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歯切れが悪いのは仕様です。

日本語の二重補充に関する共著論文が出ました(WAFL 14のproceedings)

大関洋平さんとの共同研究でやっていた日本語の二重補充 (dual suppletion)に関するWAFL 14の発表のproceedingsがMIT Working Papers in Linguistics のシリーズから公刊されました。タイトルは発表と一緒で "Dual Suppletion in Japanese" です。

mitwpl.mit.edu

日本語の動詞「する」が可能の時に「できる」,尊敬の場合に「なさる」という形になるのを補充現象と見て,最近の分散形態論 (Distributed Morphology)の枠組みを使って分析しています。

理論的には局所性 (locality)と異形態 (allomorphy)に関する仮説の検証という点が重要ですが,可能と尊敬の2つの補充形が生起しうる環境でどちらが優先されるのか,迂言的なパターンとの関係,いわゆる尊敬と謙譲の非対称性等,記述面でもいろいろ面白い整理ができていると思います。

可能の補充についてはもともと研究していたのですが,二重補充や尊敬と謙譲の非対称性への着目,理論的な分析等さまざまな点で筆頭著者の大関さんのアイディアが大きい研究です。

日本語の補充については他にもいくつか考えていて,存在動詞の補充に関する単著論文が論文集に出る予定があります。こちらも詳細が決まったらまた報告します。