履歴書のことではなくて。
を読んで何を書こうと思ったかというとそんな大層なことではなくて、母音を間に挟まない子音だけの連鎖というのが発音可能だ、というのを実感するのは意外に大変かもしれない、ということだった。
個人的体験によるところも大きいと思うのだが、僕はそれを知識として知ったのが先で、そのことを実感しそれを意識した発音を心がけるようになったのは少し後のことだった。僕にとっては"strong"で一つの音節(syllable)だってのは結構衝撃的な事実だったのだけれど、そう感じる人はどれぐらいいるんだろうか。
ちなみに「現代英語で一番多くの要素から形成されている一つの音節から成る単語は?」という問いがあったら"strong"から派生させた"strengthens"(CCCVCCCCC、動詞化三人称単数現在形)と答えれば大体の場合正解にしてもらえると思う。UMassの学部の授業でそう答えたらnativeの英語の先生(音韻論専門ではない)に「"then"のところにschwaがあるのではないか」と聞かれたが、辞書では一応無いことになっている(まだ複数の辞書では確認していないが)。
※追記(2009/03/10)
ブコメでご指摘いただいたように、"strengthens"だと二音節になってしまうようです。誤情報を垂れ流して申し訳ありませんでした。
外来語を取り込む際にその言語に即した形態/音韻構造に変えることはどの言語でもやられることであり、系統や性質が近い言語間でも一般的に起こることであるが、英語と日本語のように音韻特徴がかなり異なる言語間になるとその差がはっきりわかるようになるので目立つのだろう。
例えば、日本語は語彙的にいわゆる平板アクセント(unaccented)である単語を多く持つが*1英語母語話者などには一般的にそのようなフラットな発音は簡単にはできない。必ずどこかの音節にアクセントを置いて読んでしまうし、さらに日本語:高低アクセント、英語:強弱アクセントという差も手伝って、こなれていない英語母語話者の日本語の単語の発音は、日本語母語話者にとっては多くの場合抑揚過多に聞こえたりする。僕らからすると何でそんなに強く発音するんだ、と不思議に思ってしまうところだが、それが彼らのシステムなのである(我々が英語の単語に勝手に母音を補充してしまうように)。
これも文節音/単語アクセントという領域の違いはあるが、よその言語の単語を取り込む際に自分の言語の枠にはめ込む、という点においてはid:Brittyさんが論じている日本語の外来語の話と同じであろう。
*1:東京方言、共通語などにおける単語頭のピッチの上昇は単語アクセントとは別のものであると考えられている。ピッチが落ちる(fall)場合のみが単語アクセントである。