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歯切れが悪いのは仕様です。

叱るのは難しい(できるだけやりたくない)

叱り方/叱られ方

 ちょっと前にNHKの下記の「叱られ方」に関するニュースが話題になっていましたが,

www3.nhk.or.jp

大学がこういうことやるのか,と暗い気持ちになりました。もっとはっきり災害対策,護身術,緊急避難のノウハウのような感じでやるならまだ分かるのですが…まあ大学ってダイバーシティやジェンダー関係の講演やイベントがあるところで就活のための化粧講座みたいなイベントもやっちゃったりしますから,そこまで驚きではありません。

 ときどき書いているように私自身大学で体育会の部活に入っていて,今も体育系の学生のクラスを持っているのですが,「私のためを思って叱ってくれているんだ」という学生に,私がこれまで見てきた(自身の経験から)体罰や暴力的な指導を肯定する,あるいは否定しきれない学生の姿が重なります。

叱り方は難しい

 そもそも「叱る」ってどういう行為を指すのかということを細かく考えないとあまり考えてもしかたないのかもしれませんが,私自身「叱る」というのは最後の手段にしたいと考えています。

 ちなみに,ここでの「叱る」は「叱責する」とか「恫喝する」とか「怒鳴る」とかを含む,「厳しいことを言う」にさらに発話の内容や様態の点で聞き手に攻撃的な何かが付け加えられている行為を想定しています。

 これは私が相手にするのが大学生だということが大きいです。大学生なら,相手の言い方とかではなく,言われた内容だけからたとえば自分が今厳しい状況にあるとか,良くないことをしたということをきちんと受け取ってほしいと考えています。この方針は卒論ゼミでは毎年最初に伝えます。

 でもですね…年末から年度末にかけては卒論提出から卒業判定まで特に気が休まらない日が続くのですが,もっと早い段階でもっときつい「言い方」をしておいた方がもしかしたら良かったんじゃないかと思ってしまうことがありまして。

 あ,きつくすると言っても,怒鳴るとか机を叩くとか発表資料を投げるとかそんなことはしませんよ(いずれも私が学生の頃に実際に見た行為)。

 命の危険があるとかそういうケースは別にして,日常の授業や研究の場面では,説明するとか説得するとか諭すとかそういう行為でなんとかしたいのですが,難しさも感じます。もちろん,内容として厳しいことはいろいろ言いますけど。

 実は,以前専業非常勤講師時代に1度だけ授業で声を荒げてしまったことがありまして,ものすごく後悔して2度とやらないと誓いました。今のところ破っていません。

 あと,こども(現在3歳)がもっと大きくなってくると,またいろいろ悩むんだろうなと思います。

ゼミの運営(ほとんど連絡)にLINEを1年使ってみた感想

はじめに

 今年度,ゼミの連絡にLINEを使ってみました。なのでタイトルには分かりやすく1年と書きましたが,正確には10ヶ月ぐらいですね。

 前提として,私のゼミは少人数であること(今年度は2人),私自身ふだんからLINEを使っている(家族とのやりとりだけですが)ということがあります。また,理工系の方などは「研究室」という仕組みはないと思ってください。つまり,私の他にゼミ生をサポートしてくれる院生等はいません。

 Twitterなどではしかたなく導入したという教員の発言を見かけることもありますが,私は授業でLINEやTwitterを対象にした言語研究を取り扱っているということもあって,一度やってみたいという思いがありました。

 また,ゼミやアポの時間調整,事務的な連絡がもっと簡単にできないかという期待がありました。

連絡が楽になった

 結果として,良かったのではないかと思います。また特に困った問題というのも発生しませんでした。以下簡単に書きます。

 まず,連絡が簡単になりました。特に既読機能によって相手が見たかどうか確認できるのが思ったより良かったです。もちろん環境・状況によっては必ずしも「読んだ」かどうか分かりませんし,既読回避の方法もあると思うのですが,メールだとどうしても読んだかどうか自体不明でこちらのスケジュール調整等がスタックしてしまうということがありましたので,それよりは良いと感じました。

 特にスケジュール調整は場合によっては何回かやりとりをしないといけない場合がありますが,私にとってはLINEの方がメールより負担感が少ないです。

 学生によっては望む望まざるによらず,LINEがふだん頻繁に接するツールだということが大きいのではないでしょうか。自身の他の生活の側面と卒論・ゼミの距離が近くなってしまうことが嫌だという人もいるでしょうが,そこが学生に支払ってもらっているコストの1つだと思います。

 あとこれは使う前には想定していなかったのですが,画像を簡単に送ったりそれをアルバムでまとめたり,ノートに重要な情報を記載しておくというのも頻繁に使ったわけではありませんが地味に便利でした。今年度は広告を研究対象にしたゼミ生がいたのですが,街中で撮影した広告の画像を送ってもらったりとか。

