はじめに
COVID-19への対応として全国の大学で授業等の「オンライン化」が進んでおり,実際に授業が始まったところもあります。良かったという声もなくはないですが,おそらく準備に時間が取れなかったというようなことが大きく,やはりどこも大変そうです。筑波大学も4/27日に授業が始まりますが,今後さらにいろいろな大学で授業が始まると様々なトラブルや問題が出てくると思います。
さいきん学生が学費の免除や返還を希望しているという話を見かけることが多くなりました(大学教員でも似た意見を持っている人はいると思います)。下記の記事もその1つですが,この記事では学費の返還についてはそれほど踏み込んでおらず,むしろ現状の問題や検討されている支援について具体的に触れていますね。
下記の記事では学生の経済状況の悪化について報じています。今は遊ぶためとかではなく生活費や学費のためにバイトしている学生も多いと言われます。また,仕送りで学生生活を送っている学生も,今後COVID-19の影響によって親の経済状況が悪化しうまくやっていけなくなるなんてことも予想されます(すでに起こっているかも)。
学費の話
実際に学費の免除や返還を求める理由にはいろいろあるのではないかと思いますが,今回は授業の「オンライン化」が特にインパクトが大きいせいか(急ごしらえの)オンライン化による授業の質の低下と結びつけて語られることもあるようです。
上の朝日の記事でも触れられていますが,オンライン化と学費の免除や返還は結び付き得ます。ようやく大学側による学生の通信環境の把握などが進み,また大学がWiFiルーターのレンタルなど通信機器・環境をサポートするという話も進んできましたが,大学が当初オンライン化の方針を打ち出したぐらいの段階では学生に「オンラインで授業を受ける環境を整えておくこと(が望ましい)」のような通知を出していたので,早めに対応して予定になかった機器を購入したり通信サービスを契約したなんて学生もいそうです。そういう事態に対してサポートを求める声が出るのは当然かと思います。
大学入学後も教科書の購入等出費はいろいろあるのですが,今回の「オンライン化」によるものは入試を受ける時点や入学手続きをする時点では予測できなかったでしょうから,学生にとっては予想外過ぎるでしょう。
授業の形態が急に変わり大学や教員がそれに十分対応できないというところももちろん問題なのですが,私は図書館等の大学にある施設や設備が使えない(これは地域によって違うでしょうが)のにフルで学費を要求して良いのかというところが気になってしまいます。人文系にとってはやはり図書館の問題が深刻だと思うのですが,その大学や研究室にある設備でしか実験できない分野とかかなり厳しいのではないでしょうか。これは大学や,学部や,学年によっても違うと思いますが,授業よりも深刻な学生はいると思います。
ただ,大学はもうこれでもかというぐらいお金も人も減らされてきました(今も減らされ続けている)ので,実際に学費を返還するというのは相当厳しそうです。あしなが育英会から支援の話が出ていますが,国からも具体的なサポートが必要な状況だと思います。
大学がLMSや関連するサービスを整備しておくベきだったとか,資料をもっとデジタル化しておくべきだったとか色々問題はあり,今後これをきっかけに整備が進むと良いなと思うのですが,それは大学や研究者に責任があるはずです。また,今回問題が指摘されている大学以外の環境(たとえば色んな書類に押印が必要とか)についても,それを作り上げてきたのは基本的に学生より上の世代の「大人」たちで,学生に責任のようなものはないか0ではないにしてもずっと小さいのではないでしょうか。
学生の行動
私は,このような状況で学生が署名を集めたりデモを行ったりという行動をするのは好ましく思います。「さいきんの学生」について,「自主性がない」とか「自分で考える力がない」とか思っていたり言っている人は,こういう学生の行動は評価しますよね?
もちろん自主的に行動するとか自分で考えるということと,その行動の内容や方法が適切であるかどうかという話は別です。しかしその行動が適切でない場合,大学教員という立場で学生に接するのであれば理を用いて理由等を説明するべきで,(愚痴るぐらいならまだ気持ちは分かるのですが)SNSで揶揄したりするのはどうかと思います。
これは大学に限った話ではないのですが,「(実質的に)自分の許容する範囲での自主性や自由しか認めない」というのは私は好きではありません。