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歯切れが悪いのは仕様です。

kindleの夏のセールで開拓社の言語学関連書籍が50%オフ(8/5(木)まで)

kindle本夏のビッグセールで開拓社の言語・文化選書の一部が対象になっています。8/5日(木)までですけれど,言語学関連で良いものがけっこうあるので興味のある方はチェックしてみてください。私のブログでも何度か取り上げているとおり,このシリーズはkindleのセールに良く参加しています。

www.amazon.co.jp

くれぐれもセールの期限にはご注意ください。またこのシリーズの本すべてが50%オフにはなっていない可能性もありますので,購入前は必ず値段(+割引率)のチェックをしてください。

各分野の入門書

私もこのシリーズすべてに目を通しているわけではありませんので,中身を確認したことがあるものからいくつかおすすめを挙げておきます。

実際にはあまり専門知識がなくても読めるものからけっこうしっかりした専門の入門まで幅があります。学部の専門の授業や大学院の授業でテキストとして使えるものもあるので,学部生,大学院生や近接領域の研究者だけでなく,自身の専門でない分野の授業を担当することになっ(てしまっ)た教員の方などは電子版で(も)持っていると助かることがあるのではないでしょうか。

音韻論

田中伸一『日常言語に潜む音法則の世界』

音韻論・形態論(語形成)

窪薗晴夫『ネーミングの言語学―ハリー・ポッターからドラゴンボールまで―』

レキシコン・形態論(語形成)

日本語文法・統語論

岸本秀樹『文法現象から捉える日本語』

慣用句

石田プリシラ『言語学から見た日本語と英語の慣用句』

言語と認識

廣瀬幸生・長谷川 葉子『日本語から見た日本人』

専門書

開拓社の専門書もセール対象になっているものがあります。この中では特に『形式意味論入門』は前のセールのチェックの時には見なかったので嬉しいです。

そのほか

以下は,主に購入予定か購入したけれどもきちんと読めていないものです。内容を(しっかりとは)確認していないものばかりですので,おすすめというわけではありません。あくまで参考まで。ただ李在鎬『認知言語学への誘い』は少なくとも言語関係の研究者は著者買いしても良いんじゃないかなと。あと池内正幸『ひとのことばの起源と進化』はたしか以前のセールの時には対象ではなかったような。

東京オリンピック開始1週間のテレビ番組(主にNHK)雑感

はじめに

オリンピックが開始してから1週間のNHKの番組がホスト国のメインの放送としてはあまりにもひどいと思ったので簡単に記録しておきます。なお,NHKの番組にずっと張り付いているわけではなく,仕事・家事育児の合間に見ているだけですので私が見ていないところで下記で述べるようなこととは違う放送が十分行われている可能性はあります。また,民放で良い番組が放送されている可能性もあります。

なお,私はスポーツは好きだけど今回の東京オリンピック・パラリンピックには反対という立場ですので,厳しめのバイアスがかかっている可能性はあります。

また始まった直後にこんなことを書きましたので

dlit.hatenadiary.com

もともと良い印象は持たないまま見ていたということもあります。この時,もうオリンピックについては書かないと書いているのですけれど,さすがにひどさが予想を超えてきたので…

ところでなんでひどいひどい言いながら結局見てるんだと不思議に思われる方もいるでしょう。一番の理由はテレビ放送そのものとその周辺のディスコースを自分で体験しておいた方が良いんじゃないかということです。私はCDA (Critical Discourse Analysis)が専門というわけでもないですし,スポーツ関係の言語現象も自身の研究対象になることはそれほどないのですけれど(たださいきんのテーマの1つである外来語研究には関連します),主査や副査を担当する学位論文(主に卒論)のテーマとしてスポーツと言語の関わりが出てくることが定期的にあります。新聞等は後でコーパスなどのテキストデータを見れば良いことが多いのですけれどテレビは後で実際のデータを振り返るのが大変なこともあるんですよね。

こういう放送があったという記録

どちらもTwitterではその時に簡単に触れています。

体操のバイルス選手に関する発言(2021/07/31)

体操女子でアメリカのバイルス選手がメンタルヘルスを理由に棄権しかなり話題にもなっていました。

www.bbc.com

途中からぱっと見たので前の文脈がよく分からなかったのですが,体操女子の何かの競技終了後(女子総合個人?),スタジオにいる(おそらく)NHKの人から「バイルス選手が棄権したので他の選手は目の色を変えてたんじゃないですか」といった内容の発言がありました。細かいところは違っているかもしれませんが,「目の色を変える」という表現が使われたのは確実です。その表現にぎょっとしてしっかり見始めたくらいです。

競技会場の返答は「素晴らしい選手なので見られないのは残念です」といったような内容だったのでほっとしました。返答した人のファインプレーと言えるのではないでしょうか。

しかし,バイルス選手の棄権の理由に関わらず,ひどい発言だと思います。仮に特定の選手がいなくなったことでほかの選手が有利という事実に触れるとしても,もっと別の表現があるのではないでしょうか。この質問が直接選手に投げかけられなくて良かったです。

ゴルフ松山選手のプレーの扱い(2021/08/01)

松山英樹選手が3位決定のプレーオフに挑んでいたところで,パーパットを外してメダルの可能性がなくなった瞬間に中継を打ち切ってスタジオへ移りました。少なくとも直後はその後のプレーを流さず,しかもすぐにほかの競技に中継を変えなければならないのかと思っていたらしばらくはスタジオにいる人たちが話す時間でした。もしかしたらプレーオフになったことで放送の時間がかなり厳しくなっていたといった理由があったのかもしれませんが,さすがになんとかして松山選手のプレー終了までは放送することができなかたのでしょうか。

