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歯切れが悪いのは仕様です。

【告知】Morphology and Lexicon Forum 2024(9月14-15,静岡県立大学)

概要

Morphology and Lexicon Forum (MLF) 2024が下記の内容で開催されます。参加費や事前登録など必要ありませんので、気軽にご参加ください。

タイムテーブルなどの詳しい情報は下記の公式サイトから見ることができます。

Morphology & Lexicon Forum (MLF) Official Site

発表

発表者とタイトルはこちらにも載せておきます。

9月14日(土)

  1. 安田朱里(同志社大学大学院)「英語否定接頭辞un-の分布と特性について」
  2. 柚原一郎(東京都立大学)「日本語の接辞-tariがもたらす諸問題について」
  3. 小原真子(島根大学)「Oxford English Dictionary から見る古英語の転換」
  4. 【招待講演】寺尾康(静岡県立大学)「言い間違い研究からみたレキシコン −言語逸脱データ使用のこれまでとこれから−」

9月15日(日)

  1. 古賀健太郎(青山学院大学)「フランス語の-ble型形容詞における「否定」とそれに準ずる表現」
  2. 納谷亮平(筑波大学)・石田崇(広島修道大学)「英語混成語にみられる等位関係」
  3. 【招待発表】臼杵岳(京都産業大学)「オノマトペから見る心理述語」

「戦争」というブログのカテゴリーを新しく作りました

このブログのカテゴリーとして「戦争」というものを新しく作り、関連しそうな記事を入れました。

戦争 カテゴリーの記事一覧 - 誰がログ

たとえば下記のような記事が入っています。まだ5つしかないのでぜんぶ列挙しても良いくらいですね。ほとんど「沖縄」カテゴリーとかぶっていますが、沖縄についてはほかのトピックでもいろいろ書いていますので。

身近だった沖縄の基地の思い出とか - 誰がログ

戦争に関する資料や語りの思い出とこれから - 誰がログ

戦争についてはもweb上でもweb以外でも滅入ることがいくつかあり新しい記事を書く気分にあまりなれませんが、このブログでは戦争についても触れていることがある、というのをもう少し表示しておいた方が良いような社会(の状況)だなという実感がありましたので終戦の日をきっかけにまとめておくことにしました。

言語学会夏期講座の思い出(2002年、長野県白樺湖)

はじめに

日本言語学会の夏期講座2024の締め切りが8月19日(月)まで延長されたというお知らせを見て、覚えているうちに自分が参加した思い出を書いておこうかなと思いました。もしかしたら参加を迷っている方の参考になることがあるかもしれません。

日本言語学会夏期講座2024

ただ、私が参加したのは20年以上前の1度だけですし、運営として夏期講座に関わったこともありませんので、それほど強くおすすめできる自信があるわけではありません。

前も1度この夏期講座の郡司隆男氏の授業について簡単な記事を書いたことがあります。

【思い出】ロバと例文と夏期講座 - 誰がログ

先に書いておくと、少なくとも私個人にとっては、大学院入学直後でこの先研究やっていけるのかとけっこう不安が強かったところだったので、こんなおもしろいことがたくさんある、こんなすごい人がたくさんいる、というのを肌で感じられたのが良い刺激になって大変良かったです。

合宿?形式の夏期講座

私が参加したのは、2002年に長野県白樺湖で開催された夏期講座です。下記のページに、授業の一覧が出ています。

2002年度夏期講座 – 日本言語学会

当時は筑波大学の大学院M1(一貫制博士課程の1年生)で、周りの院生に聞いても参加するという人がいなかったので、1人でつくばから車を運転して行きました。

まず、1人で参加したのは結果的にとても良かったです。周りに知り合いがぜんぜんいなかったので知らない人と交流せざるを得ないのですね。

また、会場(かつ宿泊所)が長野県白樺湖ということで、講師も含めて参加者全員が泊まり込む合宿形式だったことも良かったです。これはほかの夏期講座に参加した複数の方から聞いた話なのですが、大きな都市で開催して通いの参加者が多いと夕食時や夜に学問の交流(後述)をする機会があまりなかったりするというような場合もあるそうで。

同室になった方の1人に大島デイヴィッド義和氏がいて、それほど研究について事細かに交流したというわけではなかったのですが、なんかすでにすごいレベルの人がいるというのをひしひしと感じました。今も研究者として活躍されてますね。確か海外留学の話もちょっとだけうかがって、当時まだ旅行ですら海外に出たことがなかった私にとってはとても刺激になりました。

学部の2年生という割と早い時期からつくばで車を持ち始めていて、当時でそこそこ遠出の経験もありました(長野県にも何度か)ので長野に自分で運転して行くことは大変とは思っていなかったのですが、行く途中の山道で数メートル先の先行車もよくわからないくらいのかなり濃い霧が出てものすごく怖かったのを今でも覚えています。ちなみに帰りの山道ではトラックや峠を早く走りたそうな車に煽られたりしました。

そういえば早く着きすぎて受付の準備が終わるのを待っていたら、練習も兼ねてということで早めに受付していただいて第1号の参加者になりました。

授業と参加者

私が取った授業についてごく簡単に書いていきます。カッコ内は講師名、敬称略。なお、授業内容についてはあまり覚えていませんし、うろ覚えのことを書くと講師の方に迷惑なこともあるでしょうから基本的に触れません。