難点

 難点というほどではないのですが,LINEだとメールより送信相手を間違えるということが発生しやすいという印象があります。

 幸い家族に送る文面をゼミのグループに投下するということはやらかさなかったのですが,スケジュール調整に関する文面を違う相手に送ってしまうということはやらかしてしまいました。

 あと,私はツールとしては使いましたがスタンプ等はぜんぜん使わず文面もLINEに慣れていない人が作成する文面的なスタイルにしていたのでかなり事務的なグループができあがりました。でも,人によっては(特にふだんからLINEで多くやりとりをしている人は)学生との距離の取り方が難しいと感じることもあるかもしれません。私はTwitterの運営でもその辺りかなり意識的にやっているので,慣れているということもあります。

おわりに

 卒論生は就職活動や試験(教採や院試),また卒論そのものに追い込まれるということが発生しやすく,精神的に参ってしまうなどの理由で連絡が取りにくくなってしまうことは珍しくありません(どんな学生にも起こりうると思います)。

 学生の方はどうもきちんとした内容のある連絡や報告,あるいは進捗がないと連絡できないと思ってしまうこともあるらしく,そんな時に「既読」だけでも付けてくれるとこちらとしては助かるということがあります。もちろんかなりつらい時はLINEというかスマホすら見られない状態になってしまう人もいるのでしょうけれど。

 来年度も(ゼミ生の了解が得られれば)LINEを使ってみようかと考えているのですが,ちょっと検討中です。

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国語学史,国語の言語政策史に関する本をちょっとだけ紹介

 古典教育・国語教育関連で先日書いた記事にid:karpaさんから情報をいただきましたので,自分の知っている範囲で紹介しておきたいと思います。かなり専門からは遠いので読書案内というタイトルは付けませんでした。

dlit.hatenadiary.com

国語の言語政策史

 国語教師・日本語教師を含め一般的に広く知って/読んでほしいのはこちらなので先に載せておきます。

 言語政策については批判的な視点が重要なので,安田敏朗氏の著作をおすすめしたいです。

「国語」の近代史―帝国日本と国語学者たち (中公新書)

「国語」の近代史―帝国日本と国語学者たち (中公新書)

新書でkindle版もあり手に入れやすいのも良いですね。

 古典教育関係の文脈で漢字廃止/制限論も目にしたので下記も挙げておきますが,ちょっとハードルが高いですかね。新書の方でももう少し詳しく触れられていれば良かったのですが。

漢字廃止の思想史

漢字廃止の思想史

 あと,個人的なおすすめとして山東功氏の著作を挙げておきます。どちらかというと下記の国語学史の文脈で紹介した方が良いのかもしれませんが,「制度」という観点も出てきますので。こちらもkindle版ありです。

唱歌と国語  明治近代化の装置 (講談社選書メチエ)

唱歌と国語 明治近代化の装置 (講談社選書メチエ)

国語学史

 「学史」なので,なじみがない方はざっくり国語/日本語の研究史だと考えて良いかと思います。研究史といっても現代の「研究(者)」に近い形の話ばかりではなく、特に古い時代については人々がどのようにことばに向き合ったかの歴史なので、たとえば訓読の発生とか日本語史的な内容も含みます。

 特にいつもチェックしているというわけではないのですがkarpaさんが示してくれた古田東朔・築島裕 (1972)『国語学史』と馬渕和夫・出雲朝子 (2007)『国語学史』の2冊をちょうど持っていました。

 研究書の方では釘貫 (2013)*1や服部 (2017)*2が出ていたからか,国語学史関係の概説ももっと出ているだろうという印象を勝手に抱いていたようです。

国語学史

国語学史

 大学院生の頃に購入しました。当時はまずはこれという定番だったと思います。章立てが「上古・中古」「中世」「近世」と時代別になっているのが特徴的でしょうか。

国語学史―日本人の言語研究の歴史

国語学史―日本人の言語研究の歴史

 こちらは上のものと比べて「音韻研究」「仮名遣研究」のようにおおよそトピック別の章立てになっているのが特徴です。

 ちなみに明治以降の研究についてはどちらもあまりページを割いていませんね。

 こちらもできれば国語教育に興味のある方には広く読まれてほしいです。ただどちらも初学者にはちょっとしんどいかもしれません。

*1:

「国語学」の形成と水脈 (ひつじ研究叢書(言語編)第113巻)

「国語学」の形成と水脈 (ひつじ研究叢書(言語編)第113巻)

*2:

明治期における日本語文法研究史 (ひつじ研究叢書(言語編)第146巻)

明治期における日本語文法研究史 (ひつじ研究叢書(言語編)第146巻)