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歯切れが悪いのは仕様です。

2018年度の授業で紹介した言語学・日本語(学)関係の新書

 Twitterで新書に関する教員のやりとりを見たので,私が今年度言語学関係の授業でおすすめとして紹介したものを簡単に挙げておきます。新書は授業で取り上げるとなると意外と難しいこともあるのですが,手に入れやすく(比較的)安価で電子書籍も充実しているのがやはり良いですね。

 以前紹介したものも含まれていますが,こういうのはいろんな形で何回もやるのが良いかと思いますので。

 ちなみに,私は読書案内は授業で取り扱った内容の補足,延長としてやることがほとんどなのでまったく網羅的なものではありません。しかし新書はけっこう玉石混交というかクセの強いものもあるので,各方面の専門家が少しずつ紹介を書くというのも良いのではないでしょうか。

新書

言語学入門

 黒田龍之助『はじめての言語学』

はじめての言語学 (講談社現代新書)

はじめての言語学 (講談社現代新書)

ここでは何回も紹介しています。実はけっこう強烈な表現もあったりするのですが,この本が良いのは「言語学入門への入門」ができる内容を備えているところです。下記の記事で触れたのはその一面です。

dlit.hatenadiary.com

やさしい日本語

 庵功雄『やさしい日本語』

やさしい日本語――多文化共生社会へ (岩波新書)

やさしい日本語――多文化共生社会へ (岩波新書)

日本語教育に関わりのある方だけでなく,日本語が第1言語でない人と少しでも関わりのある方には読んでほしい本です。実はさいきん国語教員志望の学生で「やさしい日本語」自体をあまり知らない人がけっこういるように見えるのが少し気がかりです。日本語学・言語学入門としての側面もあります。

文字

 大島正二『漢字伝来』

漢字伝来 (岩波新書)

漢字伝来 (岩波新書)

漢字の受容からかな/カナの成立までを丁寧に概説。

言語政策

 安田敏朗『「国語」の近代史—帝国日本と国語学者たち』

「国語」の近代史―帝国日本と国語学者たち (中公新書)

「国語」の近代史―帝国日本と国語学者たち (中公新書)

近代国家成立と「国語」「標準語」の関係について知るには批判的な観点が重要だと思います。国語教育に関わる人だけでなく日本語教育に関わる人にも読んでほしい本。

言語習得

 ⽩井恭弘『外国語学習の科学―第⼆⾔語習得論とは何か』

外国語学習の科学―第二言語習得論とは何か (岩波新書)

外国語学習の科学―第二言語習得論とは何か (岩波新書)

英語教育をはじめとして,言語教育・言語学習に興味のある方へ。

⾔語と思考・認識の関係(⾔語相対論)

 今井むつみ『ことばと思考』

ことばと思考 (岩波新書)

ことばと思考 (岩波新書)

サピア=ウォーフの仮説に興味ある方とか。いろんな言語の話が出てくるのを読んでいるだけでも楽しいです。

文法

 定延利之『煩悩の文法』

煩悩の文法―体験を語りたがる人びとの欲望が日本語の文法システムをゆさぶる話 (ちくま新書)

煩悩の文法―体験を語りたがる人びとの欲望が日本語の文法システムをゆさぶる話 (ちくま新書)

日本語文法関係の新書はいくつも出ているのですが,新書で文法で面白い本というとこれが個人的おすすめです。

おまけ

 広瀬友紀『ちいさい言語学者の冒険 子どもにまなぶことばの秘密』

ちいさい言語学者の冒険――子どもに学ぶことばの秘密 (岩波科学ライブラリー)

ちいさい言語学者の冒険――子どもに学ぶことばの秘密 (岩波科学ライブラリー)

新書ではないのですが,(日本語をベースにした)言語学の入門として素晴らしいですし保護者をはじめとしたこどもに関わる人に広く読んでほしい本です。個別に紹介記事を書く予定です。

関連

 そのほかのおすすめ書籍については下記にまとめてある記事でもいろいろ紹介しています。

dlit.hatenadiary.com