質問の内容、「Novel という名詞を動詞化するのがNovelizeなら、Comicという名詞を動詞化するのはComicizeになるはずです。Comicalという形容詞を動詞化したら「漫画化する」という意味にはならず「滑稽にする」という意味になるのではないでしょうか?」に対しては、「そうですね、変です」という解答になると思う。
回答者1:Novel は「小説」という名詞ですけど、Comic は「漫画的な」という形容詞ですよ。だから Comicize とはならないです。
これは正しくない。comicは確かに形容詞でもあるけれども、名詞でもある。ただ、形容詞の場合は辞書を見る限りでは「滑稽な」とか「喜劇的な」のような意味だそうで、「漫画的な」という意味もあるかどうかはわからない(あっても全然おかしくなさそうだけれど)。そうすると"comicize"で「漫画的にする」という意味を持ってもおかしくない。
回答者2:-izeは、名詞につける接尾語のようなので、comicalizeは誤りの可能性があります。
動詞化接尾辞"-ize"は形容詞にも付くので、"comicalize"という語形自体はあってもよいと思う。形容詞派生(deadjectival)の例↓
- absolutize, centralize, neutralize, rationalize*1, ...
形容詞に付く場合には、「(形容詞で表される)Xという状態にする(なる)」という動詞を派生するから、英語で"comicalize"を作った場合は、上でちょっと書いたように「漫画的(風)にする(なる)」という意味になると予測される。「漫画化する」という意味であればやはり"comicize"の方が良いだろう。
ではなぜ日本語では「コミカライズ」という言葉が使われだしているのだろうか。以下は妄想の域を出ていないけれどもひょっとしたら関連してるかな、と思ったこと。
- 「ノベライズ」から「ライズ」の部分が動詞化接辞であると誤分析した。
英語とは音節の切り方が違うので。/nober/-/aizu/という分析を嫌った。また、"-ize"は形容詞化接辞"-al"について"alize"という形を作ることが多いらしい。この形をなんとなく適用させてしまったのかもしれない(受験勉強、TOEICの勉強なんかでたくさんの単語に触れる人が多いですし)。
※追記2:これに似た現象は他の英語の接辞の輸入でも起こっているように見える。例えば、名詞化接辞"-er"をマヨ(ネーズ)に付加する場合に「マヨ”ラ”ー」となる、とか。
- "comicize"の発音を嫌った。
"comicize"は日本語風に発音すると「こみさいず」になる。英語ではある環境で/k/が/s/になる一般的な規則があって、接辞付加の時によく起こる(critic→criticism, politic→politicize, ...)が、日本人としてはこの音韻変化は馴染みのないものなので、「こみっく」という音から「こみさいず」を作るのを嫌ったのかもしれない。「コミカイズ」という言葉を作ってくれてたら面白かったんだけどなあ。
しかし英語は接辞がたくさんあって面白いです。日本語だと漢語系が多いからなあ…(まあ英語にだってlatinateかどうかって問題なんかは付いてまわりますが)
「ただのミスでしょ、真面目に分析しちゃって。砂上の楼閣じゃない。これだから学者は…」なんて思われるかもしれませんが、確かにそうです。ただのミスかもしれませんし、間違ってるのをわかった上で面白がって使ってるかもしれません。しかし、そのミスや言葉遊びの中にも言語のシステムは確かに影響を及ぼすので、僕らはこういう妄想について考え込まずにはいられないのです。
無粋ですんません。
※追記:「コミカイズ」にならず「コミカライズ」になったのは、「ノベライズ」と無理やり音を合わそうとした、という可能性も考えられます。
*1:"rational"には名詞もあるらしいけれど、"rationalize"の意味を考えると形容詞からの派生だと考えて良いだろう。