誰がログ

歯切れが悪いのは仕様です。

自転車で転倒した

自転車の運転中に転んでしまいました。

幸いなことにというか,完全な自爆でほかの車両や人にはまったく影響がありませんでした(自分の自転車も無事)。ただ車道走行中で車両が走行する側に倒れてしまったので,車が来ていたらと思うとぞっとしますね。

問題があるのは私の身体で,転倒した際に右手(利き手)だけに全体重をかけてしまったので,手首と肘がひどいことになっています。しかし今思い返しても,なぜあそこで少しでも足を出すことができなかったのか。さいきん生活のさまざまな場面でおじさんになったことを痛感します。まあ40歳ですからね。

さすがにまずいと感じた痛みだったので病院に行ったのですが,手首も肘もレントゲン等で見た限りでは骨折までは行っていないということです。不幸中の幸いだったのでしょうか。

とは言え,肘から先の部分の可動域が狭くなってしまっているのと,握力をはじめ力を入れる系全般が難しくなってしまっている(ペットボトルのふたを開けるのに一苦労)ので,日常生活にいろいろ支障が出てなかなか困りものです。我が家の4歳児はどれくらいの期間この状態に耐えてくれるのか…というか一緒に寝てるのでぜったい蹴られると思うんですが。

痛みの強さからある程度覚悟はしていたのですが,意外だったのが,肘から先を深く折りたたむ動作って普段こんなにたくさんやっているんだなってことですね。特にお箸(とかスプーンとか)を顔に近付けるのが不可能ではないんですがかなり痛いというのがつらいです。

字を書いたりとかコンピューターの操作にはほとんど影響がないのが良かったのか悪かったのか。しかしあの転び方で腰に影響なかったのも良かったです。腰がダメになるとほぼすべてのことがダメになりますからね。

さいきん新型コロナウイルスのことがあって毎日どきどきしながら体温はかって生活してましたが,こういうちょっとしたことでも簡単に日常生活って崩れるんですよね。ここさいきんの状況と季節(まだまだ暖かくはない+花粉症)等いろいろあって精神的にも身体的にもつかれている人が多いのではないかと思いますが,つらい状況の時にこういう追い打ちのようなダメージを受けるとさらに大変ですので,みなさまもどうかできる範囲でお気を付けて。

「やさしい日本語」の例(新型コロナウイルス関連)

下記のツイートで知ったのですが,厚労省のサイトに掲載されている情報が「やさしい日本語」に対応しているようですので紹介します。

庵功雄氏は,以前このブログで「やさしい日本語」を紹介したときに推薦した下記の本の著者です。

dlit.hatenadiary.com

以前の記事で取り上げた時はすべて平仮名で表記されているニュースが話題になっていましたが,上記ツイートで紹介されている厚労省のサイトを見ると,今回は漢字+ルビの表記が用いられていることが分かります。また,そのさらに下に英語版も掲載されていますね。

www.mhlw.go.jp

日本語が第1言語の方が読むと,文法も「やさしく」なっていることが分かる(なのでこういうニュースの文体としてはかえって違和感がある人もいる)かもしれませんね。せっかくなので一部抜粋してみます。

【元の文】
新型コロナウイルスにより会社の経営が悪くなっているときでも,外国人であることを理由として,外国人の労働者を,日本人より不利に扱うことは許されません。

文の数や接続形式等に注目してみてください。

【やさしい日本語版(漢字の箇所はすべてルビ付き)】
新型コロナウイルスのために,あなたが働いている会社の経営が悪くなっているかもしれません。しかし,あなたの会社は,あなたが外国人だから,あなたを日本人よりも悪く扱ってはいけません。

加計学園の入試問題と日本語学習者の会話能力(「差別」について追記あり)

事実がどうだったかについてはきちんと調査して公開してもらうしかないと思いますが,この問題に対する反応で気になるものがありましたので少し書いておきます。もっと情報が出たら,日本語教育や第2言語習得の専門家の方が解説してくれると良いのですが。

