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歯切れが悪いのは仕様です。

酒の飲み方

コロナ禍が本格的になって以降,ほとんどまともに酒を飲んでいない気がする。

元々晩酌などする習慣はなく,誰かと飲むのもあまり頻度が高くなかったのでよく考えれば大きく生活が変化したとは言えないのだが,あの,親しい人と飲む時の酒の味がやけになつかしく感じられる。

オンライン飲み(会)の機会はときどきあるし,家庭の食卓で酒類をあける時もある。それでも少しさみしい気持ちはあり,やはりなかなか実現できない分美化されてしまうのだろうか。

酒の飲み方について,今でも忘れられない光景がある。

つくばで大学院生をしていた頃で正確な日時は思い出せないけれどももう10年くらい前のこと。場所は小さな居酒屋で学生はあまり見かけないような店。何回か行ったが,いつも勤め人でびっしりであった。名前は出さないが,どこにあった店かは今でも覚えている。

仕事帰りの勤め人である程度店が埋まってきた7時くらいのことだったと思う。畳間の小さな卓を挟んで座った見た目30, 40代くらいの男性2人連れが1時間から1時間半くらい,ひたすら日本酒を黙々と飲み続けて帰って行った。

会話はまったくなかった。食事もちょっとしたつまみくらいだったのではないかと思う。2人ともただひたすら一定のペースで酒を飲み続けていた。急ぐという風でもなかったけれどもとにかく酒を飲むことしかしていなかったのであれはかなりのハイペースだったのではないか。今書いていても本当に2人連れだったのか自信がなくなってくるほどである。しかし2人一緒にさっと帰ったのもやはり印象的だった。

かっこいいなと思ったのもよく覚えている。ただ試そうとしたことはない。

印象が強すぎてずっと覚えているのだけれども,さいきんのコロナ禍下で推奨される酒の飲み方の話が目に入るにつれ,あの2人ならできていたなと思い返す機会が増えてきた。ただ,少なくとも私はあの2人以外にあそこまで「ただ酒を飲む」ことを実現できている人は見たことがない(1人ならほかにもたくさん見た)。

さいきんはどうも酒を飲むこと自体が止められそうな話が出てきているが,仮に酒を飲むことでなく音声会話が禁止されたとして,どれだけの人が体内に入ってくるアルコールともうまくやりつつそれを達成できるのだろうか。できる人ももちろんいるだろうけれども,これまで飲みの場で目にしたさまざまな出来事を思い出すに店は相当大変だろうなという思いが先に立つ。