誰がログ

歯切れが悪いのは仕様です。

卒論話のついでにこれから卒論を書く人へ勝手に偉そうなアドバイス(一部言語系限定)

 もちろん僕は言語系の論文しか書いたこと無いですし、言語系の論文の指導しかしたこと無いので、これが他の分野にも当てはまるかどうかは全然わかりません。
 もうさすがに今年度提出の人には間に合わないと思うので、来年度提出の方々へ。
※今回はなんか内容も表現も偉そうになってしまいました…まあでもこれも実は半分以上愚痴なのです。あ、もちろん内容自体は本音ですよ。
※追記:karpaさんのはてブコメを読んでそれもそうかな、と思ったのでタイトルをちょこっと変更しました。ありがとうございます。
※追記2:合わせて一つ前の卒論話も読んでいただけると嬉しいです。研究の道へ進もうと思っている方も、そうでない方も(むしろそうでない方々に)。
※追記3(2008/01/16):はてブコメントや関連エントリへの応答、内容についての若干の補足などに関するエントリを書きました↓

 僕から言えることは一つ、

  • とにかく論文たくさん読んでください。

 これだけです。後の細かいことは先生や先輩に聞いてください。
 最近ネットでは「地道な努力」なんかについて色々議論が盛り上がったりしてましたが、僕はこれが早めにまとまった一つの議論を作ることのできる一番効率の良い方法だと考えています。 
 特に面白い現象が見つからない、具体的なテーマが決まらない、というような悩みを抱えている人は、小説や新聞、その他のデータベースで何か読んだり検索したりする前にとりあえず関連しそうな文献を検索して、片っ端から読むことをおすすめします。

面白いものに気付くために

 あなたの指導教官や先輩が「とりあえず例を集めてみたら?」などというアドバイスをくれることがあるかもしれません。しかし、あなたとあなたの先生、先輩の院生では大きな違いがあります。それは、彼ら彼女らが、面白いものに出会った時に、それが面白いと気付けるだけの知識を持っているということです。
 あなたは、面白い現象に出会った時に、それが面白いと気付ける自信がありますか?また、それが言語学的に面白く、論文で取り上げる意義があるということを説明できそうですか*1
 先行研究を読めば、どういう現象が主に取り上げられ、何が大体解明されて、何が問題として残っているかがおおよそ書いてあります。そういう情報を得れば、先行研究の分析や予測を実際の例を集めることによって検証したり、関係しそうなのに先行研究ではいまいち取り上げられていない現象について調べたり、次にやることが一気に具体的になるはずです。
 魚がいるかどうかわからない釣堀で、針が付いているかどうかわからない釣竿で当たりを待ち続ける時間があなたにはありますか?

野心的な方へ

 でも、先に論文なんか読んでしまうと、先入観を植え付けられてしまいそう。自分は既存の枠組みにとらわれず、革命的で自由な研究がしたいんだ!という意欲のある方がいらっしゃるかもしれません*2
 それも選択肢の一つかもしれません。でも、自己流分析を始める前に、少し考えてみてください。自分の分析がどのように画期的で、今までのパラダイムをひっくり返すようなものなのか、説明することはできそうですか?それを説明するためにはやはり既存の研究についての知識が必要です。どちらにせよ、今までの研究について勉強しないで良いということにはなりませんよ。
 何より、頑張って独力で創り上げた自分の分析を先生に持っていった時に、「ああそれは〜が言ってるね」とさらっと言われてもめげない覚悟がありますか?
 これまでの研究を調べた後でも、十分自由な発想はできると僕は思います。数ヶ月を棒に振るかもしれないリスクを負うのはあなたです。

修論を書こうとしている人などへも

 まあ僕もまだ学生の身なのですが、院生の方々から「どうしたら色々面白い現象やテーマを見つけることができますか?」という相談が結構多いので、これについてもここで書いておきます。

  • とにかく論文たくさん読んでください。

 面白い現象やテーマは、すでにあなたの周りにごろごろ転がっています。後は、それが面白いということに気付き、それが面白いと示せるだけの知識を手に入れるだけです。
 昨日までスルーしていた現象をものすごく面白いと思えるようになる劇的な変化の楽しさ*3は、一度覚えると病みつきになると思いますし、それを考えると星の数ほどある論文を読むモチベーションも上がると思うのですが。

おわりに

 まあ色々な教育や研究のスタンスがあると思うので、こうすべき、というわけではありませんが、特に卒論だと期限がありますからね。効率的に進めるにこしたことはないと思います。mixiなんかに漠然とした内容の質問トピを立てて色んな人に怒られるよりは、大人しく図書館に行った方が良いと思います。
 身もふたもない言い方をすれば、結局勉強するしかないし、それが一番効率良いかもよ、ということですね。

*1:中には予備知識があまり無い段階で面白い現象を嗅ぎ分けてしまう天才もいます。あれは本当にセンスだなあ。

*2:実際に出会ったことはほとんどありませんが。

*3:僕が研究をやめられない快感の一つです。