この点については下記のように外した時点でプレー終了だったということを教えていただきました。

最初に書いていた「NHKは「メダルの可能性がないなら放送する価値がない」と考えていると受け取られてもしかたないやり方だった」というのは言い過ぎですね。私の認識と事実の把握も間違っていたということで,申し訳ありません。

そのほか

こちらは,どちらかというと「こういうものがない」というタイプの話ですので,私が見ていないところでは出てきていた可能性が十分にあります。

日本以外の国・地域の扱い

上で書いた2つのケース以外にも全体としてスポーツやアスリートへの敬意がない放送内容が散見されますが,特にホスト国にも関わらず「他国からこういう厳しい状況の中参加してくれて素晴らしいパフォーマンスをしてくれた/ている」という視点や表現が少ない気がします。

たとえば7/31日のトランポリンの実況でも,失敗した選手のスコアが出るのを待たずに日本の選手の決勝進出をアナウンスするということがありました。私の感覚ではせめてスコアが出るのを待つべきではないかと思います。ただほかの選手の失敗をどれくらい喜んで良いかというのは競技によって違ったりもしますのでトランポリンでは珍しくないことなのかもしれません。

日本の選手でも結果が出なかった(メダルが取れなかった)選手の扱いは少ないという点では首尾一貫しているように見えます。「勝つことよりも…」というオリンピック関連の有名なフレーズはさいきんでは触れられることもなくなったのでしょうか。

また,いちおうメダル数のランキング表のようなものは作っていませんが,ナレーションで「日本が金メダル数で1位になりました」のようなことは言っていますよね。少なくとも1回は確認しました。

コロナ禍への言及

これは上でも触れた記事に書いたのですけれど,番組の中でスポーツに直接関わっていない多くの人たちがコロナ禍で苦しんでいることへの言及がとても少ないと感じます。競技直後のアスリートの短いインタビューでそこまで触れることは難しいかもしれないので,スタジオにいる人がフォローした方が良いのではないでしょうか。

今回は特に,苦しんでいる人,本来できるはずのことややりたいことができない人も多い中で競技ができていることを自覚しているというメッセージをスポーツに関わる人たちが積極的に出していくべきではないかと考えています。たとえば東日本大震災の時はアスリートから「こういう状況の中で自分が競技をやっていて良いか迷いますが…」といった声が競技後のインタビューなどであったような記憶があるのですけれど。

おわりに

放送が局所的にある程度応援的になるのはしかたないのかもしれません。ただ私の見るところ,アナウンサーなどNHK側の人がむしろ日本寄りのことを言い,解説など競技により近い人の方がより冷静でフェアな発言をしている場面を見かけることが少なくなく,放送局としては問題ではないかと思います(逆ならまだ気持ちも分かるんですけどね…)。

確かに,メジャーな競技に関しては長年関わってきた人がいたり,マイナーな競技に関してもたくさん勉強して実況に挑んでいる人がいたりするかもしれません。しかしその前にスポーツに関するフェアネスやオリンピック・パラリンピックの精神のようなものは学んだり確認したりしないのでしょうか。

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「若い人」はワクチンを打ちたい人でもなかなか打てないのでは(東京都江東区の例)

小池都知事の「若い人もワクチンを打ってほしい」という発言に対して「打ちたくても打てない」という指摘がやはり出ています。私もはてブのコメントやTwiterに簡単に書きましたけど,具体例も示しておいた方が良いと思うので記事にしておきます。

私が住んでいる東京都江東区では,30代のワクチン接種予約が始まってすぐ,10代〜20代の予約が始まる前に枠が埋まってしまったようです。

江東区の予約開始日のページを見てみると,30代の予約開始日は2021年7月15日です。

しかし,「現在受付している予約枠は概ね定員に達しました」というメッセージが上と同じ日,2021年7月15日17:30に出ています。引用もしておきます。

ワクチン接種の予約状況について(7月15日17時30分更新)
現在受付している予約枠は概ね定員に達しました。
現在は、キャンセル発生等による僅かな予約のみが可能です。
今後の予約受付については、ワクチン供給について国・都に対し早期の情報提供を求め、詳細がわかり次第お知らせいたします。
ワクチン接種の予約状況について(7月15日17時30分更新)|江東区

この後に出ている「7月17日(土曜日)からの12歳以上の方の予約受付について」というお知らせでも特に状況は改善していないということが書かれています。

私は40代前半ですので7月13日から予約できたのですがその段階でもうかなり予約が埋まっていて,予約開始時間直後から試したにも関わらず打てる枠を探すのがなかなか大変でした。

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30代の方もいちおう1日あったとは言え実際に予約が取れた人はそんなに多くなかったのではないでしょうか。

また,12歳〜29歳の人は予約開始の前にキャンセル待ちを除いて基本的に打ち切られてしまったような形になっています。

実際にはキャンセルもそこそこ出ているようですし,職域接種で打てる/打てた人もそれなりにいるでしょう。しかしこのような状況を見ると「打ちたくても打てない」若い人もかなりいるのではないかと思えます。また,詳しく調べたわけではないのですけれどTwitterなどを見ると江東区はそれほどひどい状況というわけでもなく,東京に限ってももっと厳しい地域もあるのではないでしょうか。