誰がログ

歯切れが悪いのは仕様です。

これまでに書いた言語学や研究に関する記事のまとめ

これまで本や論文の紹介をはじめ言語学・日本語学に関する記事をいろいろ書いてきたのでここにまとめておきます。

網羅的なものではなく販促・宣伝用の記事は外してありますし、自分が読み返して改めて紹介するような内容ではないなと思ったものも載せていません。私自身が書いた本や論文に関する情報もほとんどないです。ここに載っていないものについては検索を使って探してみてください。

各項目内では、下に行くほど古い記事になるように並べてあります。

個別のトピックに合わせた本や論文の紹介

  1. 三上章とその著書,あるいは三上文法に関する読書案内(おまけ付き) - 誰がログ
  2. 【改訂版】「水からの伝言」に言語学の立場から反論する(読書案内付き) - 誰がログ
  3. 「を」の音は「お」の音と違うか(基本的には同じだけど…) - 誰がログ
  4. 『中動態の世界』の言語学的側面に関する雑感/違和感(文献紹介あり) - 誰がログ
  5. 2018年度の授業で紹介した言語学・日本語(学)関係の新書 - 誰がログ
  6. 国語学史,国語の言語政策史に関する本をちょっとだけ紹介 - 誰がログ
  7. 役割語(キャラクターとことばの結びつき)に関する簡単な読書案内 - 誰がログ
  8. 現代日本語文法(研究)の入門本をいくつか簡単に紹介 - dlitの殴り書き
  9. 「ないべき」の話についてちょっとだけ補足(+否定に関する読書案内第2弾) - dlitの殴り書き
  10. 役割語と翻訳、「外国人」のステレオタイプに関する読み物をいくつか紹介 - 誰がログ
  11. 英語の語彙は豊富(と言える)かという問いをどう考えればよいか、について補足(ちょっとだけ読書案内付き) - 誰がログ
  12. 大学での(アカデミック)ライティング教育の難しさとかについてちょっとだけ(推薦図書について追記あり) - 誰がログ
  13. 地域とことば:福島の方言は東北方言か?に便乗(読書案内付き) - 誰がログ
  14. 自然言語と形式言語と(あと否定に関する文献とか)(追加文献あり) - dlitの殴り書き
  15. 文化庁の2013年度「国語に関する世論調査」の造語関連についてちょっとだけ(読書案内もあるよ) - 誰がログ
  16. 【紹介】日本語学会2012年度春期大会シンポジウム「グローバル市民社会の日本語学」の各講演が文章化されています - 誰がログ
  17. 「国文法」についてきちんとした専門家による現代的な評価/解説を読んでみたい人へ - 誰がログ

(スランプ?)専門家として何をどこまでどんな調子で書くか

 最近、こちらになかなか書けていません。そもそも特に理由がなくても平気で半年ぐらいほったらかしにするブログではあるのですが…
 別館やついったーを見ている方は「やっぱり育児大変なのね」とお思いになるかもしれませんが、主な理由は仕事量の増加です。詳しくは書けないこともあるので書いてない(書きたくもない)んですが、まあきついです。こないだも大学からおすすめされたストレスチェックで心理的仕事負担量的な項目は要注意でした。ただ育児を自分の生活システムにまだうまく組み込めておらず、うまく回せてなくて結果厳しいことになっているということはありそうです。
 さて、書き始めたら愚痴だけで止まらない感じになってしまいそうなのですが、書いて公開するところまであまり至らない理由の一つに、「専門家が素人向けに専門のことを書くのはマウンティング(なのでそもそもそも良くない)」というタイプの意見を複数回目にしてちょっと気になっているということがあります。
 下記のエントリに書いたように「恩返し」的な心持ちはありますが、別に「専門家だから書いた方が良いだろう」などと思って色々書いているわけでもなく、

