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歯切れが悪いのは仕様です。

Obsidianでタスクとして切り出さずにやる(かもしれない)ことと付き合う

はじめに

1年以上使ってきて、私にとってObsidianが研究、仕事、生活とうまく付き合うためのメインのツールになった理由がなんとなく整理できてきました。もちろんこのプラグインのこれが便利とか細かいところはいろいろありますが、大まかに挙げると下記の3点が大きいです。

  1. とにかくDaily Noteにいろいろ書いて、後で個別のノートに切り出す(ノート同士の関係はほぼ自動的に構築される)というやり方が私のずぼらな性格に合っている
  2. 研究や仕事で文章を書く作業の割合が大きいのでテキストを中心にしたツールが使いやすい
  3. 特に研究ではタスクをメモ・ノートなどから区別するのが難しいので分けないで付き合う方がやりやすい

このうち、1についてはいろいろな方がDaily Noteの書き方・使い方として書いたものがありますし、2は先日書いた記事にも少し書きました。

dlit.hatenadiary.com

というわけで、この記事では3について簡単に書きます。Obsidianについて書かれたものを見ていると一般的な紹介や個別のプラグインの解説などが多い印象があって、こういう一部の人にしか当てはまらないような使い方の記事もあっても良いかなと思ったという動機もあります。

タスクを中心にした管理をしない(できないものは)

先にポイントを書いておくと、これはそもそも「Obsidianでタスク管理をする」方法ではない(たぶん)のでその点ご注意ください。タスク管理だけを考えるなら、やはり個別のツールが機能も充実していて使いやすいと思います。

また、ここには考え方だけを書いているので、実際にどう使っているのかだけ知りたいという方はこの節は飛ばしても大丈夫です。

これまで、タスク管理ツールはTodoistやOmniFocusなどいくつか試してみました。でも特に研究についてはあまりうまくいっていないなという感触がずっと前からあったのです。それがObsidianを使うようになってどういうことなのかはっきりしてきました。つまるところ、研究というのはアイディアや情報、メモ・ノートの集積が果たす役割が大きくて、そこからタスクだけ集めて管理すること自体が難しいんですよね。

もちろん、実際の研究のプロセスにも無数のタスクが発生します。でもそれだけをタスクとしてツールで管理するのが難しいというか。そうしちゃうとかえってやることのつながりが悪くなるというか。

たとえばある問題についての分析を考えていた時に「あ、あの文献に関連する情報があるかも」と思いついたとします。タスク管理ツールを使うとまず思いつくのは「〜という文献を調べる」というタスクを設定することでしょうか。こういう個別のタスクを考えて登録すること自体は難しいことではありません。

でも、こういう研究上のタスクって「なぜその文献を調べる必要があるのか」といった前提・背景情報や、調べた結果どういう情報が得られたか、その情報が得られたことで考えたことや新しく発生した「やる(かもしれない)こと」は何か、というそのほかのアイディアや情報とのつながりが重要なんですよね(このつながりを作るのもObsidianは得意なんですがそれもまた別の機会に)。これらの中からまたタスクを切り出してその実行をツールで管理することはできるんですけど、なんか重要なつながり切れてしまうような感じで。

もちろん、タスク管理ツールにはメモ機能や添付ファイル・ドキュメントとの連携を備えているものもあります。特にOmniFocusなんかはアウトライナーのような性格もあるのでタスク以外のアイディアの集積場としても使えるかもしれません。でもやっぱりタスク管理ツールにとってメモ機能などはメインではないので機能的にはMarkdownで書けたりしてもそこまで使いやすくないんですよね。

というわけで、研究についてはメモ・ノートを中心にして、その中に「やる(かもしれない)こと」が入っているという形に落ち着きました。結局「研究ノートを書く」という当たり前のところに戻ってきてしまった感じもありますが、Obsidianを使うことで研究ノートの中に含まれている「やる(かもしれない)こと」を曖昧な位置付けのまま、そして多数のノート・テキストに埋もれさせずに付き合うことがうまくできるようになってきました。ただほかのツールをいろいろ試したわけではないので、Obisidianでしかできないかどうかはちょっと分かりません。

「やる(かもしれない)こと」を忘れない方法

Dataviewプラグインを使う

プラグインを使う前提として、まず研究に関するノートにはアイディアや考えたこと、集めた情報はとりあえずぜんぶ書いてしまうことをおすすめします。その中で、どうもこれはやることかもしれないな、と思ったらそのアイディア・情報にチェックボックスを付けます。チェックボックスが付いた「やる(かもしれない)こと」リストは自分でまとめるのではなくDataviewというプラグインで自動的に作成します。

