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歯切れが悪いのは仕様です。

(大学)教員の「冗談」とハラスメントについてちょっとだけ

概要

 大学教員が教員自身の結婚相手探しを指導学生に卒業論文指導の条件として課し,停職処分を経て依願退職したという記事が話題になっているのを見た。

 「結婚相手」がクローズアップされている上記の記事にはてブが集中していて,「ジョークでは」というようなはてブコメントがそこそこ付いているが,ブコメでも指摘されている別の記事を見てみると,だいぶ印象が変わるのではないか。

担当のゼミを受講していた4年生の男女8人に、卒論指導の条件を列挙した文書を配布。その中に教員の「課題解決」と記し、普段から学生に話していた「結婚相手の紹介」と分かる項目が含まれていた。
 他に「卒論提出までアルバイトを辞める」「ゼミ合宿中は夜間の睡眠を認めない」などの条件もあった。
 直後に8人全員が「ゼミを替わりたい」と大学に訴えて発覚し、大学側は教員を指導から外した。特定の女子学生と頻繁に食事に行ったり、自宅に呼んで指導したりもしていたという。
結婚相手探しを指導条件に 弘前大教員、学生へ文書 :日本経済新聞

 下記は,タイトルも「弘前大、アカハラで教員処分=卒論指導に「条件」」となっており,「結婚相手」が強調されていない記事である。

ゼミの4年生8人に対し、卒論指導を受ける条件を記した文書を配布。アルバイトの契約解除▽ゼミ合宿では徹夜で懇親▽OB会に全員参加▽教員の結婚相手を探す―との内容を完全に受け入れることを求めた。また以前から、ゼミの女子学生を自宅に呼んで指導したり、頻繁に食事に誘ったりしていた。
 教員は文書を配布する際、「9月の合宿で(学生が)かまってくれず、楽しくなかった。惨めな思いをしたから、お前たちにも惨めな思いをさせるため文書を作った」と学生に話したという。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20171225-00000057-jij-soci

記事からは大学からの発表であることがうかがえるので,詳細な事実についての判断は慎重になった方が良いだろうが,総合的に見てパワハラ,セクハラとしか言いようがないように思う。

教員の「冗談」と権力

 ブコメでも指摘されているように,もしかしたら「結婚相手を探して」というのが「持ちネタ」のようなものであり,ふだんから「冗談」として言っていることで,授業やゼミ等では笑いが起きていたのかもしれない。
 それでも,「教員(というこの場の権力者)が言ったことだから笑っている/文句を言わないでいる」という可能性は十分ある。私自身は,これは教員としては忘れてはいけないことだと思う。授業やゼミであれば,「他の人は笑っているから…」といったようなこともあるだろう。
 「これぐらいのこと,冗談なんじゃないの」ってコメント,他のセクハラ,パワハラの話題でも見たことがないでしょうか。
 自身がつらい状況にあっても(他の教員からパワハラを受けていたり,世間からの風当たりが強かったり,学生による授業運営への妨害があったり),こと学生との関係という点においては,教員の方が権力者であるということは,この職業において重要なポイントだと思う。これは「聖職者」云々ではなく,職業倫理の話だと考えている。

 自身が教員として働き出してからまだ10年にもならないが,教員って権力者だなと感じる場面は,日常にたくさんある。たぶん,気付いていないこともまだまだたくさんあるのだろう。

おわりに

 しかしこうやって文章にするとなんだか当たり前のこと過ぎてなんでわざわざ書いたんだろうという気になってきた。
 こういう話になると,「むかしはもっとおおらかで良かった」「今は世知辛い」というようなことを言う人がいる。そういう感覚があること自体は分かるし,事例によっては上記のように単純には片付けられないこともあるのかもしれないが,私がそれを聞いて思うのは,「昔の学生は我慢していた(せざるを得なかった)んだろうなあ」ということである。