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歯切れが悪いのは仕様です。

ハイブリッド授業(同時配信型)今のところの雑感

はじめに

昨年度はすべての授業がオンライン(オンデマンド,あるいは同時双方向型)だったのですが,今年度はできる範囲で対面授業の可能性を探るということで,学部の演習の授業で対面+同時双方向オンライン配信のハイブリッド授業をやっています

「ハイブリッド授業」と言われる対面とオンラインの組み合わせにはけっこう可能性があって,こういう対面でやっている授業をそのままオンラインでも配信する授業は「ハイフレックス(型授業)」と呼ぶことが多いようです。

まだ数週なんとか乗り切ったという段階ですが,今のところの体験談や感想を書いておきます。感染状況がどんどん悪化していますので当初対面のみだった大学院の授業も同じやり方のハイブリッドに移行しました。このまま悪化するとまた完全オンライン化も遠くないかもしれません。

なお,私はあまり機材やコンピューターに強くないので,機器をどう接続するかとか,ソフト・アプリの詳しい使い方のような話は書きません。ノウハウ的なことを知りたいという方はそのような記事を検索等で探してみることをおすすめします。

環境

とは言ってもオンライン授業は機材やコンピューターの話と密接に関連しますので,最低限どういう環境でやっているかということについては書いておきます。

  • 大まかな方法

    • 教室でやっている授業をMicrosoft Teams(以降Teams)の会議でオンライン配信
    • 配信を録画すると自動的にMicrosoft Streamにアップされるので受講生はそちらも視聴できる
    • 授業の資料等受講生に直接見せたいものはTeamsで共有,教室ではスクリーンに映す
    • 授業に対するコメント・質問は教室で参加していてもTeamsのテキストチャットで
  • 機材など(ヘッドセットとカメラは記事最下部に商品へのリンクあり)

    • コンピューター:MacBook Air 2020(80%ほど充電してあれば1コマ75分のバッテリーは心配なし)
    • ヘッドセット:AfterShokzのOpenComm(Bluetooth接続,骨伝導)
    • カメラ:LogicoolのStreamCam(コンピューターにではなく三脚に設置)
    • 受講生数:30名弱(演習なのに…)

マイクとテキストチャット

OpenCommのマイクについてはスライドへの録音に関する記事で質が良いということを書きました。配信の録画を視聴してみたところ,音声はやはりかなりクリアです。

dlit.hatenadiary.com

授業中の受講生の声をどうやってオンラインへ拾うかというのは色々考えてみたのですがマイクを使う方法はどうしてもうまいやり方ができそうになかったので,授業中の発言についてはオンラインで参加している受講生だけでなく教室にいてもテキストチャット(Teamsの会議のチャット)に書き込むようにお願いしています。

ただ音声による質問・コメントを禁じているというわけではなく,もし出た場合は私がそれを復唱したりまとめ直したりしてクラスで共有し,それに応えるということにしています。

前に別の記事で書いたような気もするのですが,5名以下とかならともかく,20人をこえるような授業で誰から出るか分からない声を拾うためにマイクをどう使うのかというのは難しいです。そういう設備がある部屋が使えるならいいんですけど,毎回セッティング・撤収しないといけないですからね。感染対策のことを考えると1つ,あるいは少数のマイクを使い回すというのもやりたくありませんし。

あと,授業中の受講生同士のおしゃべりの代替としてテキストチャットツールを使って良いことにしています。これはLINEとかTwitterとかツールは何でも構わないです。いわゆる「私語」がひど過ぎると授業をやる側としては困るわけですが,近くの席の人がまったく話せないというのも実はあまり良くないのではないかという気がしていまして。もともとやってる人はやってたと思いますけどね。あとこの方法だと教室で参加している受講生とオンラインで参加している受講生でもやりとりが可能です。

ハイブリッドの良さ

やってみて実感したのは,ハイブリッドだと受講生が授業に参加する機会が増えるということです。やり方を増やしているわけなので,ある意味当たり前ではあります。

個人的な事情が絡みますので具体的には書きませんが,COVID-19感染対策以外の事情があって教室には来られないけれどもオンラインで参加したいという受講生が実際にいました。これは思ったよりいろいろな可能性がありそうな気がします。たとえば精神的につらくて教室に来たりそもそも家から出たりするのは難しいけれども家でならオンラインで授業に参加できる,といった学生もいるかもしれません。

