誰がログ

歯切れが悪いのは仕様です。

「世界一ロマンチックでない「I love you」は日本語」なんだって

 たぶんネタにマジレス的な何か。

英ロンドンに拠点を置く翻訳会社トゥデー・トランスレーションズが言語の専門家320人以上を対象に実施した調査で、フランス語で「愛」を意味する「amour」が、世界で最もロマンチックな単語に選ばれた。
(中略)
一方、ロマンチックではない響きがする「I love you」の言い方では、SFシリーズ「スタートレック」で使われるクリンゴン語だという「qaparha」などを抑え、日本語の「私はあなたを愛します」が1位となった。
世界一ロマンチックでない「I love you」は日本語=調査 | 世界のこぼれ話 | Reuters

 こんな扱いを受けちゃうと金谷氏の本に共感する気持ちもわかりますねえ。直訳でもせめて「愛します」ではなく「愛しています」にできなかったものか。google翻訳でさえ「私はあなたを愛しています」と出るんですけど大丈夫なんだろうかこの翻訳会社…
 まあこの「ロマンチックな」というテーマ設定からして実質はほぼ「好きな言語ランキング」なんだろうなと思いつつ、英語のほうの記事まで読んでしまったのでもう少しいちゃもんを付けておきます。次がロイターの英語版の方の記事。

んで当のトゥデー・トランスレーションズのサイトの記事。

 こちらには日本語への言及はありませんね。気になっていたのは「言語の専門家」が誰なんだろうというところなんですけど、

The survey was conducted by London-based Today Translations which polled over 320 of its linguists.
Is this the world's most romantic word? | Today Translations

とあって言語学者をそんなに雇ってるなんてすごい!とか思っちゃいましたがまあこここでは「語学/言語に堪能な人」ぐらいの意味でしょうかね(追記も参照下さい)。だって

Japan's "watakushi-wa anata-wo ai shimasu,"
Is this the world's most romantic word? | Reuters

とありますが*1助詞の「は」は"wa"としているのに「を」は"wo"としてて日本語の論文なんかを読んだことのある人のチェックが入っていないんじゃと疑ってしまいます(通常は"o"で表記)。いや論文というか入門書とか日本語の教科書レベルでも出てくる話か…ちなみに江戸時代より前とか一部の方言だったら"wo"でも良いんですけど。実際僕は"wo"で発音する方言話者ですし。
 そもそも調査で使用した各言語の表現は音を聞かせたのか文字で見せたのか。音で聞かせたなら録音の時にネイティブかあるいはネイティブに近い発音ができるほどの話者からこの表現にクレームが入るよなと思いますし、そうすると文字?まさかどの言語もラテンアルファベットで表記して聞いたんですかね。いや表音機能が便利だというのはわかりますが…
 まあしかし色々問題はあるにしても世界に数千あるとも言われる言語を手話まで含めて調査したっていう行動力には感心させられます。え、まさか百に満たない程度の数の言語を取り上げて「世界一」なんて言ってませんよね。

追記

 もしかしたら調査側から例を提示したのではなく、回答者が例を挙げるような形式だったのかもしれません。それでしたら後半のいちゃもんは的外れですね。でもそれだと回答者が知ってる言語しか出てこないよな…

追記(2012/02/18)

 "linguist"の意味を「「語学/言語に堪能な人」ぐらいの意味でしょうかね」と書きましたが、翻訳会社では翻訳者のことを"linguist"と呼ぶことがあるという情報をいただきました。
 僕が推測したような「堪能な人」というようなあやふやなくくりではなく、翻訳や通訳といった一定の専門的技能を持った方々を指しているという可能性が高いようです。
 情報感謝いたします。

*1:トゥデー・トランスレーションズの記事にはこの表現自体は出てこないので、ロイターによる作成、あるいは誤転記の可能性はあると思います。