面白い(のかな)と思って読んだのですけれど↓
id:mobanamaさんも「よくわからん」とブコメに書いていた*1ようにちょっとわかりにくい記事なので、ちょこっと解説&メモを書いておきます*2。
まず、元記事の超意訳↓
D-fucking-VDっつー変な表現に出会っちゃった。
"-fucking-"っていう接中辞は主強勢(primary stress=語の第一アクセント)がある音節のすぐ左側に入り込むもんなんだよ、って今まで言われてきたんだよね。だから例えば"California"に"-fucking"を入れる場合にはCali-fucking-FORniaであってCa-fucking-liFORniaとかCaliFOR-fucking-niaってのはダメなわけ(大文字が主強勢のある音節)。
で、"DVD"なんだけど、大体どの人も最初か最後の"D"にストレスを置いて発音してるみたい。"V"にストレスがあるのは聞いたことが無い。じゃあさ、上のルールと照らし合わせて考えると"D-fucking-VDってのはダメなはずじゃん。タイポとか?それともDVDのアクセントについて勘違いしてるのかなあ。
【参考文献】
Aronoff, M. 1976. Word Formation in Generative Grammar. MIT Press.
McCarthy, J. 1982. Prosodic structure and expletive infixation, Language.
Siegel, D. 1974. Topics in English Morphology. MIT dissertation.
現象としては古典的な問題です。英語にはいわゆる典型的な接中辞は無いわけですけど、この"fucking"とか"damm"とか"goddamn"とか、Britishだと"bloody"なんかが接中辞的な語形成をやっちゃうことがあるという。でもどこにでも挿入できるかというと、そうでもない。じゃあどこに入れればいいのか、って問題について形態論/音韻論で色々言われてきました。…と言いつつ、最近の研究の動向は調べてないのでわからないのですが*3。
ちなみに例はalcでもそこそこ見つかりますね。上記の論文を読むとたくさん例が挙がってます。
上の一般化(主強勢のある音節の左側に置く)ってのはSiegel, Aronoffからすでに言われていることなんですが、もちろんそれに従わない例もあります。McCarthyの論文はそういった一見すると例外に見えるものもまとめて分析してやるぜ、ってもの。今やOTの大家であるMcCarthyがMetrical Theoryを使ってる所に時代を感じますね(McCarthyの論文はGoogle Scholarで探してすぐダウンロードできます)。
ちなみに、接頭辞"un"が付く場合はそのすぐ後に"fucking"が来るようですね。これはもしかしたら接辞付加のサイクルの研究なんかでやられてるかな?(未調査)
さらにちなみに語の中に入り込まない"fucking"は"very"と同じような強意語(副詞)として分析されてることが多いのでしょうか?類型論的に見ると接中辞は特定の環境では接頭辞として分布するケースが結構あったと思うので*4、英語でも接頭辞として分析されていても良さそうなのですが…ざっと見たり読んだりしたところではあまりそこには触れられてませんでした。まあどうしてもinfixationの方に焦点が当たっちゃうよなあ。