はじめに
この記事では,私がどうNotionを使っているかについて少し具体的に書いてみます。最初は数例紹介しようと書き始めたのですがスクリーンショットも多く長くなってしまったので記事をいくつかに分けます。ちょっと前にAPIに関する記事を先に書いてしまいましたので,こちらも何かの参考になると嬉しいです。
Notionはいろいろなことができる(できてしまう)ので実際に自分で使ってみようとなった時にかえって戸惑ってしまうということがあると思います。また,そこで使い方を検索してみるとガンガン使いこなしている方の情報ばかり出てきてちょっと手を出しづらくなってしまうような人もいるのではないでしょうか。というわけであまり使いこなせていない人の使用例がもうちょっとあっても良いのではと思ってこの記事を書いています。
どんどん使っている人が増えてきてAPI解放をきっかけに今後さらに情報も増えるでしょうけれど,今のところ日本語で読めるものでは企業での仕事に関するノウハウや例が多いような気がします。そういう情報ももちろん参考になるのですがこの記事では研究/教育に関わるところでの私の使い方を紹介します。
といっても研究や教育にかなり特化した使い方というわけではなくNotionの使い方としてもごく基本的なことしかやっていませんのでご注意下さい。また,Notionの操作方法などについての情報は今は日本語でも読めるものがたくさんありますのでこの記事では特に紹介しません。
あと私の仕事の環境について細かく紹介することもしませんが使い方に関係してくることで1つだけ。基本的に私個人で使っていてNotion上でのチームは組んでいません(ほかの研究者・教員や学生と一緒に使うことはない)。今の私の環境だと難しそうなんですけれど共同研究で使うと便利だったりするんですかね。
Notionの性格と個人的な位置付け
具体例について読みたいという方はここは飛ばして下さい。
それほど長く使っているわけでもたくさん使っているわけでもないのですが,今のところ私がNotionに対して持っている印象は,ある程度自分で能動的に収集したり構築したりする情報(群)の取り扱いが得意なツールというものです。逆に言えば,あらゆる情報をただ整理せずに放り込んでおくとか,論文などの文章執筆をするといった使い方に向いているとは(現状では)あまり思えません。
もう少し具体的な名前を出すと,webにある情報のクリッピングツールとしてはEvernoteの方が使いやすいですし(Notionもクリッピングはできるんですけど精度や使い勝手についてはまだ安定していないかな),論文やブログなどある程度の量がある文章を書くツールとしてはScrivenerを使っています。単純なテキストの整理ならQuiverのようなものが便利かもしれません。Notionが話題になる時にEvernoteの名前を見かけることが多いですが,けっこう性格の違うサービス・ツールではないかと思います(私は今のところ併用)。
こうやって書くとそんなに色々使って混乱しないのと思う人もいるでしょう。私も以前はEvernoteなど特定のサービス・ツール1つで色んなことをするというスタイルを試してみたこともありました。しかし少なくとも私の場合,やることによって使うサービス・ツール・アプリを切り替えた方がかえって目的の情報に辿り着きやすかったり全体的に作業が早くなったりするということが多く,使い分けるスタイルに落ち着いています。
下記に書いていく例でもポイントになっているNotionの特徴は次のようなものです。
- 個々のページやデータをどんどん入れ子にできる
- Excelなどから内容をまとめて取り込むのが巻単にできる
- ページやデータを簡単に関連づけられる
- 1つのデータ群の表示の仕方を簡単に切り替えられる
使用例1:研究イベントの記録
会議録テンプレートの応用
上のAPIの記事でも触れた下記の会議録テンプレートを,学会や研究会などの研究イベントの記録にも使っています。APIの記事では会議の方を例として出しましたけれどこっちでは研究者データの扱いと合わせて研究イベントの方を取り上げます。
store.biz-notion.northsand.co.jp
と言いつつ,実際には区別が難しいので会議と研究イベントは1つのデータベースに入れて管理しています。会議と学会とかなら分かりやすいんですけど,じゃあ自分が副査をやっている学位論文の公開発表会は?とかけっこう「仕事」としての性格が強い研究イベントも少なくないんですよね。あと1つのデータベースに入れておくとカレンダービューでまとめて見られるのでスケジュールのバッティングに早めに気付けたりします。
propertyの設定
ではまずpropertyの紹介を。スクリーンショットの加工がめんどうなのでおまけ程度になっていてすみません。
- People:研究発表なら発表者や共同研究者です。研究者のデータベースは別に作成して,そこから情報を引っ張ってくる「Relation」というpropertyを使っています。詳しくは後述
- イベントの種類:ほかには「博士/修士/論文関係」や「打ち合わせ」「アポ/面談」「会議」などを設定。propertyごとに並べるビューがあるのでその時に分かりやすいように。タイプはまれに複数重なることもあるので「multi-select」
- 立場:ほかに「主査」「副査」「聴衆」などを設定していますが,あまり使用頻度は高くないです(だいたい自分で覚えているので)。こちらも重複を考えてタイプは「multi-select」
- 学会/組織:主な学会名や研究会名を入れています。単発でしか参加しないようなイベントはpropertyが増えて煩雑になるので入力しないことも。これは重複がないので「select」
- 日付:これは名前の通りなので特に説明はいらないかな。日付のフォーマットや12h/24,タイムゾーンも設定で簡単に変えられます。タイプは「Date」
- 場所:開催場所のタイプを登録しています。「Zoom」とか「○○大学」とか。対面とオンラインのハイブリッドとかあるのでタイプは「multi-select」
