誰がログ

歯切れが悪いのは仕様です。

「メンタル」はMPみたいな値ではないか

スポーツなんかで「メンタル」への言及のしかたに違和感を感じることがある。たとえば「○○選手はメンタルが強い/弱いので…」のような言い方。

なんで嫌な時があるんだろうというのがよく分かっていなかったのだけれど,理由の1つとしてそもそも「メンタル」という能力?の捉え方にずれがあるんじゃないかという気がしてきた。ちょっとだけ言語化してみる。

自分のスポーツの経験からは「メンタル」はかなり変動する値だという実感がある。ドラクエやFFで言うとMPのような値が真っ先に思い浮かぶ。すぐ減るし,ダメージを受けることもある(直接の攻撃だけでなく気候とかそういう外部要因でも)。回復はできるけれどもなかなかすぐに全快とはいかなかったり。あとその時の最大(上限)値より増えることはない。

私にとってはスポーツだけではなく研究や仕事,生活などでもそう。

一方,上で触れた「○○選手はメンタルが強い/弱い」というような言い方では,どうも「メンタル」をあまり変動しない能力値のように扱っていることがある気がする(文脈上そうでないこともある)。MPのベースになる基本的な能力値,ドラクエだと「かしこさ」,FFだと「せいしん」「ちせい」みたいな値…はちょっと内容的にずれがあるかな。「気力」みたいなパラメーターがあればそれが近いかも。

どちらのタイプの能力値も成長することで上限値は増えるのがまたこの区別を見えにくくしているのではないかな(ゲームによっては基本的な能力値はほとんど変わらないものもあるけど)。

自分としては前者の「メンタル」を変動的な値として考える考え方を推したい。最大値が成長するのも良いことなのかもしれないけど,実戦的にはむしろ急激に減らさないためのケアや減ってしまった場合の適切な回復の方が重要。

ところで特にコロナ禍が本格的になってから,自分の「メンタル」は常にダメージを受けながら変動しているような感覚がある。常に何かを気にしたり心配したりしているし一息付けそうだなと思ったらすぐ何か新しい問題が発生する。全快の状態がもうよく思い出せない。ゲームならMPの最大値は(転職とかそういうのを除いて)あまり減少することはないと思うけど,私の「メンタル」の最大値はもう減ってしまったかも。やっぱり現実は厳しい(私が今生きているこの世界は現実だよね?)

「チン-ポ」と「増-田」

形態素境界にハイフンを入れないと記事を公開できなかったチキンな私をお笑い下さい。

東京都がCOVID-19ワクチン接種に対してポイントを付与するというニュースに関して「ワクチンポイント…略すとチンポだな」という発言を複数見かけました(検索するとけっこう出てきてどれが初出なのか分かりません)。

そもそも「ワクチン」が話題になりはじめた初期から「チン」の部分で盛り上がりすぎだと思いますけれども,「(ワク)チン+ポ(イント)」って複合語前部要素の語末から2モーラ+後部要素語頭から1モーラっていう構成が「(アノニ)マス+ダ(イアリー)」のパターンとまったく一緒なんですよ!

増田erの方々は増田と一緒だって何が悪いんだと思われるかもしれません。いや私も「…これは!」となった後「だから何なんだろう…」となってしまいました。個人ブログなんだしたまにはこんな記事でも良いよね。

以下余談です。

以前もちょっと書いたように,この前部要素語末部分+後部要素語頭部分の組み合わせの複合語短縮ってあまり典型的なパターンではないんですよね。典型的なやつは前部,後部ともに語頭から取るやつ(例:ポケ(ット)+モン(スター))。ただいちおう探せば「(オー)プン+リー(チ)」とか「(ニッ)ポン+ジョ(シダイガク)」とかそれなりに見つかります。あとコメントで「(いっ)ぱん+きょう(よう)」「(ハイ)ドロ+ポン(プ)」なども教えてもらいました。

