誰がログ

歯切れが悪いのは仕様です。

専門家と素人

山口仲美『日本語が消滅する』を読んで気になったところ(後半)

後半の「はじめに」 前半への反応について 後半の内容に関する注意 トピックごとのメモ 語順 語彙 絶対敬語と相対敬語 音声言語と文字言語 表語文字(表意文字) 和製漢語 レアな日本語 そのほか おわりに 前半と後半は問題点の指摘については内容として独立…

山口仲美『日本語が消滅する』を読んで気になったところ(前半)

はじめに 全体の印象 言語と方言の関係、琉球諸語の取り扱い 問題の整理 琉球諸語および八丈語を「方言」として取り扱っていることとその根拠(1と2の問題) 方言に関する具体的な言及がほとんどない(3の問題) さらにそのほかの問題 おわりに 追記(2023/1…

Amazonのアフィリエイトを(アカウントごと)削除しました

はじめに 先日、下記の記事に書いたように10月1日からのいわゆるステマ規制法への対応でアフィリエイト(このブログではAmazonアソシエイトのみ)をどうするか検討していました。 dlit.hatenadiary.com 結論としては、アフィリエイト自体を完全にやめること…

主に書籍の紹介記事についてステマ規制法への対応を考えています

追記(2023/09/29) 検討した結果、アフィリエイトをやめました。すでに対応は完了しています。 dlit.hatenadiary.com はじめに 下記の記事でいわゆるステマ規制法のことを思い出しました。 suan.tokyo 正直、今まであまり自分のブログのこととして考えてい…

小野寺拓也・田野大輔『検証 ナチスは「良いこと」もしたのか?』雑感

はじめに 構成や文体など全体的な特徴 評価への踏み込み方 具体的な検討と切り取りや単純化への危惧 専門家によるデバンキング おわりに はじめに webで見かける評価が同じ書籍に対するものとは思えないほどばらついているように見えたり、この書籍について…

日本言語学会第166回大会雑感(ワークショップ、シンポジウムのみ)

はじめに 先週末、専修大学(神田キャンパス)で日本言語学会第166回大会がありました。コロナ禍が本格化して以降はじめての対面形式での開催です(後日録画が視聴できるハイブリッド方式) www.ls-japan.org 私自身は特に避けていたというわけでもないので…

批判を受け入れて修正するのはすごい(ゆる言語学ラジオさんとのやりとりについてもうちょっと)

はじめに 下記の記事に書いた金谷武洋氏の著書に関して,ゆる言語学ラジオさんから訂正の情報が出ていました。 dlit.hatenadiary.com 動画内で取り上げているのは下記のものです。動画のページにも記載があるように,該当箇所は32:43です。 www.youtube.com …

ゆる言語学ラジオさんとの金谷武洋氏をめぐるやりとりについてちょっとだけ

はじめに 「ゆる言語学ラジオ」というYouTubeのチャンネルに金谷武洋氏を肯定的に紹介している動画があります(紹介が目的ではないので直接リンクをはることはしません)。 金谷武洋氏の著書の内容には専門的に見ていろいろ問題があり,以前いくつか批判記事…

言語の研究者はことばの規範とどう付き合う(べき)か,についてちょっとだけ

はじめに 下記の話題に関して,「言語の研究者は(軽々しく/何があっても)ことば遣いに関する規範に口出しするのは良くない」という反応を見かけたので,関連して今の自分の考えを少し書いておこうと思いました。 togetter.com 解説や問題の整理という類の…

【改訂版】「水からの伝言」に言語学の立場から反論する(読書案内付き)

はじめに 「水からの伝言」とは何か,簡単に 言語学の話に入る前にもう少し (言語記号の)恣意性 「意味」と文脈 まとめ おわりに 関連 はじめに 改訂版を書こうというアイディアはしばらく前からあって,実はnoteに載せるつもりだったのですが,ここしばら…

研究のアウトリーチ活動とか文理の対立とか(日本学術会議に関する記事への補足)

数日前に書いた日本学術会議に関する記事への補足みたいなものです。 dlit.hatenadiary.com 研究や学術のアウトリーチ活動 私が上の記事で言及した「研究や学術活動の社会との関わり方」については,かなり漠然とした表現であったために,受け取る人によって…

日本学術会議の任命拒否の件について40代人文系(たぶん)研究者の雑感

追記(2020/10/12) 補足記事を書きました。 dlit.hatenadiary.com はじめに 当初,この問題が出てきたときはここまで多くの人の興味を引くとはまったく予想していなかったので驚いているというのが正直なところです。そのおかげか,日本学術会議の位置付け…

写真(家)の倫理,研究の倫理

下記の記事で話題になっている件ですが, news.yahoo.co.jp はてブのコメントで紹介されていた2014年に書かれた関連しそうな内容の記事が面白くて,研究の話となんとなく似ているところがあるかなと思いました。 yanretro.hatenadiary.org 以下,研究(倫理…

文章の長さとか専門家性とか

文章の長さとか 言及いただきましたので関連しそうなことを少しだけ。 interdisciplinary.hateblo.jp 私もけっこう長くてややこしい記事を書きますので,「長い」系の苦情をいただくことは少なくありません(でもさいきん少ない気がする)。私のブログの「歯…

専門家としてブログとどう付き合うか(今の方針)

追記(2019/01/08) なんだか内容と合ってない気がしたのでタイトル変更しました。 はじめに 途中ではてなブログへの移行があり名前も変えてしまいましたが,このブログ(元はてなダイアリー)もそろそろ15年目を迎えます。 dlit.hatenadiary.com 下記の記事…

