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日本学術会議公開シンポジウム「学士課程教育における言語・文学分野の参照基準」雑感

 日本学術会議の公開シンポジウム「学士課程教育における言語・文学分野の参照基準」というものに参加してきました。以下がシンポジウムの案内です。

 参照基準の中身の参考になると思うので、上の資料の二枚目の前半を引用しておきます。

 言語・文学は、今日の大学教育において重要な役割を担っているが、その身分ないし地位はしばしば不明確で安定性を欠いている。言語・文学は人間の精神生活と社会生活の根底にあって、あらゆる学問そして文化の生成を可能にする基盤であると同時に、それ自体が学問であるという二重性をもっており、専門教育と教養教育・共通教育の双方にまたがっている。じっさい大学設置基準の大綱化以前を考えれば、それは一般教育の人文科学及び外国語に属する学科として前期課程教育の中に確固たる位置を占めていたが、大綱化によってその位置は失われた。また専門分野としての言語・文学は、学位に付する専攻分野の名称が自由化されたこともあって、名称の変更あるいは新設が相次ぎ、分野としての輪郭と特性がぼやけてしまうという事態が生じた。それにもかかわらず、本分野の研究と教育に携わる大学人は、言語・文学の学びには、個別言語の高度な運用能力とりわけリテラシーの修練を通じて言語の公共的使用能力を開発増進するとともに、言語芸術としての文学を学ぶことを通じて人文的教養を身につけ、人間性と市民性の涵養に資するという意義があることを確信している。

 この参照基準を作成しているのは「大学教育の分野別質保証推進委員会 言語・文学分野の参照基準検討分科会」というところです。以下のページから構成員や議事録を見ることができます。

 なお、分科会の親委員会である「大学教育の分野別質保証推進委員会」には他にも生物学分野などのいくつかの検討分科会があるようです。

 今回は(特に大学教育に関係のある)専門家の方でこういう動きがあるよ、ということをお知らせしておくのも良いのかなと考えたのでエントリを立てました。
 実際にこの参照基準が公開されたらまたお知らせしようかと思います。公開されたら内容の細かい検討なども含めて話題になることを期待しています。

雑感

 こういう機会があることによって、大学教育で言語・文学分野では何ができるか、何を目指すか、何をするべきか、というようなことについて広く意見交換ができるのは良いのではないかと感じました。
 鳥飼玖美子氏による結構詳しい説明があったのですが、「複言語主義(plurilingualism)」の考え方を取り入れていることなど、色々期待が持てるところもある内容でした。全体のディスカッションの時にフロアから言語弱者に関する事項ももっと強く発信してくれという要望がありましたが、反映されると良いなあ。
 ただ、参照基準の草稿は28ページもあって、各報告者がそこそこ要約してくれたり部分的に説明してくれたりしたのですが、正直その場で実際の文面を見ながら話についていく、議論に参加するというのは結構大変でした。実際にやるのは難しいのかもしれませが、やはりせめて前日、あるいは数時間前にでも少しぐらい目を通す機会がないとなかなか… 
 ディスカッションでは少し質問もしました。一つ目は「色んな人に紹介したいんだけれど簡易版を作る予定はないのか」というもの。これには「概要が付く」というお返事をいただきました。二つ目は「こういうシンポジウムの様子など議論の過程も積極的に公開した方が良いのではないか」というもので、これについては「議事録などはできるだけ公開している」というお返事。
 そんなことを聞いた手前、僕も宣伝しないわけにはいかなくなってこのエントリを書いてるみたいなところもあります(^^;
 シンポジウムでも何度か言及があったのですけれど、本当は小中高の教育に関わる人たちと連携しながらやりたい、考えたい問題がたくさん含まれていると思います。

おまけ

 色々面白い議論があったのですが、いちいち紹介しているときりがないので一つだけ。
 何回か話題になっていたのですが、日本語の文章作成法(の教育法)がまだあまり固まっておらず、教養教育のアカデミックライティングではかなり英語のライティングの技術・教育に頼っている側面があるというのがかなりの共通認識としてあるというのが興味深かったです。
 僕自身も文章作成の授業ではかなり英語のライティングを意識しています。
 ただ、日本語が英語と同じようにやってなんでも同じようにはうまくいかないというのは日本語のアカデミックライティングの名著の一つ

理科系の作文技術 (中公新書 (624))

理科系の作文技術 (中公新書 (624))

ですでに示唆されているところでもありますし、もう少しなんとかしたいところですね。