Dataviewプラグインを使うと条件を指定して複数のノートから自動的に情報を収集、まとめることができるので便利です。Obsidianでのタスク管理にもよく使われていて、どう使うかについては次の記事などが分かりやすいでしょうか。

wineroses.hatenablog.com

私は「やる(かもしれない)こと」すべてのリストと、研究に限った「やる(かもしれない)こと」のリストをそれぞれ別のノートとして作っています。

「やる(かもしれない)こと」すべてのリストのDataviewの書き方は下記のようにしています。1行目が「指定したタグのチェックボックス付きの行を拾う」2行目が「未完了のもの」3行目が「ノートごとにまとめて表示」の指定になっています。

TASK from #ToDo
WHERE !completed
GROUP by file.link

研究に限ったリストは、タグの指定を「#ToDo/Research」のようにします。Obsidianではタグがネストできるのがこういう時に使いやすいです(タグ名は好きなものが使えます。一度使えば次からはインクリメンタルサーチしてくれるので長いものでも面倒ではありません。タグの話はできればまた改めて)。

挙動としては、「#ToDo/Research」で指定した場合はこのタグが付いたノートからのみ情報を引っ張ってくるのに対して、「#ToDo」とだけ指定した場合は「#ToDo/Research」のようにネストされたタグだけが付いているノートもカバーします。

「やる(かもしれない)こと」は定期的に見返して、やったことにはチェックを付けます。そして「これは別にやることではなかったな」と思ったら、チェックボックスだけを消します。作業自体はすごく単純ですけど、これでアイディア・情報としてはノートにそのまま残りますのでほかのアイディアや情報との関係も崩れません。

なお「やる(かもしれない)こと」すべてのリストにもタグによる指定を付けているのは、私の使い方だとチェックボックスが付いているけど「やる(かもしれない)こと」リストには載せなくて良いものもあるからです。たとえば学位論文の副査になっている場合、公開発表などの時に事前に質問・コメントを複数考えてチェックボックス付きのリストにしておきます。その場の議論の流れや残り時間の関係で言えなかったことが残ることも多いので、言ったことをチェックしておくとその後の面談や指導の時に参照できて便利です。似たようなことを学会で司会をする場合などにもやっています。こういうリストはいつ使うかがはっきりしていてその時に確実に見るので定期的にチェックする必要がほとんどありません。

「やる(かもしれない)こと」リストの見返し方もまた人それぞれで自分に合った方法を選ぶのが良いでしょう。私はDaily Noteから確認できるようにリンクをテンプレートで指定しています。

こういう形で「やる(かもしれない)こと」を作った方がいいことというのは研究以外にもありそうです。私は研究以外の業務で参加した会議のメモを取っている時も「あーこれ後でやることになるかもな」と思ったらチェックボックス付きのメモにしてDataviewで拾うようにしています。

おまけ:期限設定とか

Obsidianで「やる(かもしれない)こと」を整理する場合にどうしても一手間必要なのが開始日や期限といった情報の付加ではないでしょうか。Reminderというプラグインもありますし個別にはいろいろ工夫もできるようではあります。

この記事で書いたことはそもそもはっきりとしたタスクにできなそうなものを曖昧なまま扱うやり方ですので、はっきりと締め切りが決まっているものはタスクとしてタスク管理ツールに登録してしまうのが早いかもしれません(すべてをできるだけObsidianでやりたいというような事情がなければ)。

私はそういう場合も含めて、タスク管理ツールとしてはiOS, MacOSのデフォルトアプリの「リマインダー」を使っています。カレンダー等のほかのアプリとの連携が便利ですし、全体として機能が豊富というわけではないんですけど繰り返しの設定とかはけっこう柔軟にできるんですよね。

あと、タスク管理ツールのメモ欄などに関連するノートの「Obsidian URL」をはることで直接Obsidianでそのノートを開ける(ことがある)というのも知っておくと役立つことがあるかもしれません。ほかのツールでできるかどうかは試していませんが、iOS, MacOSの「リマインダー」では「URL」欄に、Todoistでは「説明」欄にURLを入れることで可能です。

おわりに

このやり方をはじめてから、研究の内容に向き合いつつ「やる(かもしれない)こと」を流動的に、柔軟に整理できるようになりました。

結局、広い意味ではこれも「タスク管理」なのかもしれませんしDataviewで「やる(かもしれない)こと」を切り出してはいるわけですが、ポイントは「やる(かもしれない)こと」がタスクとして切り出せるかどうかを突き詰めては考えず、ほかの情報との関係を保持したまま扱うというところです。