- 場所2:開催場所のさらに詳しい情報です。建物名,部屋番号とかですね。オンラインの場合はここには何も入れません。異なる情報であることが多いのでタイプは自由に入力出来る「text」
- Meeting URL:オンラインイベントが多いので個別に作りました。主にZoomのミーティングurlを入れています。ここから直接飛べるので便利。タイプはもちろん「URL」
- URL:こちらにはたとえば学会の大会のページや研究会のページのurlを入れます。こちらもタイプは「URL」
- イベントの名称:メインタイトルには研究発表のタイトルを入れるので「○○研究会」とか「○○学会」みたいな情報を入れたいときに入力します。「学会/組織」のpropertyとかぶるので入れないこともありますが,時々単発的なイベントの名称を記録しておきたいことがあるので。タイプは「text」
ここまで詳細に書いておいてなんなんですが,設定・入力のポイントはすべてをちゃんと網羅しようとし過ぎないことだと思います。propertyはあくまで記録しておきたい情報を残すことがメインなので,あまり重要でない情報は入れないこともあります。また,「select」「multi-select」タイプの値は増やしすぎると探すのに手間取ったりしますので継続的に使わないものは登録しないというのも手です。
記録に使うテンプレート部分
利用可能なテンプレートは複数登録できるのでいちおう研究イベントと会議ではテンプレートは別で登録してあるのですが,現状ほとんど一緒です。
- 資料:学会ならプログラムとか時々ざっと見たい情報のpdfファイルを埋め込むと直接表示されてスクロールもできるので一番便利です。Google Driveへのリンクも埋め込めるので自分の発表資料なんかを置いても良いかもしれませんがあくまでもリンク閲覧には一手間いるので私はあまり使ってません。まれに関連情報のツイートを埋め込んでおくと便利なこともあります。
- 目次:ここだけ見出しを付けていないので分かりにくいですが資料の右側にあるスペースです。毎回作成するわけではなく,Heading1-3で書く(/headingを使っても良いけどmarkdownで書くのが楽)とここに自動的に反映されます。便利。早くHeading 4が使えるようになってほしい
- 用意した質問・コメント:特に学位論文関係では主査・副査として質問・コメントが必須なことが多くまた事前に論文(の草稿)を読んでおくことも多いので,思いついたことを事前に書いておきます。かなり内容が多くなってしまうこともあるので折りたためるようにtoggle listを使って折りたためるようにテンプレートに書いてしまいました(毎回書くのもあまり手間ではありません)
- Note:こちらは,イベント参加中のメモに使います。上にも書いたようにHeadingのレベルが3までしかないので内容としては3以下のレベルの情報も目次に反映させたい場合はHeading 3で書くようにしています。
- Task:自分の研究発表だと指摘された課題などを登録すると良いですね(私の場合Zapierを介してOmniFocusに自動的に登録されます)。ほかの人の発表を聞いている時でも調べたいなと思った文献情報などをここに入れてタスクにすると便利です。ただメモするだけだと忘れてしまうこともけっこうあるので…
研究者データベースを作ってタグ代わりにする
これは,発表者のpropertyをどうしようか悩んでいて思いついた方法です。毎回人名をtextで入力しても良いんですが,そうすると同じ人が関わっている個々の発表の情報が紐付かない。Notionはデータベースにpropertyをたくさん付けられて便利ですけどデータベースをまたがって使えるグローバルなタグがないのですね。でも調べてみたら「relation」のpropertyがタグのように使えるのではと。
というわけで研究者のデータベースを作りました。propertyとしてはメールアドレスや研究者個人のサイトの情報なども入れられるようにしてあります。このスクリーンショットでは「Reseacher」という属性しか見えませんが,ほかに「Faculty(学内関係者用)」「Student(指導学生用)」なども使っています。「English」はソート用に設定してあるpropertyですね。
「relation」のpropertyを使うとほかのデータベースへのリンクのような関係が作れるので,先ほどの研究イベントのpropertyの「People」をこのデータベースに紐付けます。そうすると研究イベントのPeopleに情報を入れる時にインクリメンタルサーチでデータベースからデータを引っ張ってきてくれます。
また,元のデータベースにない情報もそちらに行ってデータを作る必要はなく,relation先から直接新しいデータを登録できます。
「でも研究者のデータベースを作るの大変そう…」と思うかもしれませんが,csvやExcelのデータがあれば内容を丸ごとコピペできるのでデータベース(の元)を作るのは簡単です。私が使っている文献管理ソフトZoteroにはデータをcsvで書き出す機能があるので,そこから著者名だけコピペして一瞬でできました。
さらに,こうやってrelationされた情報は元のデータベースにもリンクが作成されるので,そこから関連する研究イベントを一覧できます。
私は文献管理はZoteroで不足がないのでNotion上では基本的に文献管理はしていないのですが,ZapierなどAPIを介して研究関係のサービスがもっと使えるようになったら何か考えても良いかもしれません。
おわりに
こうやって書いてみるとかなりごちゃごちゃしていますが(実際もっと洗練させられるところはありそうです),データベースやページのベースを作る時も作った後に使う時もさくさく作業ができます。冒頭にも書いたようにNotionは色んなことができるので何かを作り始めるのに時間がかかることもありますが,ある程度方向性が決まると早い気がします。
次回は担当授業の情報の管理方法について書く予定です。