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歯切れが悪いのは仕様です。

英語学会レポート一日目

 今日は東大(本郷)での英語学会に参加してきました。前日に東京飲みだったため、午前中のStudent Workshopには惜しくも参加できなかったのですが、午後の研究発表五本を聞いてきたので、軽く感想など…Workshopには「束縛理論の過去・現在・未来」といういろんな意味でものすごくそそられるものがあったので残念です。

1.CP phaseにもStrong/Weakの区別があるんだよ〜っていうお話
 例も豊富で理論もわかりやすくて面白かったです。自分は正直あまり移動について考えることが無いので、phaseの強弱には関心が薄かったのですが、agreementの素性とphaseの強弱が関連してそうっていう質疑の議論を聞いて、意外と関連するかも、と思い直しました。これも質疑のやりとりの中でLegateがそんなことに関して何か言ってるらしいというのにちょっと惹かれました。LegateはInterfaceに関しても色々言ってて気になってる研究者の一人なので…

2.日本語のLong Distance ScramblingはFocus Movementだよ〜ていうお話
 これも面白かったけど、残された問題の処理次第で大分面白さと研究のインパクトが変わってしまう感じ。発表者は今まで無いって仮定されてきた長距離かき混ぜがスコープを変更してしまうような例を持ってきて、LFでの構造に影響があるような移動なんだ!っていうわけだけど、実際にスコープに影響しない場合もあるわけで…そうすると、「今まで長距離かき混ぜって言われてたものの一部にはFocus Movementのものがあります」っていう帰結で、あまり強くない(面白いけど)。最初は「長距離かき混ぜは全部Focus Movement≒Reconstructionなんて無い」って結論になるかと思って聞いていたのでちょっとだけ残念でした。

3.英語の名詞化は全部Syntaxでやってるんだよ〜っていうお話
 これが実は今回の最大のメイン。Distributed Morphologyでずっと研究を進めている先生のお話だったから。しかも司会は伊藤たかね先生という(笑)僕としては色々勉強&参考になるところがあったけれど、あれで会場の人たちがLexicalismよりAnti-lexicalismが良いな〜って思ってくれたかどうかはちょっと疑問かも。僕も質問したけどマニアックすぎたかも…ちょっと反省。伊藤先生がGrimshawの話なんかを出して問題点を挙げてたけど、あれもいくつかはちゃんとSyntaxで取り扱えると思います。色々刺激を受けたんで、今月の自分の発表に生かせればなあ…

4.Event Cancel構文はEvent Structureでの焦点に関する操作ですよ〜っていうお話
 これはこういうまとめが適切かどうかちょっと自身が無い…これの前で頭使いすぎて半分ぼ〜っとしてたから(^_^;結構自分から見たら理論と論理が複雑でちょっと付いていけなかったっていうこともあった。三原先生の三つのツッコミが全部重大な問題でかつ応答はあまり納得できる解決ではなかったような…まあでもああいう現象を他のアスペクトの現象と関連付けてEvent Structureの一般的な理論からやってやるっていう姿勢には共感します。

5.英語のParticle Constructionの慣用的意味と語順の傾向性には相関があって…というお話
 実は筑波大学のちょっとお隣の研究室の後輩の発表。後輩っては言えないかもしれないけど、同じドイツ語学ゼミ仲間なんで…論理が非常に明快。あの研究室に所属してる人たちの発表は全部そういう気がする。ただわかりやすいために真正面からの反論も招いてしまうという…個人的にはあれだけ丁寧に研究してるんだから、もっと自説を強く押しても良いのにな〜と思ってしまう。Idiomと統語論/形態論的性質の関係については自分のテーマの一つでもあるので、今度ゆっくり話してみたいな〜

 全体的には非常に参加者も多く、活気がある感じでした。知り合いには会わないだろうとたかをくくってたら、意外と会いました。そういえば最近日本語学以外にも知り合い増えてたんだった…明日も気になる発表目白押しなので、たくさんインスパイアされてきま〜す、