するというのは分かるんですが,心情的にはね。

ちなみにその業務というのは書類に押印が必要とかその類のものではないです。少なくとも私の勤務先では会議や打ち合わせ,書類の押印・サインになどについてはかなり柔軟な運用になっており,それで出勤しなければならないということは基本的にありません。急いで仕組み作りをしたり柔軟な対応を続けてくれている方々には感謝です。

昨年11月からずっと在宅勤務の日を最大限増やすように努力しています。というか,そこそこ無理もしています。

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在宅勤務にしていた年末年始は,両実家への訪問や初詣はせずに家族と過ごしつつ基本的には仕事もしていました。例年年明け締切の仕事がけっこうあるんですが,今回は原稿,査読,校正,指導学生の修士論文へのコメントなどちょっと量が多かったように思います。あと年度末が近づいているので教務関係の各種。対面授業の希望調査・調整とか,コロナ禍関係で増えたものもあります。

今年の仕事の中にはどうしても出勤しないとできないものが含まれてしまっていますので,なんとかそういうものを固めて在宅勤務の日を多く取るようにしています。家に持ち帰らなきゃいけないものはある程度事前に分かるのですが,急に研究室にある書籍を確認したいとなるようなこともあってやはり不便ではありますね。

緊急事態宣言が出たりしたらすぐに翌日から完全リモートワークに切り替えられられるようにしておかない企業や組織が良くないという意見も分かるんですが,1/8日に出勤した人の中には連休明けから在宅勤務になるので職場から何か持ってこなきゃいけなかったという人もいたのではないでしょうか。上にも書いたように私はそういう事情ではなかったのですが。

周囲の様子

さて,上の記事に対しては「さすがに翌日からいきなり人出が減らなくても不思議ではない」という反応があって私もそれには同意するのですが,じゃあ連休明けからどれくらい人出が減っていくかというところには不安なところもあります

ただ仮に(あまり)減らなかったとしてそれをどう考えるかというのには色々あって,すでに出勤を減らせるところは減らしたままだという事情もあると思うんですよね。私もずっとというわけではないですが11月から前回の緊急事態宣言前後に近い勤務形態にしていますし,周囲の他業種の方に話を聞いても「ずっと在宅勤務が続いている」という人も少なくありません。もちろん中には在宅勤務減ったという人もいるみたいなんですが,業務内容にもよりますしね。

あまり好きな表現ではないのですが,街の「緊張感」はやっぱり前回の緊急事態宣言時に比べるとあまり高くないかなと感じます。とりあえず近所のドラッグストアとか今のところ平穏そのものですね。ただこれは不必要な騒ぎがなくなったということでポジティブに捉えた方が良さそうな気もします。私の体感としては,あの緊張感はとても長くは継続できないし,継続したとしても大変なので「慣れる」までに「緊張感がなくても感染拡大をある程度防げる仕組み」を作るのが重要だったのだろうと思います(今後も)。日常生活に取り入れることができた新しい仕組みもあるものの,十分にできたかというとそうでもないかなと。

今回の機会もそういう「仕組み作り」を進める推進力としても機能すると良いのですけれども。私は個人のがんばりに頼るのは心許ないので国とか組織がそういうところがまずきっちりお金をかけて(もっと)やってほしいと思います。

大江戸線

ちょっと心配なのが大江戸線です。出勤ルートに大江戸線が含まれているのですが,帰宅時は明らかに人が多かったです。おそらく本数を減らしている運用が原因なのではないでしょうか。私は出勤時は早朝の5時台に乗るのでそこでは従来と乗客数が変わらずやや油断していましたが,帰宅時は時間がかかっても少し別のルートを考えた方が良いのかもしれません。Twitterで検索すると似たようなことをつぶやいている人はけっこういて,朝も通常の出勤時間帯付近はだいぶ混んでいたようですね。

