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歯切れが悪いのは仕様です。

2020年アメリカ大統領選雑感

ほぼ選挙結果は確定したと思いますし,webの雰囲気もだいぶ落ち着いたかなと思いますので,気は重いですが簡単に振り返っておきます。各種メディアやSNSでこの話題が減った(と感じられる)要因の1つとして新型コロナの感染状況の悪化がありそうなのがまた嫌な感じではあります。

事前の予想とトランプ氏の印象

私の事前の予想は,なんかこう選挙の動向がエンタメ的に報道され,候補者の趣味や「人柄」のようなものばかりがクローズアップされ(そういうのもあったっぽいですが),ネットでは政治や選挙に真剣に向き合おう的な論調のものが出てくるというようなもので,フェイクニュースや陰謀論がこんなに前面に出てきたというのはかなり予想外でした。多少はあるだろうと思っていましたが…

私は選挙に関してはバイデン氏が勝つと良いなと考えていました。下にも少し書きますが,私にはまずトランプ氏の特に排外主義的な言動や政策が支持できません。ただ,そういう個々の具体的な考え方やポリシーよりも私が最も懸念している(アメリカ大統領であり続けてほしくない)理由は,「(言動や考え方が)信頼できない」という点です。これは人柄とかそういう話ではなく,なんと言いましょうか,「予測不可能」なところです。

自分と考えが異なる人でも,その行動指針やポリシーが一貫していれば(それが表明されているとなお良い)どういう言動を取りそうかという点についてはある意味「信頼」できるのですが,トランプ氏はそういう人とは対極にあるように見えます。日本でトランプ氏を支持する人の理由の1つとして中国に対して強く出られるということがあるみたいですが,もし仮に今そのように評価できるとして,この先もそうだという信頼がおける人物なのでしょうか。個人的な利,控えめに言っても非常にローカルな利害関係などを理由にあっさり覆しそうというか,それならまだましで理由もよく分からず「やっぱやーめた」的な言動を取りそうな危うさが印象として強いのです。

「関係ない選挙」?

開票中やその後に日本語圏で「(日本に住んでいる)自分たちと関係のない選挙(なのにそんなに熱を上げてどうするの)」的な物言いをそこそこ見かけました。今の社会において日本にアメリカの大統領選の影響がまったくないと考えている人はさすがにいないでしょうから,それは置いておきます。文脈を考慮すると「もうちょっと落ち着け」という意味合いで発されたり,デマや誤情報へのカウンター的な発言の場合もあったように思います。

日本に住んでいる人には基本的にアメリカ大統領選の選挙権がないわけですから,結局は見守るぐらいしかできないというのはそうだと思うのですね。ただ,それを「関係ない」という表現で言ってしまうのには違和感があります。突き詰めると「関係がある/ない」の定義問題になってしまうのかもしれませんが。

私がバイデン氏を応援していたのは,トランプ氏が大統領になってから(そんなにたくさんいるわけではないのですが)アメリカに住んでいる友人や知人,特に大学関係者や研究者が大変だったという話をいろいろ聞いていたというのがまず大きいです。留学生の問題とか,ただでさえ不安定な「外国人」としてアメリカで暮らすことがさらに不安にさらされることとか。

院生の頃,1年弱アメリカの大学にvisitingしていたので,そこでお世話になった大学や地域のことが心配というのもあります。新型コロナウイルス感染症に対するトランプ大統領の向き合い方はとても感染をなんとかしてくれるようには思えません。

また,日本との関係ということで言うと,私の故郷の沖縄,特に基地問題にも必ず関係があるということもずっと気がかりでした。選挙期間中に「大統領+沖縄」でTwitterを検索すると,バイデン氏が勝ったら沖縄が侵略されるという論調の投稿ばかりで残念な気持ちになりましたが…

怪しい情報とリテラシー

日本ではおそらく開票開始後から大きく話題になり,また今でも尾を引いている「不正選挙」関係の怪しい情報については,最初に書いたようにここまで日本語圏でも盛り上がるとは思っていなかったので驚きました。

個人的にはそういう情報に対するカウンターのおかげでアメリカの制度や歴史等についていろいろ勉強になった側面もあったので,情報提供してくださった方々には感謝なのですが,残念なこともありました。それは,ふだんほかのトピックについては陰謀論やデマの危険さやリテラシーの重要さについて言及するような人たちの一部(少数です)に,「真偽不明だとしても拡散するには一呼吸置いた方が良い」ようなタイプの情報や投稿を特に注意喚起等の情報を付けずに流すという行動が見られたことです(時には肯定的な場合も)。

今回,フェイクニュースや陰謀論について「(日本語だけではダメで)英語で情報を探せることが重要」のような指摘を複数見ましたが,私の上記の体験からはそれだけでは済まなそうだと言えます。なぜなら,そういう行動を取った人の中には,その気になれば英語の原著論文や英語のニュースに当たることができる(実際に過去にそういう経験がある)ような人もいたからです。もちろん,一口に「英語」と言っても得意分野や苦手なトピックとがありますので,簡単には言えないのかもしれませんが。

ただ,少なくとも私のTLを中心とした観測範囲では,不正選挙やデマ,フェイクニュースにこだわり続ける人は見かけず(ミュートしている人は確認していないので除く),時間が経ってから「「不正がある」というのは言い過ぎだった」のような訂正をしている人もいました。

偉そうに書きましたが,私も,事前の情報がなくフェイクニュース,デマ,陰謀論といったものに出会った時に自力で気付く自信があるわけではありません。だからこそ「不正選挙」なんていかにもな文脈では慎重になったり必要があれば調べたりすることが重要なのではなかったでしょうか。少なくとも,これは私がニセ科学問題や懐疑論に触れて学んだことの1つです。

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