もうすでに2週間以上経ってしまったわけですが、備忘録も兼ねて少しだけ。発表タイトルなどは以下をご覧ください。
概要
オーガナイズから司会まで一手に引き受けてくださったid:kana0355さんのおかげで大変内容の濃い会になったと思います。ありがとうございました。
発表については、言語学・自然言語処理に加えて言語教育畑の発表&参加者もあったおかげでまたこれまでの合同勉強会になかった交流や議論ができたのではないでしょうか。今までにも関連する議論は出てきていたとは思いますが。個々の発表についても色々興味深く、自分の専門とはあまり近くない領域の話ばかりでしたので勉強になりました。
少し残念だったのは、自然言語処理専門の方の参加が少なかったことでしょうか。これはいくつかの事情が重なったためですが、数人の方で自然言語処理に関する質問を一手に引き受けていてちょっと大変そうに見えました。関東の方では言語学畑の方からの参加者集めに苦戦しています*1ので、両方合わせたらちょうど良い割合なのに…などと考えてしまいました。難しいですね。
あと、せっかくの関西開催だったのにid:langstatさんが参加できなかったのも残念でした。僕自身にとっても、また今回参加された皆さんにとっても。
第5回を終えて思ったことなど
※ここから先は僕個人の考えであって、会の方向性とかそういうことではありませんので、あくまでも参考ということで読んでいただければ。
まだ(というかもうというか)第5回で、僕はそのうち4回参加しているわけですが、現時点でもなんとなく「よく出る質問や議論」がぼんやり見えてきた気がします。
文献について
自然言語処理の方々からこれまで何回か出た意見/感想としては、「言語学の(重要/基本)文献が探しにくい」というものがあります。
もちろん分野が違うからこその難しさ、という点では色んな分野間に見られることなのだと思いますが、これは言語学サイドから見るとちょっと気付きにくいポイントなのかもしれない、と最近思うようになっています。それは、おそらく、少なくとも僕らの分野*2だと「見つけるのが困難な文献を見つける/集める」能力自体が当たり前の研究能力として考えられているから。
しかし、他研究領域の研究者に言語学の研究成果を利用してもらうには、効率よく使える形で文献に関する情報を渡すことができる(環境を整える)という点が重要であるように思います。
これはもちろん、言語学にはそういう文献情報や先行研究のまとめが効率よく得られる書籍や論文が無いということではありません。たとえば、(生成文法系の)語彙意味論に関しては以下の本がスタートポイントとしてはかなり良いものと言えますし、

Argument Realization (Research Surveys in Linguistics)
- 作者: Beth Levin,Malka Rappaport Hovav
- 出版社/メーカー: Cambridge University Press
- 発売日: 2005/06/20
- メディア: ペーパーバック
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wikiなどを利用してこういう情報の集積地を作れるのがいいのかもしれませんし、それは研究分野の細分化が進みそれぞれの内容もどんどん増えて行っている言語学の研究自体にも寄与するものではないかとも思うのですが、現時点ではそこまで具体的なことは考えていません。とりあえず「そういう情報に詳しい人を探して聞く」というオーソドックスなやり方が現実的かなと。その出会いの場としてもこの合同勉強会が役立ってくれると嬉しいなと思います。
お互いを知るための研究発表
今後、チュートリアルのような企画も考えていないわけではないのですが、基本的には互いの分野からそれぞれ研究発表を提供、という形にしています。その方がそれぞれの領域の違いをより具体的に理解/実感できるのではないかということが理由の一つです。
定期的な参加をおすすめします
僕自身は言語研究者の中でも自然言語処理にはかなり疎いほうだと思いますが、継続的に参加してきて問題設定・研究の進め方・アプローチ、…などなどに関する違い(あるいは共通点)について少しずつ勘がきくようになってきました。
もちろんとりあえずその一回だけふらっと参加してみようかなーという方も歓迎しますが、定期的に参加して互いの分野の相違点/共通点、あるいはそれまでの議論の蓄積などについての情報を共有できる参加者が少しずつでも増えていってくれると良いなあと感じました。そういう参加者が増えると、今後の議論もよりスムーズになっていくのでは、と期待しています。
なんとか定期的に続けられているので、何かの形で蓄積も作っていけたら良いなあと。