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日本言語学会第145回大会雑感(1):形態理論と活用のワークショップを終えて

ワークショップ「現代形態理論と日本語の活用における諸問題: 音便・不規則形・迂言的活用」

資料

 当日の趣旨説明のスライドと僕の個別発表のスライドはそれぞれslideshareに上げました。

当日の様子

 二日目午前中、他にも面白そうなワークショップ裏番組がたくさん、形態(理)論に興味がある人がどれほどいるのか…等々の条件にも関わらず、予想していたより参加者も多く、質問もたくさん出たので正直驚きました。ご参加くださった皆さんありがとうございました。
 事前の打ち合わせなんかでは全く質問が出ない時のことばかり考えていましたが、全体討論の時間はむしろ足りないぐらいでした。その辺りうまくコントロールできなかったのが企画・司会担当としては申し訳なかったです。もったいなかった。
 あと質問で具体的な分析に関わるものが多かったというのもあるのですが、全体討論であまり理論や概念に関する話題を発展させられなかったのも反省点です(フロアからの質問・コメントをできるだけたくさんもらうことを優先しました)。終了後にメンバー同士と、あるいは個別に質問をくださった方とは色々そういうお話もできたのですが。
 メンバー間でも話が出たのですが、院生の参加が多かったように見えたのも嬉しかったですね。

内容について

 形態理論研究(理論的形態論研究)の紹介というのが大きな目的の一つであるにも関わらず、それぞれの理論を詳しく紹介している時間はあまりないという苦しい状況でしたが、発表者の皆さんのポイントを押さえたプレゼンのおかげで形態論研究者が何を気にしているのか(≒何が問題なのか)とか、なぜこんな理論が出てきたのかといったことがある程度は伝わったのではないかと思います。
 ホントは理論間の関係についてももう少し話せると良かったのでしょうけれど、それにはもう一つ別にワークショップやるぐらいじゃないとダメかもしれません。それぞれが採用しているモデルは様々と言っても、たとえば僕のと乙黒さんのだと具現的(realizational)モデルを重視している点で共通認識があったり、僕のと吉村さんのだと形態論と統語論の境界をそれほど厳しく線引きしないという点で類似性があったりして、なかなか複雑かつ面白いのです。
 あと一番形態-統語の関係に強い分散形態論を使ってる僕が一番(形態)音韻論寄りの話をしていて、分散形態論が一番得意そう(というか好きそう)なトピックを乙黒さんが取り上げていたり、基本的にはword-basedなモデルを採用している大島さん・吉村さんの二人が「た」や「て」は割と独立しているという話をしていたりと、マニアックなところではその辺りの“ずれ”みたいなものも面白かったですね(こういう裏話みたいなものもすれば良かったかしら)。

個人的な補足

 理論言語学の観点とは別に、国語学・日本語学の形態(理)論からの質問・コメントも出るかなと思って(戦々恐々として)いたのですが、意外とありませんでした。一応松下大三郎とかざっと復習してみたりもしたのですけれど、出なくて一安心(おい)。個人的には日本語研究における形態理論と理論言語学における形態理論の比較なんてのもやってみたいのですが、まあこれはまたいつか。
 もしかしたら僕も音便を取り上げた方が各モデル・分析の比較がしやすかったのかもしれません。実際だいぶ悩んだのですが、色々考えてやめました。僕の音便の分析はいつアウトプットされるのやら(だって難しいんですよ)。
 今回は分散形態論のやりたいことが伝わってきたというコメントを何人かの方からいただいて、布教普及活動としても良かったなと感じています。