今のうちに負担の小さい方法を吟味して,コロナ禍が終わった後も色々な授業でハイブリッド形式が継続できると良いのではと考えていますが,どうでしょうね。現状では緊急避難的な位置付けなので,めでたくコロナ禍がおさまったらあまり保持されないですかね。

ちなみに,大学院の授業を対面からハイブリッドにしたら思ったよりオンラインでの受講希望者が多かったです。たまたまかもしれませんし,ほかにさまざまな要因が考えられますけれども,できるならやった方が良いのかなということをこの短い期間でいくつか体感しました。

今まであったトラブルや難しい点

手軽にできるなら多くの人がチャレンジしてみようとなるのでしょうけれど,やはりいろいろ難しいポイント,対応や対策を考えなければならないことはあります。ハイブリッド特有というよりオンラインだからというものもありますが,ここではあまり区別せずに列挙します。

ネットや機器のトラブル

ネット(回線)や機器にトラブルがあると,授業を特にオンラインで参加している人に届けられなくなることがあります。これは研究室とか家からオンラインで配信する場合も問題になりますね。

特に,教室自体にトラブルがあると教員ではどうしようもないことがあります。私が授業をやっている教室は棟全体がさいきんまで耐震工事をやっていた影響で(聞いた話)初回はコンピューターをプロジェクターに接続してスクリーンに映すことができず,また大学で提供しているWiFiが使えませんでした。配信自体は私の個人的な回線を使ってできましたが,教室の受講生もテキストチャットでコメント・質問をという計画はいきなり変更に。その後どちらも改善して今はうまくできています。

私自身が持ち込んでいる機器のトラブルとしては,ヘッドセットのBluetooth接続がどうも調子悪くて,授業開始に少し時間がかかったり,音声がオンラインにうまく流れていなかったり。どうしてもうまくいかない時用に有線接続のヘッドセットもサブで用意しておいた方が良いかなと考えています。うまく接続できなくて焦ってしまい,初歩中の初歩であるミュートの解除し忘れをやらかしたり。これは受講生が指摘してくれて助かりました。

準備・撤収に時間がかかる

私がやっていることはハイフレックス型授業の中ではかなりシンプルな方ではないかと思いますけれども,それでもセッティング・撤収にはけっこう時間がかかります。昼食直後の授業なので準備にはそれなりに時間がかけられますが,次の授業も同じ教室で対面授業があるので撤収はけっこう焦ります。私はこれまでけっこう余裕を持って授業を始めて時間通りに授業を終える教員だったのですが,今年度は忙しなくてなんだかずっとばたばたしています。今は消毒などの手間もありますしね。

これ今の状況では意外と問題なんじゃないかなあと。なぜかというと今対面授業で使える教室が限られているのですよね(受講生同士の距離が確保できるサイズの教室しか使えないので)。それで一部の教室に授業が集中し,前後に授業が入っていることが多くなっているという可能性がありそうです。これはコロナ禍がある程度収束すれば良くなるのでしょうけれど。

演習の発表

今後完全オンラインに移行する可能性もあること,あと単純に発表枠が足りことを考慮して,今年度の学生による発表は事前に発表を録画して授業までに視聴しておき,授業ではそれに対してコメント・検討という形にしました。これはまったくはじめての試みなのでやや不安はあります。

ただこれは仕方なくというだけではありません。さいきんは国際学会等での発表でも録画したものと提出して当日はそれをベースに質疑応答という形式があります。また,今の就活生から聞いた話では就職活動の一次面接などの代わりに録画したものを提出するという形式もあるそうです。このような機会に体験しておくのも良いのではないかと。

おわりに

なんか書き忘れていることがありそうな気もしますが,ひとまずこの辺りで。

今回のコロナ禍がめでたく収束したとしても今後またどのような困難によって(教室での)授業が難しくなるか分かりませんし,学生の選択肢を増やすという意味でもハイブリッド授業は1つの良い選択肢ではないかと思います。

ただ現状では手軽にできないというのが大きなハードルですので,せめて今まで教室でプロジェクターを使うのと同じくらいの手間でオンライン配信も同時にできるようにする設備をできるだけ多くの教室に配備するか,あるいはできるだけ多くの授業に技術的なアシスタント(現実的にはTA?)を付けないと難しそうです。つまりはお金か人,理想としては両方が必要なわけですが,今の大学にいるとそれが一番難しそうだという気がしてなりません。

紹介した機材(一部)