言語の研究者はことばの規範とどう付き合う(べき)か,についてちょっとだけ

はじめに

下記の話題に関して,「言語の研究者は(軽々しく/何があっても)ことば遣いに関する規範に口出しするのは良くない」という反応を見かけたので,関連して今の自分の考えを少し書いておこうと思いました。

togetter.com

解説や問題の整理という類のものではなく,実際の研究者がどう考えているかということの1例だと思ってください。とりあえず以下ジェンダーに関わる話はぜんぜんしていません。というか書いた後に思ったのですがとてもごちゃごちゃしているので,もっと良い議論ができる人の叩き台になれば僥倖です(叩けるほどの強度もないかも)。

言語学と規範

言語学の入門では,どれくらい詳しくやるかは差があるでしょうが,必ずと言っていいほど「言語学は規範的ではなく記述的である」というような話が出てきます。重要なポイントの1つなので,内容をかなり絞り込んで作った下記の「言語学入門入門」でも取り上げています。かなり早い段階で一度はしておいた方が良い話なんですよね。


言語学の授業例:言語学入門の入門(音声付きスライド)

このブログでもおすすめしている黒田龍之助『はじめての言語学』も「言語学入門の入門」を兼ねているような本なのですが,その「第1章 言語学をはじめる前に」でもいくつか規範に関する話が取り上げられています。

はじめての言語学 (講談社現代新書)

はじめての言語学 (講談社現代新書)

「規範」の対象

ここで言っている言語に関する「規範」とは,「この言い方が正しい」とか「このことば遣いは間違っている」とか「こういう表現を使うべきだ」といった考えやルールのようなものです(きちんとした議論をするなら「規範」とは何かとかその種類などについても具体的に整理した方が良いです)。

ちょっと注意が必要なのは,上で紹介した動画でも出てきますが「言語学は規範的ではない」というのはおおよそ「言語学自体に直接何が正しい/間違っていることばかを決める仕組みや力はない」ということで,規範のことを研究しないというわけではありません。なじみのない方には言語政策の研究などが分かりやすいかと思いますが,ざっくり言うと社会言語学と呼ばれる領域では規範を取り扱う研究がたくさんあります。

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じゃあ何が言語に関する規範を決めているのかというと,基本的には「人」が決めているのですね。言語学の研究者だって人なので,言語学自体に規範を定める仕組みがなくても,言語学の研究者が規範の決定や形成に関与することはあり(え)ます。というより,専門家はより簡単に権威・権力になってしまうので,「言語学は規範的ではない」という言語学そのものの性質の話と一緒に「言語学の研究者は規範的であってはならない」という研究者としての規範の話がセットになっていることも多いようです。

「規範」と実際に付き合うことの難しさ

私も言語学の研究をはじめた当初はできるだけ規範に干渉しないのが良いと考えていました。今ではちょっと方針が変わって「言語学の「規範」に関する考え方については広く知ってもらった方が良い」と考えていて,その目的のために個別のトピックに言及することもあります。

理由はいくつかあるのですが,簡単に言うと言語学の研究者をやっていると「言語の規範との付き合い方に悩んでいる人がとても多い」ということを感じるからです。言語学の概論の授業なんかやってコメントを募ると,言葉づかいに関する「正しいか」「間違っているか」という質問や悩み相談がたくさん出ます。また,規範は場合や条件によっても必要なこともあるのですが,そんなに必須ではない,しかも特に根拠もない強すぎる規範のために必要ない問題が生じていると感じるシーンにも出くわしてきました。言語学の考え方を知ってもらうことでもう少しことばについて生きやすい社会になってくれるなんてことはないかな…というのは難しそうですが,個人個人のレベルで心理的な負担が減ることくらいはあると良いなと。

上にも書いたように,専門家や研究者は強い権威・権力として機能してしまうので,もっと慎重であるべきという姿勢・態度もありかと思います。ただ,不干渉や「中立」も関わらないという形でではあるものの選択の1つであるということは重要かなと。

また「完全に中立」になるのは困難というのは色んなことに対して言えると思うのですが,実際に(日本で)言語学の研究者をやっていると「規範」に関わらずにいるのはかなり難しいのではないかと思います。特に付き合い方が難しいのが語学の授業なのではないでしょうか。実際,私のこの問題に対する意識の変化は,語学の授業(実は日本語教育のクラスの担当経験が少しだけあります)と,いわゆる日本語文章表現系の授業(レポートの書き方とかやるやつ)を経験したことが確実に影響しています。

