誰がログ

歯切れが悪いのは仕様です。

「文系なので」っていう前置き

 kikulogの「血液型と性格2(注:コメ数もう600越えてます)」で気になる発言があったんでちょっと言及しておきます。
 きくち先生に関連書籍(しかも一般向け書物)を読むことを勧められてのある人の一言*1

私は文系なので、科学的とか、物理的な事が書かれている本は全く理解できないので、読んでも意味がないと思います。

 …orz
 まあこの態度自体もすごいと思いますが、僕の経験上、こういう態度をとるような人が、きちんと人と議論ができる能力はあるんだけれども「物理」とか「科学」っていうレベルで引っかかったり間違ったりしている、のを見たことが無いです。大体、最低限の「議論の仕方」とかそもそも「論理」がわかってないっていうレベルだったり。
 それって「文系なので」というところには原因が無いと思うんですよね…
 大体、いわゆる文系の学生を主に受け入れる研究領域だって、実証的な研究を行う分野はたくさんありますし、あまり実証的な方法論が取れないような分野では、本当に見事に、とことん議論や論証の論理性が突き詰められたりするもんなんですけど。
 そういうことを考えると、「文系なので」っていう前置きが「論理的な議論が苦手/嫌いですが」とか、「大学であまり学問について学びませんでしたが」みたいな意味で使われたり、受け取られたりするようになる*2ってのは嫌だなあ。
 あの記事に関わってる方々はいろんな意味で疲弊していると思うのですが、僕はこの一言にかなり萎えたのでした。

*1:実際にはもう少しやりとりがあって、直接にはTAKESANさんへのレスになってると思いますが。

*2:実際にそう捉えてる人も結構いるんですかね…

理系/文系?言語学

 文系/理系って括りについてはもういろんなところでいろんな観点から散々議論され尽くされていると思うので、特に提言などはしませんが、言語学の方で気になる事情と雑感を少しばかり。
 なぜかというと、言語学って文系/理系の区別による弊害を結構まともに被ってる分野のひとつなんじゃないかと思うのですよ。特に多いと思われる、僕も実際に見かけてきたパターンが、

  1. 数学が苦手なので、人文系の学部に入学する
  2. 言語学と出会い、その道の研究者を目指す
  3. なぜか数学(っぽいもの)と再邂逅、戸惑う。
    1. 勉強してるうちに、色んな分野でなんだか数学っぽい記号が出てくるのでだんだん不安になってくる
    2. 先行研究を調べていると、自分の研究内容に関係するものなのに、記号や数式のようなものを駆使した論文を見つけてしまい…

 って感じです。言語学は統語論はもちろん、形式意味論なんかはほんとに論理学と数学の世界ですからね。実際、たとえば生成文法統語論の「数学っぽさ」なんて、形式意味論に比べればかわいいもんです。他にも、心理言語学や社会言語学で研究する場合には統計にも明るくなくてはならない場合が多い。言語学者であろうとするならば、自分でそれを駆使するかどうかはともかく、数学、というか数学的思考法/数学的表現法から逃げ続けることはほぼ不可能です。

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