誰がログ

歯切れが悪いのは仕様です。

日本語学会2011年度春季大会@神戸大学雑感

 もう一週間になってしまいましたが、簡単に。

シンポジウム「日本語のテンス・アスペクト・ムード研究と通言語的研究」

 一つ一つの話が具体的かつ示唆に富んでいて単純に聞いてて楽しかった。コメンテーターのアンドレイ・マルチュコフ氏と各講師のやりとりは経験的な議論も理論的な議論も具体的で丁寧なものが多く、勉強になったが、その分フロアとのやりとりが少なかったように感じた。これは時間の制約もあるので仕方が無いところだったか。
 質問紙に質問を書いて出したのだけれど残念ながら採用されなかったので、簡単にここに書いておく。僕の質問は「日本語研究と通言語的研究のつながりを考えるのであれば、「助詞」といったような日本語学で用いられるカテゴリを、一般言語学における形態論の観点から捉えなおす必要があるのではないか」というものだった。
 形態論には確かに、個別言語に特有の側面を扱うという性格があるけれども、そこをふまえているからこそ見えてくる言語間の共通性・普遍性(のおもしろさ)というのもある気がする。まあこれは要望というよりはむしろ僕が自分の研究でやりたいことでもあるので、自分でやっていければいいなと思う。

研究発表

 結局聞いたのは三つだけ。後は本をあさってるか休憩室でおしゃべり。

「明治期国語系教科書の仮名表における平仮名」

 自分に知識が無いので完全に応援要員になってしまった。
 教科書を扱うということから、教育(学)を視野に入れた研究ではないかという印象を持たれてしまうのは大変そうだ、と感じた。逆にそういうところに興味がある人たちからも関心を持ってもらえるのは思いがけない出会いがあったりして良さそうだな、とも。

「無意識類副詞」と「ナル」表現―文末に着目して―

 「無意識類副詞」を扱っているということ自体が面白い研究だと思ったのだが、とにかくそれらと共起するとされる「「ナル」表現」の定義・範囲があいまい/広すぎてよくわからなかった。質疑応答でもそこに質問が集中したが、質問者(僕も含め)が納得のいく回答は無かったように思う。
 質疑への回答で「日本語教育に役立てるために…」みたいなやりとりがあったのだが、こういう答え方っていつ聞いても後出しじゃんけんぽくて*1戦略的にどうかと思う。もし日本語教育に役立てるための文法構築を目指しているならもっとそれを前面に出すべきだと思うし*2、最終目標がそういうところにあるとしても、その場では純粋な文法研究として話をしたなら批判などはそのまま受け入れた方が印象も良いのでは、と思う。質疑が厳しいとそういうことを言いたくなる気持ちもわからなくはないけれど、結局は発表者自身が損するのではないか。

動詞中止形の継続相シテイテとシテオリの比較分析―シテオリの用いにくい場合を中心に―

 連用形中止法とテ形の対比をする場合にテイルに着目するという発想は自分の中には無かったので新鮮だった。連用形中止法とテ形の異同についてはあまり研究が進められていないという印象があるが、こういったある形式に観察範囲を絞ってやっていくと新しいものが見えてくるのかもしれない。僕も活用研究の観点から気になっているのでぜひどんどん研究を進めてほしい(偉そうに)。
 発表後に発表者とも話したのだけれど、いわゆる南分類でいうとC類節の研究って、他の従属節に比べて研究が少ないと感じている。この点についてはcoordination研究の観点からやってみたい。というか僕の博論の残された課題の一つでもある。

ついったーオフ会

 実際に会ってがっかりした人ごめんね!*3あと名刺たくさんいただきましてありがとうございます。そして企画・調整ありがとうございました。
 しかし、ついったーをやっているということをきっかけに、研究領域や理論の枠を越えた院生同士の出会いがあるというのは本当に素敵なことだと思った。まあついったーに限ったことではないんだろうけど、素晴らしいアカデミック出会い系ツールだと思います。

その他

 行きも帰りも夜行バスはしんどいです…
 目的の本をきちんと買えて良かった。
 台風の割にすごい人来てた気がする。
 やっぱりというか予稿集の大半が論文風だったなあ。
 学会はやる気も危機感も良い具合にあおられてやっぱり良いですね。
 予想してたより多くの人に再開したり挨拶したりできて良かった。本当は論文で生存アピールできるのが一番なのかもしれませんが…

*1:発表の最初に日本語教育をやっているという紹介はあったのだけれど、発表内容とのつながりには詳しくは触れなかったと記憶している。

*2:日本語学会にだって日本語教育に携わっている人はたくさん来るわけだから無視されるというようなことは無いだろう。発表自体が通るかどうかの心配はしなきゃいけないと思うけれど。

*3:お前に何を期待するというんだという話はおいておいて。