レビューというか、面白い論文を読んだのでちょっと走り書きメモ。
"complex predicate"と"restructuring"は以下の論文を読んだので。
Bobaljik, Jonathan D. and Wurmbrand Susi (2007) "Complex Predicates, Aspect, and Anti-reconstruction," Journal of East Asian Linguistics. 16:27-42.
なんというか、強力で面白いコンビだよなーこの二人はDistributed Morphologyの枠組みではないんだけれど、Morphosyntax関連の面白い研究をどんどん進めていると思う。
この論文は現象は日本語なのに日本人が噛んでない…のに面白いというちょっと悔しい論文。まあよくあるけど。そういえばこれの前のJEALに載ったCarol Tennyのやつは着眼点は面白かったけど荒いところが結構多くて読んでみたらそんなに悔しくなかった(笑)
スコープに関する現象を取り扱うときに、bound morphemeとかっていうような形態論的な要因はきちんと区別して考えましょっていう提案が自分の研究上の立場というか信念ととてもしっくりいって気持ちよかった。まあcross-linguisticallyにこういう問題を考えていくとそうならざるをえないと思うのだけれど、日本語のsyntaxの人たちは「複合動詞/接辞だから…」って簡単に言っちゃうからなー
何が「複合」なのか、ってのは形式的にやっていくと意外と難しいと思うのです。
もう一つは、
Julien, Marit (2001) "On Lexicalism," Nordlyd. 30:57-82.
こんなストライクな論文を今まで読んでなかったとは…orzというか、この筆者も勇気あるなーdissertationか本一冊のスケールのタイトルだと思うのだけれど。
以前このブログで確か「lexicalismはこれまでの生成文法に限らず、言語学者にとって馴染みやすい考え方」みたいなことを書いたと思うのだけれど、同じようなことが書いてあったので引用しておく。
"In a way, lexicalism is as old as the theory of grammar itself: it is part of the traditional wisdom that the mechanisms that are responsible for the combination of words into phrases and sentences are different from the mechanisms that are responsible for the combination of morphemes into words, hence the division of grammar into syntax on one hand and morphology on the other."
でもここでJulienが述べているのは、「文構成はsyntax、語形成はlexicon」という意味でのlexicalismだけだなあ…僕が考えているのは、もうちょっと広い意味でのlexicalismというか、「形と意味の結びつきに関する情報をどういう風に蓄えているか」という点に関する考え方としてのlexicalismってのがこれまでの言語学のスタンダードだったんじゃないか、ということだ。この辺りはもうちょっと整理しないとな…
ところで、聞きなれない雑誌名だと思ったらTromso(←ホントは最後"o"じゃないけど)のworking paperなんですね→Nordlyd
Sveniousとかも確か今Tromsoだし結構こういう話題盛んなところなのか…チェックしておかなきゃ。