誰がログ

歯切れが悪いのは仕様です。

日本英語学会第36回大会雑感

 あまり予想していなかったのですが,久しぶりにお会いしたりお話ししたりできた人がけっこういまして,それだけでも参加して良かったなと思います。おそらくごあいさつもできてない人もいたのではないかと思うのですが,別の機会を狙います。

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シンポジウム

 私が分散形態論 (Distributed Morphology)を使った研究をはじめてからもう10年以上経ちます。

 はじめたばかりの頃と比べて今では国際的に研究がかなり増えましたし,日本国内でもこの枠組みを使って研究した/している人は増えてきましたので,それでもこのような機会に声をかけていただけるというのはありがたいことです。

 この理論自身もスタート地点とされるHalle and Marantz (1993)から25年経っていくつかの変遷を経ていますので比較的さいきんの状況について紹介できたのは良かったと思います。特に企画・司会の大関洋平さんがやってくださったイントロ・概観のような内容を日本語で聞ける機会というのは今でもなかなか貴重ではないかと。

 私の話した内容については,論点の整理・紹介という側面が強く,またけっこう理論内部の事情が絡むお話でしたので「こいつはいったい何と戦っているんだ」感があったと思います。やっぱりさすがにもうちょっと現象の紹介を増やせば良かった(反省

英語学との関わり

 おまけです。

 こんかい,複数の人から「英語学会でも発表するんですね」的なことを言われました。実は数年前にワークショップもやっているのですが…というのは置いておいて,これは私がふだん関わっている学会は日本語学系だということに関係していると思います。

 日本語だ英語だということと,研究手法・研究内容の関係にはいろんな可能性があって,どれが正解・間違いということはないのですが,制度面や歴史的な経緯等の要因から,傾向性のようなものは見えることがあります。

 言語学で言うと,いわゆる(名前が付いた特定の)理論を使う研究については,「英語学」という名を冠する分野(あるいは学科・コースや研究科)が1つの大きな拠点と言えるのではないでしょうか。

 私は,言語研究のキャリアを日本語文法研究のいわゆる四大文法(山田,松下,橋本,時枝)や渡辺実,佐久間鼎,三上章等の文献を読むところからはじめた人間ですので,その点を考慮すると「日本語学」的な人と言えると思います。研究対象も基本的にはずっと日本語ですしね。

 ただ生成文法や分散形態論を使って研究をしていると,制度やキャリアの面で「英語学」的な人と関わることが多いのですよね。ふだんの付き合いではそういうことを意識することも必要もないので忘れているのですが,学会や出身の話になった時に驚かれることもあります。

 こういう話は研究の本質的な話ではないと思われる方も多いかもしれませんが,一方で(今のところ)我々は「大学」や「学会」といった制度と付き合っていく必要もあるわけで,論文等にもしにくい話ですから,ブログなんかがちょうど良い媒体かと思って書いておくことにしました。

さらにおまけ

 今回のシンポジウムをオーガナイズしてくださった大関洋平さんとは,発表者の1人でもある成田広樹さんが主催された勉強会に参加したことで知り合えました。成田さんと出会ったきっかけは依田悠介さんの博士論文のディフェンスを聞きに行ったことで,飛び入りで勉強会に参加させてもらいました。

 このようなことを思い返すと昔からふらふらしていたんだなあと思うわけなのですが,こんな突然イベントに現れるよく分からない人間を迎え入れて下さる皆さん,ありがとうございます。今はなかなかそういうこともできなくなってしまっていて残念です。

 研究のつながりってもちろん内容も重要なのですが,何がきっかけになるかわからないのが面白いですね。