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歯切れが悪いのは仕様です。

紙の資料(レジュメなど)で発表する時にちょっと気をつけ(てい)ること

はじめに

 私の専門の分野(言語学・日本語学)でもだいぶスライドを使った(研究)発表が増えたなという印象があるのですが、まだ紙の資料(ハンドアウト・レジュメ)を使った発表がメインという分野もけっこうあるのではないでしょうか。
 以下は文章表現や演習の授業でおまけ的に話している内容なのですが、私が紙の資料を使った発表で個人的に気をつけていることについて少しまとめておきたいと思います(ほぼ私の経験に基づいたもので、特に根拠等はありません)。
 なお、内容についても気をつけていることはあるのですが、かなり形式的な面に絞って書いておきます。
 また、私の専門分野に限ってでさえ、研究分野や学会間で流儀の違いを感じることはあります。発表の内容やテーマによって適している発表スタイルが異なることもあるでしょう。発表の目的によっても違うかもしれません。ちなみに、私は基本的に「できるだけ多くの人から、たくさんの質問やコメントをもらう」「自分がやっていることを面白がってもらう」ことを目的として設定しています。
 あくまで参考として考えて下さい。

紙の資料とスライドの違い

 紙の資料とスライドでは、単に見るものが違うというだけでなく、下記のような違いが出ることが多いようです(会場等の環境にもよります)。

ハンドアウト・レジュメ スライド
会場が明るい 会場が暗くなりがち(発表者の顔が見えない・眠気を誘う)
聴衆が下を向きがち 顔を上げてもらいやすい (対話っぽくしやすい)
聴衆が自由に内容を先取り・戻って確認できる(迷子になりやすい) 写されているスライドに集中できる(前後の確認がしづらい)

表1 ハンドアウト・レジュメとスライドの違い
以下、主に「迷子になる(発表者が発表しているところとは別のところに気を向けている)」という点についてポイントを書いていきます。
 なお、「迷子にな(れ)る」ことは紙の資料を使った発表の利点の一つなので、「絶対に迷子を出さない」のではなく、「迷子になりたくない人は迷子にしない」「迷子になった人でもすぐに合流できるようにする」ことを心がけています。

ハンドアウト・レジュメで発表する際の注意点

 私がふだんの発表で気をつけていることとして、

  • (意図せず)迷子になってしまうことの少ない資料作成を心がける

というものがあります。具体的には、

  • 資料を見る人の視線の移動をなるべく少なくする

という点に気をつけています。視線の移動が不必要に多いと、発表に取り残される可能性が増えると考えています。チェックポイントとしては下記のようなものがあります。

1) スペース(白紙の部分)を作って面積当りの情報量を多くし過ぎない

 ただし、学会の予稿集などだとページ数の制限があったりするので難しい面もあります。

2) 文や情報がページをまたがないようにする

 ひとかたまりの情報を追う際に視線を大きく移動させる作業が入り込むと、内容が追いづらくなるような気がします。一文がページをまたがないというのは当然として、表現としては切れていても、たとえば「データとその解説」のようなペアもできるだけ同じページに入れるようにします。

3) ページを戻る、ある部分を飛ばすということができるだけないようにする

 言語研究だと、たとえば同じ例文でもできるだけ再掲する、といった方が迷子が出にくい気がします。同様に、たとえばメインの資料と別紙の資料を行き来するようなこともできるだけ少なくします。

4) 節タイトル、図表などのキャプションをこまめに付ける

 後ほど述べますが、迷子になった際に戻ってくるきっかけにしやすいです。

5) ページ数を入れるのを忘れない

 4)に同じで、手がかりになります。

迷子になりにくい発表の工夫

 しかし、どうしても紙の資料を見ながら発表を追うには、ある程度の視線移動は避けられません。そこで、

  • 視線が移動するポイントでは少し間を空ける

ことにしています。たとえば

  1. 前ページの下から次ページの上へ移るとき
  2. ページをめくるとき

などがあります。資料が両面印刷の場合は、特に次のページを探す(次のページが裏面のどの箇所から始まるか探す)時間も必要だと考えて、やや長めに間を取ってもよいと思います。

迷子になった聴衆への案内を定期的に入れる

 それでも、迷子は絶対に出ます。というか、上に書いたように迷子になること自体は必ずしも悪いことではないので、発表の中で、定期的に復帰ポイントを作ります。たとえば以下のようなことを丁寧に言うだけでもよい道しるべになります。

  1. 「nページに行きます/移ります」
  2. 「n節に入ります」
  3. 「図/表nをご覧下さい」

 これは実は、発表者自身にとっても間を取るよいきっかけになります。発表中に沈黙によって間を取るというのは意外と慣れないと難しいと思いますが、こういう定型表現だともうちょっと楽にできます。早口の人、一本調子の話し方になりやすい人は特に使ってみて下さい。

その他、発表そのもののポイント

スライドを使用する場合でも紙の資料を配布すると助けになる場合がある。

 これは分野や発表の内容・テーマにもよると思いますが、一部の資料やデータだけでも配るとよいかもしれません。ただし、学会などだと追加の配布物は禁止されていたりすることもあります。

読み原稿は作るか?

 これは分野や学会にもよりますので一概にどの方法がよいのかというのは簡単には言えません。
 私は読み原稿は作らない派ですが、その人の性質にもよると考えています。たとえば、極度のあがり症というような人は読み原稿を作ってもよいのではないでしょうか。読み原稿を使うと一本調子の話し方になってしまうことはありますが、反面時間の調整はしやすかったりします。読み原稿を作る場合は間を空ける場所や発表内容以外の発言(自己紹介や「次のページに行きます」)なども原稿に入れておくとよいみたいです。

連絡先を書いておく

 発表の際の質疑応答、あるいはその後のおしゃべりでも話す機会がなかった人からも質問・コメントをもらえる可能性があります。

発表時間を守る

 私もちょこちょこ超過することがあるのであまり偉そうなことは言えないのですが…質疑応答・ディスカッションの時間を確保するという点でも大変重要です。

(ハンドアウト・レジュメを使用する場合でも)聴衆の様子を見ながら発表できるようになるのを目指す

 個人的に間を取る方法のおすすめの一つとして、「顔を上げて聴衆の様子を見る」というものがあります
 これをやると強制的に間が入ることになりますし、資料を見ている聴衆の何人かは顔を上げて発表者を見ていたりするので、けっこう面白いですよ。
 ちなみに私は顔を上げることができるかによって発表の調子をはかっています。緊張していたり焦っていたりすると意外とできないんですよね。「どこかで顔を上げる」と意識しておくことで、そういう自分の状態をモニターするきっかけにすることもできます(緊張の緩和につながります)。

おわりに

 形式的なところばかり気にしても、というのはその通りなのですが、意外とばかにならないと思います。
 スライドを使った発表のノウハウや、実際の動画は検索すればたくさん見つかるのですが、紙の資料を使った発表については少ないなという印象があったので書いてみました。
 私の発表を知っている方、「これだけ気をつけててあの発表かよ」とは思っても言わないようにお願いします。