こういう授業では見せ方や強さはある程度コントロールできるんですが,何らかの形で「規範」を示さざるを得ないんですよね。私はこういう授業でも時間的な余裕や機会があれば,言語学の規範の考え方や実際に今ある規範がそれほど強固なものではないことについても話をすることにしていますが,授業を受けてる方としては嫌ということも十分ありそうです。そこまで強い反応はありませんが,「そう言われても困るんで正しい表現を教えて下さい」的なコメントはたまにあります。第2言語話者(非母語話者)は第1言語話者(母語話者)よりも規範的に厳しい目で見られることもあるので,その点も悩ましいです。どういうことかというと,母語話者が使っている表現を非母語話者が使うと「○○語ができない」という評価を受けたりするんですね。それなら規範的な表現をきっちり教える方が良いんでしょうか。

ほかの研究者の方のスタンスがどうなのかはあまり分からないのですが,私は「語学の授業をしている間は言語学の研究者ではないから」とまで完全に割り切るのも難しいなと感じていまして。たとえば私が「レポートでは丁寧体にはせず「である」体で書きます」とか説明するのって,レポートや論文の文体研究なんかをする人が将来集めるデータや今後構築されるコーパスに干渉する可能性があるわけですよね。

「完全な中立を貫くのは難しい」から「なら積極的に関わるべき」となるのはこれだけだと飛躍でしょうし,ここまで書いたことだけから今の私の立場を導き出したり正当化できるとは考えていないのですが,研究者としては「できる限り意識的に関わる(あるいは意識した上で関わらない)」というのがポイントなんじゃないかと考えています。意識した上で関わらないというのは変な言い回しに見えますが,「なんで関わらないの?」って聞かれた時にちゃんと答えを返せるということだと思ってください。

専門家が(webで)できそうなことは何か

言語の研究者・専門家と一口に言ってもカバーしている範囲がかなり広く,またかなり個人個人で異なりますので一概には言えませんが,「規範」そのものに直接口出しするには言語学だけでなく社会学や倫理学といった分野の知見も必要かと思います。今回のトピックで言うなら「言語学」にもジェンダーと言語の研究は色々あるんですけどね。

言語学一般で言うとやはり得意なのは言語(と関連事象)に関する事実や資料の提示・整理なので,こういう議論や問題に向き合うなら(今回飯間氏もやっているように)そういう得意なところに貢献するのが良いのではないかと思います。近藤氏の「だんまり」という表現も,良いか悪いかなどの意見を表明しろという意味(だけ)ではなく,何らかの形で関わるのが望ましいというくらいの捉え方が許されるなら,その方がかえって専門家の参入ハードルが下がって良いかなと(下がることが良いことかどうかはまた別に検討が必要な問題)。

あと,研究者や専門家ができる重要な仕事は「本を紹介すること」でしょうか。私がwebで細々と専門家以外にも向けて書き物をしていて感じるのは,本や論文,記事など,専門家が書いたものは思ったより存在そのものが知られていないということです。これは分野による差もありそうですが「読まれない」以前の問題だと思います。なので,ここ数年半ば無理矢理にでも書く記事には読書案内など本の紹介を付けることにしています。

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ブログやSNSなど,webで書くことは本を読んでくれる人以外にも広くリーチするので良いと思うのですが,webはwebで独特の難しさがあるんですよね。良く知られていることとしては,読み手が多種多様(専門の人ばかりではない)とか,広く読んでもらうのが難しく逆に変に炎上してしまうこともあるとか,色々あるんですが,私が専門的な内容について難しいなと思うのは,補足や続編,訂正の読んでもらいにくさです。自分が書いていても感じることですが,ほかの方の書いた記事でも,最初のきっかけになった記事や発言だけがバズってその後のより重要な情報がぜんぜん知られていないということありすぎてほんともったいないなと。仕組みで何とかできるんですかね。

