誰がログ

歯切れが悪いのは仕様です。

「ファン」との付き合い方とか研究とか

幸い?自分自身はあまりそのような悩みはないのだけれど、SNSをはじめとしたwebでの活動、芸能、スポーツなど複数のフィールドで「ファン」の存在のネガティブな側面について考えさせられる出来事が続いているような印象がある。

芸能やスポーツといった業界では古くからある問題だろうが、PVとかインプレッションとか再生数とか触れてもらえる「量」が大きな存在になっている今のwebの世界で、今までは素人(側)だった人たちがどのようにファン(「支持者」とかもっとマイルドな存在まで含めて)と向き合うのかというのは思ったより深刻な問題なのかもしれない。

いや思い起こすとwebでも古くからあった問題のような気はするけど、昔はもっとwebでも一部の人たちの問題だったような気がする。「アルファ○○」という言い方が使われなくなったのはことばのはやり廃りという側面が大きいというのとは別に、今は上で挙げた「量」の面で見ると多くの多種多様な「アルファ○○」がwebにいるのであまり特別感がなくなってしまったというようなことはないだろうか。

これまではあまり調べてなかったけれどファンを取り扱った学術的な研究を読んでみたくなってきた。言語研究でもファンによる特定のサイトや掲示板への投稿の分析とかあるし、きっとほかの研究分野でもいろいろあるだろう。私のゼミの卒論でも過去にアイドルファンのSNSへの投稿とか推し香水レポとかをテーマにしたものがあって、データを見直してみるだけでも面白そうだ。

大学入試における試験監督の「談笑」の件についてちょっとだけ

私自身は国語教育が専門ではないのですが、周辺領域にいる大学教員として気になる話です。

togetter.com

Yahoo!ニュースでも記事を見かけました。

news.yahoo.co.jp

まず一般論として傍線がカッコ(閉じ)などの記号類にかかっているかどうかが入試の解答に影響を与える可能性はあります。しかしやはりテキストと問題がないとその重要性は判断できないので、ここに出ている情報だけで大した修正ではないといった判断をするのは難しいです。ただたとえテキストの読解や問題への解答に大きな影響がなかったとしても、受験生の行動に影響があるなら入試の問題としては些細なことと切って捨てるのは難しいというのが私の感覚です。

ここで「談笑」(のように捉えられてしまう行動)があったのが事実だとしても、その監督員?がこの修正をどのように捉えていたのかもやはりここで出ている情報からは決めがたいように思います。訂正の情報だけ見て大したことないと思った可能性もありますし、試験問題をじっくり自分で解いてみたからこそ重要ではないと判断したという可能性もあります。

仮にこれが実際にそれほど大したことはない修正だったとして、それがなんだか必要以上に大事になってしまう(と感じられる)ことがつらいなという感覚自体は分かります。しかしそのような性質の入試が人生に大きな影響を与える社会の維持に関わっている度合いはほとんどの受験生より大学教員の方が大きいでしょうから、その点を考慮せずに大学教員が受験生や大学入試を安易に馬鹿にするようなことがないと良いなと思います(嫌な予感がしてあまりTwitterを見る気になりません)。

数少ないペーパーテストが人生に大きな影響を与える制度は特にやり直しがききにくい社会の下では好ましくないとは思うのですが、多くの大学では入試の回数を増やすといった余力はまったくなさそうです。(外部委託などの方法は取らずに)今後もしそのような流れになったら、大げさではなく誰かの健康や命がさらに損なわれるということではないでしょうか。

Obsidianでアステリスクをそのまま表示させる(Pandocのエクスポート結果付き)

はじめに

アステリスクの記号(*)をObsidianのようなmarkdownの環境でそのままの見た目で表示させるのはどうすれば良いのかということについて書きます。結論としては特に目新しいことはないと思いますが、Pandocプラグインによるエクスポートのテストなどもやってみましたので参考になる方がいれば嬉しいです。

言語学的な背景

なぜ特にアステリスクに話を限るかというと、私の研究分野である言語学ではアステリスク(*)を専門的な記号としてよく使うからです。

たとえば下の方で実際に例としてアステリスク付きの英語の例文 "*Anybody didn't come." を使っています。これは "Anybody didn't come." という表現が非文法的 (ungrammatical) であるということを示しています。実際には容認性 (acceptability) が著しく低いということを示すのにもこの記号が使われていると思いますが、これは言語学についての記事ではありませんのでこの辺りの細かい話には立ち入りません。ちなみに、文だけでなく句や語といったもっと小さい単位に付けて使うこともあります。