利己的な動機(言語学や日本語学に興味を持ってその世界に入ってきてくれる人が増えると嬉しい、専門的に見ると言語に関する変な言説があまり広まると営業妨害になることもあるのでどこかに対抗言説を置いておきたい)も大きいので、今のところ「やっぱりマウンティングなので書くのやめます」という選択肢は考えてないのですが、やはり「どう書くのか」「どのように書くのか」「どれぐらいの強さで書くのか」というのは悩ましいです。数年間ずっと考えてきていることではあるんですけど、難しいですね。
 そこでちょっと聞いてみたいんですが、自分に何か専門分野があってそれについてwebに何か書いている皆さん(職業専門家や大学教員に限りません)、自分の専門分野について書くときに何か気にしていること、心がけていることはありますか?
 本当はここで私が気にしていることなどを丁寧に提示するのがフェアなのでしょうが、それを整理し始めるとこのエントリの公開にいたらないのではと途中で気付いたので、愚痴と呼びかけだけで上げてしまいます。
 もし何か書いてもよいなという方がいらしたら、他の方の目にもとまりやすい方が良いと思いますので、ブログ等の(自身が書きやすい)場所に公開してくれると嬉しいです。もちろんここのコメント欄でも構わないのですが。
 「非専門家なんだが専門家が書いたもののこんなところが気になる/気に入らない」というような話でもよいかもしれません。

「今だから知りたい放射線の話(きくまこ大人かふぇ)」@えるかふぇに参加してきました

 行ってきました。僕にしてはけっこうこまめにメモを取ったんですが、こちらにも簡単に参加記など書いておきます。まとめられる気がしないので書き殴りです。適当に読むことをおすすめします。報告としては断片的すぎると思いますが、きっとどなたかの補足情報があるはず。

 参加の動機などは前に書いたので割愛。

開始まで

 サンパール荒川まで都電荒川線で。都電荒川線はじめてと思い込んでたんですが、よく考えたら前々回の日本語文法学会@早稲田大の時も乗りました。
 順調に行ったので割と早く着いたのですが、開始の20分ぐらい前に受け付けに行ったら、もう数人来てましたね。Twitterの表示名(アカウントの方ではなく)で申し込んでしまったので、ちょっと名前が見つけにくかったような。でもすぐ見つけてもらえました。受付は、スタッフの人数がけっこう多いなというのが印象に残っています。

菊池氏の話

 放射線に関して、自分にとって目新しい話というのはあまりなかったのですが、こうやってまとめて話を聞くと、それぞれの知識やその間のつながりが整理できて良いですね。震災後、放射線に関する情報は色々な難易度で様々な形で世の中に出回って触れやすくなった分、整理・取捨選択が難しくなった印象があります。放射線の測定結果が音で聞けるようにしてある装置から話がはじまったり、図が多かったりという辺りも、話がすんなり頭に入ってくるのを助けてくれる感じでした。
 ただ、たぶんプロジェクターとスクリーンの距離とかの関係でしかたないところだったのかもしれませんが、図が少し小さかったような気がしました。僕は会場真ん中ぐらいに座ってたのですが、後ろの方とか視力良くない人で厳しい人がもしかしたらいたのでは。

気になったところ

 さて、いくつか個人的に気になったところを。
 ただ、後で話を聞いたところでは今回参加した「大人かふぇ」はそもそも(主婦などを対象にしている)通常のえるかふぇとは少し違うイベントのようだったので、下記の話は当然そうということになるのかもしれません。あと別に問題点の指摘というほどのものでもないです。ぼんやり考えたこともかなり含まれているので、特に自分にアイディアや答えがあるというわけでもありません。

けっこうレベル高い

 これはアンケートにも書いたのですが、特に聴衆からの質問、質疑のやりとりはある程度知っている人の確認や発展的な話題のようなものが多く、見当外れ、というのはほとんどなかったように感じました。
 これにはたぶん、そもそもこういうイベントに出るのは興味関心が高い人だからとか、本が出版されているので来る前に勉強しやすかったとか、えるかふぇや関連イベントに継続的に参加しているメンバーは勉強の成果を蓄積して行っている、というような、色んな理由があるのではないでしょうか(もちろんこれらは的外れな推量かもしれません)。
 当日実際にそういう方がいらしたかどうかはわかりませんが、はじめて参加した人でレベルの高さにちょっとびびった人とかいなかったのかな、と。
 ただそういう素人だけどけっこう勉強した人が行ける場所というのも貴重だと思うんですよね。僕はあまりこういうタイプのイベントは主催側になったことがないんですが、その辺りやっぱり難しさとかあるんでしょうか。