あと長く丁寧に書くと今度は長文は読んでもらえない問題があります。長文だけでなく,Twitterの少し下にあるリプライですら読まれないことも珍しくありません。私は書いた経験だけなら長くなったので「いつか検索で辿り着いて助かる人がいれば良いな」くらいの気持ちで書くことが多いのですがさいきんは検索もそんなに信頼できないみたいな話がありますし,今後どうしましょう。

おわりに

なんか書きたいことだけ散発的に並べただけの記事になってしまいました。問題が難しく悩ましいので大体こうなりそうだと書く前から思っていましたけど。たとえば「言語学の研究者は規範的であってはならない」というのは研究倫理に近い話なのか個人の信念の話なのかとか,規範にぜんぜん関わらないって言っちゃうと危機言語・方言の教科書を作るといった活動はどうするのかとか,「(専門家として)事実を提示するにとどめる」という抑制的な選択をするにしても単なる事実の提示がそれ以上の「意味」や機能を持っちゃうのってそれこそ(自然)言語の避けがたい性質ですよね,とか書いてない気になることはいっぱいあるのですが,もう時間も余力もないのでこの辺りで終わりにします。どなたか私よりもっと詳しい方がまとめたり議論を進めてくれたりすると嬉しいです。

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1位は『ワンダンス』:私の2020年マンガBEST5+α

はじめに

計画性がないのでこういうのだいたい年内に書けないんですよね。

面白さとか好きさでランキングを付けたというよりは,2020年に私にとってインパクトのある出会いだったマンガを5つ選んだ,という感じです。なので,そのマンガ自体は始まってからかなり時間が経っているものもありますし,かなり前から読み続けているマンガも対象になりません。

1『ワンダンス』

『さよなら私のクラマー』のレビューを読んだ方は意外に思われるかもしれませんが,実は私の中で2020年一番インパクトのあったマンガは『ワンダンス』でした

レビューも『さよなら私のクラマー』より前に下書きのファイルを作ったんですが,書きたいことがいろいろあって(動きや音の描き方はもちろん,ストリートカルチャーの制度化,吃音やSNSとコミュニケーション,説明の言語化,などなど)なかなか書き切れません。次の巻が出るとまた書くの難しくなるので早く書いてしまいたいのですが。

2 『さよなら私のクラマー』

はい,2位は『さよなら私のクラマー』です。これは語りたいことはかなり語ったので(「守備型のチームやプレーヤーをかっこよく描いていること」とか書き忘れましたが),気になる方は以下のレビューをご覧下さい。

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3『リエゾン ―こどものこころ診療所―』

これも実は『コウノドリ』の最終回に関する記事で「好きだけど読む前に覚悟を求められるマンガ」として少し言及しました。

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「障害」を中心に虐待をはじめとするこどもに関するさまざまなトピックを描いています。自分にこどもがいることもあってものすごくヘビーなんですが好きなマンガです。

4『絢爛たるグランドセーヌ』

別にダンスマンガが取り立てて好きというわけなないと思うのですが…でもそういえば『昴』も好きでした。バレエやダンス自体の話も面白いんですが,『さよなら私のクラマー』でも言及した「親や指導者がスポーツなどをやっているこどもにどう関わるか」という視点で見てもいろいろ面白いですし考えさせられます。

5『刷ったもんだ!』

印刷関係の話がかなり細かく書かれていて面白いです。私はいちおうものを書くしごとにも関わっている割にはそういう技術的なところとか詳しくないので専門の方から見てどうかというのは分からないのですが…

そのほか

ほかにもいろいろ読んでいるのですが,さいきん楽しみなのは『アフタヌーン』と『モーニング』ですね。特に『アフタヌーン』からは「ワンダンス」のほかに「ブルーピリオド」「メダリスト」「はしっこアンサンブル」「マージナル・オペレーション」「ダーウィン事変」「友達として大好き」,

『モーニング』では「リエゾン」「刷ったもんだ!」のほかに「ハコヅメ」「あせとせっけん」「ボールパークでつかまえて!」「スインギンドラゴンタイガーブギ」辺りでしょうか。

もちろんどれも究極的には個人の好みなんですが,気になるものがある方はのぞいてみてはいかがでしょうか。もう最終回を迎えちゃうのも中にはありますけどね。