誰がログ

歯切れが悪いのは仕様です。

西武ライオンズの略称の形成を考える

はじめに

いわゆる「なんJ」系まとめサイトでさいきん見るようになった西武ライオンズの略称、特に「タマブラ」の語形成過程について考えます。

下記に少し触れるようにこの系統の略称は「蔑称」とされることが多いので西武が勝った日に上げようと思って準備していたらなかなか…いや勝利だけがスポーツの楽しさだけではないと言ってもやっぱり勝つと嬉しいですね。なかなか厳しい状況が続いていますがなんとかうまく乗り切ってほしいです。まずはケガ・故障が減ってほしい…

プロ野球チーム名の新しめな略称

さて、プロ野球のチーム名に対して比較的新しく使われるようになった略称があります。一番定着しているのは中日ドラゴンズの「チュニドラ」ではないでしょうか。

webで調べるとだいたい同じような経緯やほかのチームへ波及していった流れについて書いてあり、また「蔑称」であるという認識も共有されているようです。

こういうネット文化の表現を調べるにはまずニコニコ大百科だよなと思ったのですがそういえば今使えないのでした。言語に限ってもあそこにしかい情報や記述がけっこうあるのでなんとか復活(少なくともアーカイブ化)してほしいものです。

さて、私も最初は蔑称ではなかったような印象があるのですが、確かにネガティブな言及に使われることも多いかも。ただこの手のまとめサイトだとそもそもネガティブな言及そのものが多いからなあ…ちなみに、「なんJ」の文脈で使われる「蔑称」は一般的な蔑称よりもやや広い範囲をカバーする(愛称なども含む?)ことがあるように思いますが、これもデータを取って調べたわけではありません。

「西武ライオンズ」の略称の話に入る前に、例として「チュニドラ」をどう考えるか示しておきます。

「チュニドラ」は(由来はともかくとして)「中日ドラゴンズ」との対応で考えると一般的な複合語短縮です。「チュ」の後の長音が消えているのは単純な短縮・複合語短縮(複合語の一部をそれぞれから少しずつ残すやつ)によく見られる長音の脱落ですね。ほかにも撥音や促音、二重母音などが脱落します。複合語短縮形「パソコン」になるときに「パーソナル」の長音が脱落するのと同じです。

  • チュニドラ:チュ(ー)ニ(チ)+ドラ(ゴンズ)
  • cf. パソコン:パ(ー)ソ(ナル)+コン(ピューター)

このように以下、脱落した要素を()で囲み、語境界は「+」で表します。

「埼玉西武ライオンズ」の略称

ここから先、「(埼玉)西武ライオンズ」の略称である「セイブラ」「セブライ」「タマブラ」の形成過程について考えます。

日本語の複合語短縮の性質を考えると「タマブラ」がなかなか一筋縄ではいかないです。

セイブラ、セブライ

「セイブラ」は複合語短縮ではなく、語全体の語頭から2〜4モーラ取る単純な短縮ですね。「ヘリコプター」が「ヘリ」になるようなやつです。

  • セイブラ:セイブ+ラ(イオンズ)

「セブライ」は一般的な複合語短縮で、「セ」の後の「イ」がないのは二重母音の脱落ではないかと考えられます。

  • セブライ:セ(イ)ブ+ライ(オンズ)

ほかの語を見ると二重母音の脱落は「au」に多いように見えるので「ei」からの脱落がありなのかどうかは検討が必要かもしれません。以下、「au」からの脱落の例です。

  • ワンバン:ワン+バ(ウ)ン(ド)
  • サントラ:サ(ウ)ン(ド)+トラ(ック)

タマブラ

そもそも下ネタ絡みなんじゃないのというのは置いて考えると、

「タマブラ」という形を「埼玉西武ライオンズ」から導くのはなかなか厄介です。一段階の形成過程だと下記のようになりほかには見つからないパターンです。後半部分は語境界をまたいでいる感じですしね。

  • タマブラ:(サイ)タマ+(セイ)ブ+ラ(イオンズ)

「セイブラ」をベースにして段階的な形成を考えるともう少しすっきりするような気がします。

  1. セイブラ:セイブ+ラ(イオンズ)
  2. タマブラ:(サイ)タマ+(セイ)ブラ

この過程で考えたとしても各語の後半部分をそれぞれ残しているので、複合語短縮としてはかなりレアではあります(前半部分を残すのが一般的)。

おわりに

個人的には、最初に「タマブラ」という略称を知ったとき下ネタ絡みかなということに加えて、「たまプラーザ」と似ているなというのも思いました。「プラザじゃねーよ、プラーザだよ!」。


www.youtube.com