「やさしい日本語」についてちょっとだけ

はじめに 下記の「やさしい日本語」に関するまとめが話題になっていて,Twitterでも少し関連することを書いたのですが,やはりこちらでも少し何か書いておくことにします。 togetter.com 東日本大震災の時にもそこそこ話題になったという印象があったのです…

各分野での論文とか業績に関する記事のまとめ(見つけたら追記してます)

下記の記事の公開後,けっこう面白い広がりを見せつつあるので少しまとめておきます。リンク集は下記で紹介するnext49さんのものですでにまとめてくださっているので必要ないかなとも思いましたが,かぶっていてもできるだけ多くの人の目にとまるのが良いか…

これまでに書いた言語学や研究に関する記事のまとめ

言語学の入門書紹介 個別のトピックに合わせた本や論文の紹介 そのほかのレビュー・感想 断片的な文献リスト おまけ1 言語学や研究について作成した教材(動画) 言語学や研究に関するノウハウの紹介 おまけ2 ほかの分野の本の感想など これまで本や論文の紹…

(スランプ?)専門家として何をどこまでどんな調子で書くか

最近、こちらになかなか書けていません。そもそも特に理由がなくても平気で半年ぐらいほったらかしにするブログではあるのですが… 別館やついったーを見ている方は「やっぱり育児大変なのね」とお思いになるかもしれませんが、主な理由は仕事量の増加です。…

「今だから知りたい放射線の話(きくまこ大人かふぇ)」@えるかふぇに参加してきました

行ってきました。僕にしてはけっこうこまめにメモを取ったんですが、こちらにも簡単に参加記など書いておきます。まとめられる気がしないので書き殴りです。適当に読むことをおすすめします。報告としては断片的すぎると思いますが、きっとどなたかの補足情…

ちょっと考えを変えて、アフィリエイトを使ってみることにしました

以前は絶対アフィリエイトなんか、と思っていたのですが。とりあえず書籍紹介にいつも使っているAmazonのやつを試すことに。 考えを変えた主な理由は以下の2つです。 専門家としての情報発信のモデルケース模索の一環として 書籍紹介のモチベーションになる…

「疑似科学」の範囲のややこしさ、あとことばでくくること

書いてみるとお前誰なんだという感じの内容になってしまいましたが、一読者の雑な感想として。 個々人が別個の問題にもとりくむべきという話ではなく、疑似科学に歴史修正主義がふくまれることを理解するべきという話 - 法華狼の日記 を読んで。 このタイト…

金谷武洋氏の著作について今後どうするのが良いのか(たぶんしばらくは何もしません)

最近は自分から情報を集めているというわけでもないのですけれど、新しい本が出たということもあってか、ちょくちょく関連情報を目にしたり、検索でいらっしゃる方も微増していたり。 金谷氏については、部分的にですが、書いたものがそこそこありますので、…

(積極的に)関わると矢面に立つことになって下手したら疲弊しちゃう問題

以下は科学哲学などが専門の伊勢田哲治氏に対するask.fmでの質問とその回答。 科学哲学者はいつまでニセ科学(や科学者の背信行為)を野放しにされるお積もりでしょうか?一般に訴えかけられる科学哲学者の存在意義はそのくらいしか無いと思うのですが。 | ask…

なぜ歯切れが悪い文章を書くのか

ブログ上部の「歯切れが悪いのは仕様です」という文言は実はかなり評判が良いです(最初に掲げたときはまさかこんなにリアクションがあるとは思いませんでした)。 はじめに さて、先日のエントリにこんなブコメが付きました。 人文系が嫌われるのはこのエン…

(自虐としての)人文学は役に立たないとかなんとか

次の記事に関連して以前から思っていたことを少し。 きみらは人文系なの?違うなら人文系について語るのはやめてください、お願いだから。 で、きみらは人文系なの? 僕は専門は言語学ですので、一般的には「人文系」だと認識されていると思います。まあ末席…

【紹介】日本語学会2012年度春期大会シンポジウム「グローバル市民社会の日本語学」の各講演が文章化されています

シンポジウムの感想は以前書きました。 日本語学会2012年度春期大会シンポジウム「グローバル市民社会の日本語学」雑感 - 思索の海 このシンポジウムの報告という形で出ているのではなく、雑誌『日本語学』2012年11月号の特集「人生のための言語学」に収録さ…

日本学術会議公開シンポジウム「学士課程教育における言語・文学分野の参照基準」雑感

日本学術会議の公開シンポジウム「学士課程教育における言語・文学分野の参照基準」というものに参加してきました。以下がシンポジウムの案内です。 学士課程教育における言語・文学分野の参照基準(pdf注意) 参照基準の中身の参考になると思うので、上の資…

日本語学会2012年度春期大会シンポジウム「グローバル市民社会の日本語学」雑感

もう一ヶ月どころか二ヶ月経ってしまいそうなところなのだけれど、やはり重要だと思うので書いておく。言語研究者として専門家と非専門家のコミュニケーションを考える上で、刺激や示唆をもらえるところが多かった。 http://www.jpling.gr.jp/taikai/2012a.h…

「専門家は〜してない(からイカン)」的な何かと想像力の話(あと言語学はなめられているか)

話の背景というか発端についてはばらこさんの以下のエントリをお読みください。 物理学者は摩擦をスルーすることが文脈か? - ばらこの日記 あとそれに続くエントリもおすすめ。 素人は黙るな。あるいは信頼できる論者について、お前がいうな、的な。 - ばら…