「(ワク)チン+ポ(イント)」は明らかにアウトプットの形がそのパターンが選ばれる動機として強いんだろうと思うんですけど,こういう典型的なパターンから外れるやつっていろいろあって面白いです。印象に残ってるうまいなあと思ったのは「魔(法少女)+ま(どか☆)+マ(ギカ)」とかですかね。3つの要素の語頭1モーラずつってなかなか見つからないような気がします。あとぜんぶ同じ音の表記違いっていうのも面白くて(もしかしてそれも要因の1つ?)。「まど(か☆)+マギ(カ)」っていう方は典型的な複合語短縮のパターンですね。

追記(2021/08/13)

Twitterで「ゆゆゆ」もそうじゃないかと教えてもらいました。助詞とかが入ってるんで正確には複合語というより句(以上の大きさ)からの短縮なんじゃないかと思いますけど「ゆ(うき)ゆ(うなは)ゆ(うしゃである)」なので,3つの要素から語頭1モーラずつという特徴は「魔(法少女)+ま(どか☆)+マ(ギカ)」と一緒ですね。

句からの短縮は私が審査を担当した院生が以前テーマにしていて一緒にデータを見たことがあります。すでに定着したものとしては「たな(から)ぼた(もち)」など意外と例があるのに加えて,webをあさると「きよ(みずの)ぶた(いからとびおりる)」みたいな新しめのやつも見つかって楽しかったです。ちなみに「きよぶた」は「思い切って何か(特に買い物?)をする」というような意味で使われていて元の表現とそれほど変わらないんですけど,「きよぶたで買った」みたいな振る舞いが文法的に面白いですね。

【告知】Morphology and Lexicon Forum 2021(9/4-5,Zoomによるオンライン開催)

Morphology and Lexicon Forum (MLF) 2021は昨年に引き続き今年もオンラインで開催されます。

プログラムはこの記事にも載せますが,各発表の要旨は下記の公式サイトからダウンロードできるファイルに載っています。なお,今回もZoomによるオンライン開催で事前申し込みが必要です。申し込み自体はフォームへの記入による簡単なものですので気軽にご参加下さい。発表資料のファイルも後日こちらのサイトからダウンロードできるようになります。

www.konan-u.ac.jp

  • 日時:2021年9月4日(土),5日(日)
  • 会場:Zoomによるオンライン開催(上記サイトにあるフォームから登録するとミーティングの情報がメールで送付されます)
9月4日(土) 研究発表(12:55-17:00)
12:55-13:00 開会挨拶・発表/質疑応答に関する説明
発表1(13:00-13:50) 中嶌 崇(富山県立大学)・髙橋 英也(岩手県立大学) "Inceptive Head and the Split Little v Hypothesis"
発表2(14:00-14:50) 永野 大夏(神戸市外国語大学外国語学部) 「動詞由来複合名詞の音韻規則と統語構造」
14:50-15:10 休憩
発表3(15:10-16:00) 新山 聖也(筑波大学大学院) 「統語的複合動詞の補文構造と名詞化形式」
発表4(16:10-17:00) 李 慧(東京大学大学院) 「日本語における2つのパターンのV1V2型複合動名詞の相違に関する一考察」
18:00-20:00 懇親会
9月5日(日) 研究発表(12:55-17:05)
12:55-13:00 発表/質疑応答に関する説明
発表5(13:00-13:50) 秋本 隆之(工学院大学) 「動名詞文の自他交替と「する」・「なる」の分布」
発表6(14:00-14:50) 宮岡 大(九州大学大学院) 「愛媛県大洲方言における動詞尊敬形の形態構造」
14:50-15:10 休憩
発表7(15:10-16:00) 那須 紀夫(神戸市外国語大学)・依田 悠介(東洋学園大学)・秋本 隆之(工学院大学) 「日本語右端部に出現する「の」の特性:Saito (2012)再考」
発表8(16:10-17:00) 嶋村 貢志(神戸市外国語大学客員研究員) "Notes on the Ditransitive ECM – A Lesson from Japanese"
17:00-17:05 閉会挨拶・お知らせ