誰がログ

歯切れが悪いのは仕様です。

Kratzerのあの本が

 言語学の世界にはいくつか「永遠の未刊行論文」とか、「ものすごく重要で有名でみんなが引用するのにずっとmanuscriptな論文」というものが存在しますが*1、その中でも有名なものの一つをwebで見つけました。

 動作主(Agent)のθ-roleって動詞の上にある独立したfunctional headから与えられるんだよ、って明示した(おそらく)初めての論文*2。これ、確かmanuscriptは1993年頃から出回ってて、外項の話をする人は皆引用してたんですよね。
 でも、最初は確かCambridgeとかから出版されるはずで"to appear"になったりもしてたのに、結局ずっと刊行されず、msのままでみんな引用してた覚えがありますね。
 僕は持ってる人を知らなかったのでずっと手に入らなかったのですが、読みたくて仕方なかったのです…というのも、僕も修士論文が外項に関するものでしたから。semantics archiveに公開されたのはどうも僕が修論書いた次の年っぽい…orz
 結局、修論の後は興味が形態論の方に傾いていったので、しばらく存在を忘れていたのですが…まさかこんな形で出会うとは。
 いやあ、まあちょっと悔しい話ではあるのですが、webって便利ですねえ*3という一例でした。
 ちなみに今はUMassにいるので、直接訪れてファイルをもらうことができます。ということでなんとなく有り難さも半減(笑)

*1:他の分野にも結構あるんですかね。

*2:外項を動詞から切り離すアイディア自体はMarantz(1984)を最初とするのが一般的かな。

*3:言語学は物理や医学といった分野に比べて、論文の電子化が遅れているので、こういった形で論文が手に入るかどうかはまだ結構状況によるところがあります。それでも大分便利になりましたが。