形態論初級(伊藤たかね)

当時の私の専門は日本語文法研究で、形態論を専門にすることはまったく考えていませんでした。それが退職記念の論文集に書かせてもらうなんてことになるとは、いろいろな縁があるものです。

【宣伝】論文集『言語研究の楽しさと楽しみ―伊藤たかね先生退職記念論文集』に語種と接辞に関する論文を書きました - 誰がログ

当時もたいへん穏やかな感じで、受講生からのあまり穏やかではないような物言いにも丁寧に対応していたのを覚えています。

生成文法中級(酒井弘)

とても話しやすかったのでいろいろ質問して、中には生意気なことを言ってしまったこともあったかもしれません。それでもずっと丁寧に穏やかに対応してくださったのを覚えています。

当時は生成文法自体に興味はあったものの、自分で使って研究をするということはほとんど考えていませんでした。生成文法ももっとちゃんとやってみようかなと思ったきっかけの1つだったと思います。

形式意味論(郡司隆男)

上で紹介した記事に書いた例文の思い出は強く記憶に残っていて、その後の研究の姿勢に影響を与えたと思います。当時理論として一番興味があったのは形式意味論でしたので、朝一の授業でしたがとても楽しみにしていました。郡司氏の授業も穏やかな感じでしたが、形式意味論ということで内容に苦しんでいる人はそこそこいたような記憶があります。

日本語文法上級(金水敏)

David Pesetsky氏の統語論上級と同じ時間帯に開講されていましたが、日本語学徒として金水氏の授業は絶対受けたいよなというのと、Pesetskyって心理動詞の研究で見たけどすごい人なのかな…英語で授業受けても分かんねーしな…という大変意識低めな院生だったのでまったく悩まずにこちらを選択しました。このことを思い出すと当時はほんとうに生成文法やるつもりはあまりなかったんだなというのが分かって自分でもびっくりします。

金水氏の授業も穏やかな進行で特にこわいとかいうことはなかったのですが、受講生の間にはなんか緊張感があったような気もします(私が緊張していただけかも)。緊張していたこともあって、質問も1回したくらいで、それだけで嬉しかったのを覚えています。この時、受講生として志波彩子氏もいてばんばん質問されていたので「すげー」と思いながら見ていました。志波さんも現在研究者としてご活躍ですね。

そのほかの授業

いやー今見返すとほかの授業もぜんぶ取っておきたかったものばかりですね。当時は勉強不足でこのラインナップの豪華さがあまり分かっていませんでした。そんな私でも直後に後悔したのはフィールド言語学(梶茂樹)の授業を取らなかったことです。それまであまりフィールドワークのトレーニングを受けてこなかったから尻込みしたのですが、だからこそ授業として取るべきでした。

そのほかの時間

生成文法の補講(岸本秀樹)

どういう位置付けだったのかよく分かりませんでしたが、授業外に(確か夜)生成文法の補講をやってくれていました。

岸本秀樹氏がメインという感じで、ほかの生成文法関係の講師、教員も参加していたと思います。少なくとも酒井氏とはここでも話したような記憶があります。

生成文法初級を取るかどうかちょっと迷ったので、私としてはとてもありがたかったです。

研究発表(希望者)

これも授業時間とは別に、希望者を募って研究発表の時間というのがありました。

宗像孝氏が発表されていたような記憶があります。確か生成文法を使った研究で当時の私に取っては難しく(問題設定やロジックとかではなく理論の技術的なところ)、ガチの研究はこんなに難しいんだな…と思いました。

休憩中など

そのほかの時間も研究や院生生活に関することなどいろいろな話ができたのは良かったです。郡司氏、酒井氏は授業外での質問にも丁寧に答えてくれましたし、高野祐二氏は授業(生成文法初級)を取っていなかったにもかかわらず話を聞いてくださいました。高野祐二氏は筑波大の大学院にいたということをまったく知らず何か失礼したような気がします。私は結局今でもこういう誰がどの大学(院)かということにかなり無頓着でたぶんほかにもいろいろやらかしています。

おわりに

最初の方に書いたように、大学院に入学したてで不安だったところにちょうど良いポジティブな刺激をたくさんもらえました。私にとっては1人で合宿形式だったところが良かったと今でも思いますが、もちろんこれが良いかどうかは人によるでしょう。

20年以上経った今でも自分の研究者としてのベースにこのときの経験があるなと思い返すことがときどきあります。ほかの方と夏期講座の思い出話をしたことがほとんどないのですが、もしかしたら私は幸運な方なのでしょうか。

あと、何人かお名前を出しましたが、ほかの大学(院)に所属している受講生からの刺激も大きいと思います。もちろん学会や研究会でも同様の機会になり得ますが、一緒に授業を受けるっていうのはまた違う刺激がありますよね。

こうやって振り返ってみると「この研究者からこのことについて学べる」というありがたさは大前提として、研究に関する出会いの機会がたくさんある場所、というところが自分にとっては大きかったと思います。今だとwebでもいろいろな出会いがありますし、参加にかかる費用のこともありますから参加するかどうか悩む人も少なくないでしょう。この記事が少しでも参考になれば幸いです。