記号アレルギー

 そういえば、意外と用語や表記法なんかはそのまま使うんだなあというのも印象的でした。いや、義務教育の教科書レベルなのでおそらく専門家からするとかなり易しくしているのでしょうけれど。
 上に書いたように話自体はすごくすっきり分かりやすく聞けたのですが、そもそも僕自身は高校で理数科だったので物理(化学も生物も地学も)を取ってしかもけっこう好きな分野でした。また、人文系の学部に進学した後も自分で理数系の啓蒙書なんかを広く浅く読んでいたりして(今振り返ると変なのもけっこう読んでましたが)、原子の話とか周期表とか出てきても、あまり身構えないんですよね。
 ところが一方で、いわゆる人文社会系の方になじみのある人(あるいは、理数系が苦手な人)の一部には、「記号アレルギー」「図・式アレルギー」みたいなものを持っている人がいるという実感があります。どういうことかというと、そもそも「137Cs」という略記が出てきただけで苦手なものに感じちゃうとか、何かが"n"や"x"といったものに置き換えられただけでもうダメと思っちゃうとか。あと分野の話につながるかどうかわかりませんが、専門用語が漢語の方が難しく感じる人と外来語の方が難しく感じる人の差なんてのもあるのかも、ってことも考えたり。
 でも、意外とそういう“共通言語”が違う人どうしこそ、同じ場で対面でのやりとりを通して学ぶのが良いのかもしれませんね。
 僕のこの辺りの話については下記のエントリ群にも少し書いています。

 ただ、アレルギーがあっても、専門用語や専門的な表記にはある程度慣れる方が継続的な勉強には良いんですよね。

研究者がどれぐらいこういうことをすべきか&納得の話

 懇親会には出られなかったので、帰る前に少し菊池氏に質問に行ったら、運良く少し話をすることができました。色々聞いてみたいことはあったのですが、今回聞いたのは「若い研究者にこういう活動をやってもらいたいと思うかどうか」。答えは明確なものではなかったと記憶しているのですが、やはり「でも研究しなきゃ生きていけないしねえ」みたいな話になりました。というか今や研究ガンガンやっても生きていけない可能性がありますしね…
 菊池氏の話でも少し「納得という段階にいたるのは難しい」という話が出てきたのですが、「理解」と違って、「納得」の方はけっこう属人的な要因も大きく働くことがあるのではないかと思うのです。そう考えると、色んな人が色んなところで話をする方が、「あの人は嫌いだけど、この人の話ならわかる」というふうに、全体としては良い方向に向かわないかなと以前から考えているのですが…まあでも理想論なんですかねえ。
 菊池氏がこういう活動・場に関わり続けるのは、率直にいってよく持つなあというのが以前からの感想です。僕もwebで少し専門のことを書き散らしたりしますが、今は(簡単な質問などを除いて)ほぼ発信一方通行になってしまいました。そうしないと精神的・時間的に続けられそうにないからなんですね。こういう実際にしゃべる系のイベントはやる方も割と好きなんでそこまで躊躇しているわけではないのですが、僕なんかとは関わる人の数が桁違いだと思うので、やっぱりすごいなと。

納得とwebの話

 あと、話を聞きながら考えたことなんですが、webって記録が残るのが良いところなんですが、だからこそ方向性を変えられないってことがあるんじゃないかと。君子豹変すとも言いますし、webでも色々あるたびに間違ったら訂正した方が良いと言われますが、実際には意外と難しかったり。僕自身も、そんなに即座に訂正できる質ではないです。webだと、考えが同一だからこそできる人間関係みたいなものもあるので、何かを勉強して考えを変えた時に、それを表明するのが意外と難しいことってあるんではないでしょうか。まあこれは人や状況によるかな。

おわりに

 今回は事前にどなたにも連絡を取らなかったのでひっそり参加しようかと思っていたのですが、てつるさん(@tetzl)さんにお声かけいただき、またみつどん(@MITUDON)さんにもご挨拶することができて嬉しかったです。このwebで先に知り合って実際にあいさつ、というのかなり数をこなしてきたと思うのですが、今でもなんとなく照れくさいですね。なんなんでしょう。
 最後に、スタッフの皆様おつかれさまでした&ありがとうございました。今後の活動も楽しみにしています。