ほかの分野でもアステリスクを使いたいのにmarkdownの環境ではそのままでは文字として扱われないのでちょっと困るということはあるのではないでしょうか。

markdownでの扱い

markdownではアステリスクがその直後の文字列を斜体にする装飾用の記号として機能します。これはmarkdownの非常に基本的な記法なのでObsidian以外の環境でも触れたことがある方は多いでしょう。

これを知らずにObsidianで "*Anybody didn't come." と書くと "Anybody didn't come." と表示されてしまうわけですね。一般的なタグなどと異なり右の方にアステリスクをもう1つ置かなくても(改行のところまで)斜体になってしまいます。斜体になるだけならまだ良いかもしれませんが、その有無に大きな意味があるアステリスクの記号自体が見えなくなってしまうという点が問題です。

editing modeを装飾が見た目として反映される "Live Preview" ではなく "Source mode" にすればアステリスク自体は見えるようになります。ただその場合もやはり斜体にしたくてアステリスクを使ったのか言語学上の記号として付けたのかが分かりにくいです。

解決案

いろいろ試してみて、結局解決案はこれもやはり一般的なやり方であるバックスラッシュ(\)でエスケープするというのが一番良さそうです。markdownにある程度慣れている方は当たり前の結論過ぎてがっかりかもしれませんが、ほかにもいくつか試してみたので下にまとめます。

バックスラッシュによるエスケープ

アステリスクなどの特殊な機能を持つ記号は、その直前にバックスラッシュ(\)を置くことでその効力を無効化できます。これはアステリスクだけでなくほかの記号にも有効ですし、Obsidianだけでなくmarkdownでは一般的な方法なので知っておくと便利でしょう。

私はLaTeXも使うのでバックスラッシュを簡単に入力出来るような設定にしていてこの方法が楽ということはあるかもしれません。やり方は環境によってさまざまですので調べてみてください。

アステリスクの後にスペースを入れる

アステリスクの後にスペース(半角でも全角でも)を入れるとスペースの後にある文字列は斜体にならないようです。

見た目としてはすっきりしていますし、手間も少ないです。ただスペースの存在は環境によっては判別しにくいですしコピペなどした際にスペースの存在が厄介になることもありそうです。あと、言語学だとアステリスクの後にスペースを入れるということは基本的にしないので意外と手間を増やすやり方かもしれません(論文化するときに消さなきゃならない)。

全角のアステリスクを使う

全角のアステリスクはmarkdownの記号としては解釈されないので半角のアステリスクの代わりにするということが考えられます。実際、和文の言語学関係の論文では全角のアステリスクを使っているものも見ます。ただあまり一般的ではないように思いますのでおすすめできないですね。英文中で使いたいときには書き換える必要が出てきますし。

コードとして書く

コードブロック、あるいはインラインコードの記法を使って書くとアステリスクがそのまま表示されます。ただバックスラッシュに比べると書く手間もかかりますしほかの装飾も無効化されてしまうので(バックスラッシュの場合は直後の記号のみ無効化)、あまり有効な場面が思い浮かびません。

Pandocプラグインによるエクスポート

ObsidianにはPandocプラグインがあってノートを直接さまざまな形式にエクスポートできます。

github.com

私は実際に発表資料や授業の資料の下書きをObsidianで書いてPandocプラグインでWordなどの形式にエクスポートするということをやっているので、アステリスクの扱いがどうなるのか気になって試してみました。エクスポートの形式はWord(docx)で統一しました。

何もしない場合

上に少し書いたようにObsidian上では左端だけにアステリスクを付けた場合も両端をアステリスクを囲った場合も同じような見た目になります。

アステリスクを使ったObsidianのノート

しかし、これをPandocプラグインでエクスポートすると扱いが違って、両端を囲ったもののみが斜体として装飾されています。

PandocプラグインでObsidianからWordにエクスポートした場合のアステリスク

アステリスクの対策をした場合

上で紹介したそれぞれの対策を行ったObsidian上のノートは下記のようになります。

アステリスク対策をしたObsidianのノート

これをPandocプラグインでエクスポートすると次のようになりました。コードの場合はフォントも律儀に対応されて変わっていますが、アステリスク自体はすべてきちんと表示されています。

PandocプラグインでObsidianからWordにエクスポートしたアステリスクの対策結果

おわりに

ちなみに、バックスラッシュによるエスケープを使っているとObsidianで「\*」を検索することで装飾以外の意図で使ったアステリスクのみを探すのが比較的簡単にできます。これも人によっては意外と便利かもしれません。