よく知らないという方は下記の記事で概略がつかめるでしょう。

www.asahi.com

この記事に「過去2回の試験で合格した韓国人の学生が入学後に日本語の会話に難があり、学生生活で苦労したため、昨秋の試験で初めて面接を導入したところ、7人全員の会話能力に問題があり、面接を0点とし、不合格になったと大学側は説明。」という記述があります。この受験生の中には筆記試験でかなり良い点を取った人もいたようです。

筆記と会話の違い

この問題・報道への反応として,「語学では筆記試験がよくできても会話はできないことはある」というものを複数見かけました。

これは確かに一般的には珍しいことではなく,たとえば日本語能力検定試験でN1に合格している人でも,会話してみると聞く・話す能力にかなりばらつきがあるなと感じることはあります。ただ,日本語能力検定試験や英語だとTOEFLのような言語能力をはかる試験と,今回のように第2言語(学習のターゲットになる言語)で書かれた他教科の試験は区別した方が良いと思います。人によるということもあるかもしれませんが,第2言語で書かれた他教科の問題を読解し回答する方が難しいことが多く,実際の入試問題も見てみたのですが,これでそれなりの点数を獲得できる人が「0点」を付ける根拠になるほど会話に関する能力に問題があるというのはかなりレアケースではないかというのが私の感覚です。

評価側の問題

ただ,私の体験に限っても,言語研究(特に言語習得や言語教育)になじみがなかったり,自身が日本語の第2言語(非母語)話者とある程度関わった経験(たとえばゼミに日本語が第1言語(母語)でない留学生がいる等)がない人が第2言語話者の会話能力をかなり低く評価するというのは残念ながら珍しくないと思います。ゼミに留学生がいても,その留学生が抱えている言語能力上の困難について教員が把握できていないようなケースもあるようですね。

これにはおそらくいくつか要因があって,基準が不当に高い(第1言語話者並みの能力(特に流暢さやレスポンスの早さ)を最低基準としてしまう)とか,第2言語話者であるという情報を事前に知ってしまうとより厳しく評価してしまうといったものが考えられます。どういうことかというと,第1言語話者だっていつもそんなにきちんとした言語パフォーマンスができるわけではないのですが,第2言語話者が同じような「ミス」をすると言語能力全体が低いからだと評価されてしまうことがあります。これは入試や就活の面接といったところだけでなく,コンビニ店員との会話とかいろいろな場面で起きているようです。

あと,私は第2言語話者に対しては今回のような学部の推薦入試であっても面接する側は(プロの日本語教師のレベルで語彙や文法をコントロールできなくても)ある程度のティーチャートークを使う方が良いと思いますが,これも知識や経験がないとなかなか難しいようです。

他の要因からも「差別」であるかどうかという議論や判断はできるかもしれませんが,今回明らかにされた点数の付け方と,大学側の「会話能力に問題があった」という情報からは,少なくとも評価方法にかなりの問題があったのではないかというのが私の推測です。今回はかなり極端なケースですが,第2言語話者が面接等で不当な評価を受けるというのは面接を行う評価法一般に起き得る問題だと思うので,できればきちんと調査して公開してほしいと考えています。

「差別」について追記(2020/03/13)

書き方が難しかったので当初は意図的に焦点を当てていなかったのですがちょっと心配になったのでやっぱり書いておくと,私はこの受験生への扱いは「差別」である可能性が高いのではないかと考えています

私が上で述べたこと(と似たような議論)を使って「面接を担当した者に差別する意図はなかった」とか「単に評価者の能力が低かっただけ」という主張を行う人もいるかもしれませんが,少なくともそれらは「(国籍や日本語が第1言語でないといったことが要因で不当な扱いを受けたことが)差別ではない」ことを正当化できないでしょう。

ではなぜこのような記事の構成にしたかというと,今回のケースではおそらく当事者が加計学園であることや「0点」といったいくつかのインパクトがあって一般的にも話題になっていますが,面接のような場面での「非母語話者」に対する不当な取り扱いはいつでも起き得るもので,大学教員をはじめそういう場面に臨む人は日本語教育や言語学に詳しいかどうかに関わらず広く気をつけてほしいと思ったからです。

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