誰がログ

歯切れが悪いのは仕様です。

補足(生成文法編)

 こないだ書いたエントリ↓

にshokou5さんが補足してくださったので↓

ちょろっと補足。
 しかしshokou5さんのエントリではきちんと"UG"とか"Merge"に注釈が付いていてすばらしいです。僕は自分の記事を書く時にちょっとひっかかったけど、「ま、いっか」と思って流してしまった(^^;
 僕の疑問がこれ↓

ある刺激に対して言語能力に関する脳の特定の部位、文法中枢が活性化されたとして、それはUGの何に対しての活性化なのか、あるいはそれを調べることのできる実験はそもそも作れるのか。Mergeというのは非常に一般的な操作でsyntaxが絡んできたらほぼ関係してくるものですから、syntax-relatedな刺激に対しての反応が(他の何かの原理ではなく)UGの核であると考えられているMergeによるものであるという絞込み自体が行えないかもしれない、なんてことになったりしないかなあ、と。この辺りshokou5さんに聞いてみたいところです。

以下、shokou5さんの回答から抜粋。

この点に関しては、僕は原理的な不可能性はないと思っています。ただ、その実現のためには理論の方のサポートがもう少し、いや、かなり、必要かな、と思っています。具体的には、異なる operation に対して、その計算量を独立に想定することが可能であれば、それぞれに対し脳活動との相関をとることが可能です。
(思いっきり中略)
実験側から理論側へのあつかましい要望としては、なるべく具体的な計算論モデルを出していただきたい、というものです。

 なるほどー
原理的に不可能ではないというのは上のエントリのコメント欄にも少し書きましたが、僕の現在の想定と同じですね。計算量に関しては、最初のエントリを書いた時点ではそこまで考えが及んでなかったです。確かに単独のタイプの刺激では判別不可能でもうまくcontrolを作ることでoperationの種類や量を調べることが可能でありそう。そして確かに理論の方にかなり依存してきそう。shokou5さんが書いたような「異なるoperationに対してそれぞれの計算量を”独立”に想定」までいけるかどうかは分からないですけど、理論的に「区別する」ところまでは予測を作れるかなあ。実際に実験がデザインできるかどうかはまたそこから色々大変なんでしょうけど。
 syntaxにおける計算量の議論は、確かミニマリスト黎明期にそれなりに議論されてたんだけれど、最近ではそんなに取り上げられることがないような。ただ確かにfMRIやMEGでやるなら(いくつかのassumptionの下であっても)計算量についての予測をきちんと出す理論を作ることが必要かな。上手くやればMergeの方がMoveより経済的、ってのも調べられるんだろうか*1
 例えばscramblingが移動派生なのか基底生成なのかってのもつまるところ移動っていう一つのoperation分差があるかどうか、って問題だしなあ。そして実際に心理言語学の方でも研究があったと思うし、fMRIでも東北の小泉先生のところでやってなかったっけ。そういう観点から文法研究の方に対しても色々示唆が得られるってのは僕らにとっても助かるし、面白いんですよね。やっぱりこういう問題も共同研究でやってみたいですね。
 あと、僕の記事に付いてた蒼龍(id:deepbluedragon)さんのブコメ

面白い。『「科学」としての生成文法研究』を読むとなんかチョムスキー派ばかりな印象がする。用法基盤モデルに批判的なのは分かるけど、進化的適応にも慎重な人ばかり。適応派は言語学より生物学方面で多いのかな?

 その通り、思いっきりチョムスキー派の人たちばかりです(笑)進化的適応(であると発言すること)に慎重なのは、そう考えることによって、特に言語学の方で問題設定ができたり具体的な研究に影響が出たりっていうことが無く、今のところ多くの人にとって研究対象として現実的ではない、ということかなあ、と個人的には考えています。それで、限られた”理論家”が言及するに留まる、ということなんだと理解しています。 
※追記:現象学会は僕もちょっと気になりました。

*1:すでにそういう研究あるのかも。不勉強ですいません。