誰がログ

歯切れが悪いのは仕様です。

いわゆるクオリア論が気になっている方々へ

 今回は蒼龍さんの「蒼龍のタワゴト-評論、哲学、認知科学-」というブログの記事を紹介します↓

 特に、「茂木健一郎などがよく言っているクオリア論って専門的にはどう評価されるの?」というような疑問を持っている方におすすめです。かのクオリア論に対して「なんだかもやっとしててよくわからない」とか、「なんとなく怪しい匂いがする」なんて思っている方もすっきりするかもしれません。
 このブログには他にも特に認知科学、心の哲学に関する丁寧な解説や議論、リンク、文献の紹介などが色々あります。興味のある方はぜひどうぞ。

◆簡単な内容紹介
 リンクをはっただけではあまりにも味気ないので、少しだけ重要と思われる主張を抜粋しておきます。もちろん、この紹介からして僕のバイアスがかかるわけで、この記事に関して議論したり、考察したりしたい方は、必ず元記事をしっかり読んでください。
 記事自体は長くないですし、議論の運びもわかりやすいと思いますが、心の哲学に慣れていない方などには簡単とは言えないかもしれません。ですが、重要な概念や用語についての説明も蒼龍さんのところにありますので参照しながら読んでみてください。
 蒼龍さんの記事の重要な点は、クオリアという概念が、どのような学術的背景のもとで、どのような議論を目的として、どのような文脈の中で使用される(べき)ものなのかということについてしっかり説明してくれていると言う点だと思いますが、ここでは茂木氏のクオリア論に少しでも触れたことがある方なら「そうだったの?」と驚くのではないかという重要なポイントをいくつか紹介しておきたいと思います。

  1. クオリアは主観的体験全般を指す言葉ではない
  2. クオリアは主観的な個人差全般を指す言葉ではない
  3. 感覚質としてのクオリアの存在は自明ではない
  4. クオリアの本来の定義からすると、クオリアを脳科学を含む科学一般で扱えないのは自明である。

 どうでしょう?結構びっくりしませんでしたか?
 もちろん、他にもクオリア論を理解するために重要なポイントについての記述もいくつかありますし、上記の主張についてのきちんとした説明もありますので、くどいようですが元記事を読むことをおすすめします。
 もしよく読んでもわからなかったら、これを機に心の哲学について勉強し始めてみませんか?楽しいですよ〜心の哲学☆


◆僕の茂木氏のクオリア論への雑感(僕の完全な主観ですよ)
 僕が茂木氏のクオリア論に出会ったのは、確か2000〜2001ぐらいだったと思います。その頃は一般的にはあまり有名ではなかったような気がしますが、僕は心の哲学、脳科学、AI論、などに関するようなものを色々つまみぐいしていた時期だったのでたまたま出会ったのですね。
 その頃の感想としては「なんかこれから新しいこと(脳科学)をやろうとたくらんでる」というような意気込みは伝わってきたのですが、クオリア論がそれにどう決定的に関わるのかはいまいち曖昧な感じでした。というか、独我論や逆転スペクトルの議論などと何がそこまで違うのかよくわからなかったのですね。その時は僕の勉強不足だと思っていました。
 その後、確か2003〜2004年ぐらいに茂木氏の著書とたまたま本屋で出会い、買って読んでみたのですが、言っていることがほとんど変わっていないどころかなんかよりわかりにくくなった気がして最後まで読み進められませんでした。まあこれも一般向けの書物だったのでしかたないところなのかな、と思っていました。
 で、最近になってなぜか色々なメディアに出るようになってきたのですが、僕にはどうも「最新の学問領域である脳科学」の話をしているというよりは、なんか知覚や記憶などの脳の働きに関するトリビアを紹介しているだけのように見えます*1
 僕としては、茂木氏のような研究者が、今まで心の哲学と言われる分野で積み上げられてきた知見と、最近急速に発展しつつある脳神経科学とか大脳生理学のような分野*2で得られる研究成果の橋渡しをしてくれるのかなあ、という期待を抱いていたのですが、どうやらクオリア論に関しては蒼龍さんの議論を踏まえるとそれも無理のようですね。
 もちろん、茂木氏は他の点で脳科学について面白いことをやっているのかもしれませんが。


◆おわりに
 いや、意外と長くなってしまいました(^^;
 ここしばらく哲学は科学哲学関係のものしか勉強していなかったので、心の哲学関係のものも色々読みたくなってきました。言語学だってかなり関わってくる分野ですしね(というか本当はこういうことがやりたい(笑))。

*1:まあこれもマスメディアの性質上仕方ないことなのかもしれませんし、脳科学って呼ばれる、なんだか面白そうな分野があるということを広く知らしめているという点では評価されるのかもしれませんが。

*2:あと認知心理学など