前から書きたいなーと思ってた記事です。
論文をそこそこの数探したり読んだりしたことがある人は思い当たることがあると思いますが、時々洒落をきかせた、というかウィットに富んだ、というかなんかカッコイイタイトルの論文に出会うことがあります。
ここでは言語学関係の論文でそういうものを紹介して見ようと思います。いつかはこういうの自分でも書いて見たいんですけど…アイディアも実はちょっとあったりしますが…ただ、ちょっと勇気いるよな〜
とりあえず暫定ルール↓
- ネタを見つけ(思いつき)次第追加。
- 有名なものはあまり取り上げません(三上章『象は鼻が長い』とか)。誰かが書いてると思いますので…とりあえずかなりマイナーなものについて書きます。
- ネタばらしは興ざめって人もいるかもしれないので、表の一覧にはタイトルだけ載せておきます。解説は”続きを読む”以下で。まあこちらもあまり詳しく述べてしまうのはアレなので、ヒントぐらいにしておきます。
- どれだけ拡大するのかは未定…「こんなんもあるよ〜」と教えてもらえるのは嬉しいですが、僕の力量では紹介できないかもしれません。
- カッコイイかどうかはあくまで主観です(笑)
◆タイトル一覧(更新順)
- Kuroda, S.-Y. (1988) "Whether we agree or not: A comparative syntax of English and Japanese" in Papers form the Second International Workshop on Japanese Syntax.
- Harley, Heidi (1996) "If you have, you can give" the proceedings of WCCFL 15.
- Marantz, Alec (1997) "No escape from syntax: don't try a morphological analysis in the privacy of your own lexicon" UPenn Working paper in Linguistics. 4:2.
- Fillmore, Charles (1968) "The case for case" in Universals in linguistic theory.
- Marantz, Alec (1994) "A late note on late insertion" in Explorations in generative grammar.
- Kitagawa, Yoshihisa (1994) "Shells, Yolks, and Scrambled Egs" the proceedings of NELS 24.
◆解説…というかなんでおもろいのか、のヒント↓
1. S.-Y. Kuroda "Whether we agree or not"
黒田先生の有名な論文の一つ。この論文の大きな主張の一つに、日英語なんかの差を一致操作(agree)の有無に求めようというものがあります。というわけでこのタイトル。なんかメタ的なところで「この論文の主張に同意できる?」と聞かれているような気がするのは読み込みすぎかな?
2.Heidi Harley "If you have, you can give"
HarlyのLexical Decompositionをsyntaxでやろう、っていう一連の研究の端緒と言えるようなもの。Harleyの主張は所有関係は抽象的な"HAVE"の前置詞によって捉えられる、そしてP(HAVE)+CAUSE head=giveなんだ、というもの。それでこのタイトル。文意自体は当たり前のことを言っているようで、問題の所在を端的に言い表している。
3.Alec Marantz "No escape from syntax: don't try a morphological analysis in the privacy of your own lexicon"
これが今のところ一番好きなタイトルかもしれない。なんという攻撃的なタイトル(笑)コロン以下はまあAnti-lexicalismの明確な宣言、というか皮肉なんですけど、コロンの前はAnti-lexicalistでなくともsyntaxやってる人なら結構うなずいてしまう人もいるんじゃないでしょうか。内容的にはChomsky (1970) "Remarks on nominalization"の再検討とかをやってて、DMの流れの中でも結構重要な論文の一つ。
4.Charles Fillmore "The case for case"
これは確か何かの教科書に囲みコラムがあったような気が…言わずと知れた?Θ-role, 意味役割の元祖であるcase theoryの生みの親、Fillmoreのそのcaseについての論文。最初のcaseは一般名詞で二つ目のが専門用語の方のcase。その紹介記事では一般名詞の方の訳として「裁判の訴訟」と説明していた。"case"という概念の是非を問う、みたいな感じかな。
5.Alec Marantz "A late note on late insertion"
Marantzを挙げるなら3より先にこっちを思いつくべきだったか…上のFillmoreのと同じ感じの引っ掛け方ですよね。"late insertion"はDistributed Morphologyの軸となる仮説(操作?)の一つで、「後期挿入」とか訳されます。最初の"late"は「最近の」の方かな。
6.Yoshihisa Kitagawa "Shells, Yolks, and Scrambled Egs" (from JEDI)
これは凝ったタイトルだよなあ…"Shells"はVP Shell"、Scrambledは"Scrambling"のことだというのはすぐわかったんだけど、残りは…?調査中です(笑)