以前、Brittyさんにふっていただいた話題でしり込みしていたのですけれど↓
ふと図書館で上のエントリで薦められていた黒田龍之助『はじめての言語学』を見つけたので借りてみました。
- 作者: 黒田龍之助
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2004/01/21
- メディア: 新書
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さて、ぶっちゃけホントにぱらぱらとめくってみただけなので内容については詳しく触れません。ところどころ「自分はそこまでは言い切れないなあ」と思うようなところはありましたが、もちろん間違いというような話ではありません。むしろ、これだけのボリュームの中にこれだけの分かりやすさと話題の広さと具体例の豊富さをバランスよく実現したものだと感じました。
で、なんでこんなフライング気味の書評を書く気になったかというと最初の「はじめに」の内容をぜひ多くの人に紹介したかったからです。
一番大事なところ
この本を手に取った方は買う買わない、借りる借りないに関係なく、最初の1ページだけは必ず読んでほしい。もう全ての言語学の入門書の最初に書いておいてほしいぐらいです*2。
もしあなたが「言語学は難しいものに違いない」と想像しているとしたら、それはまったく正しい。およそ学問と名の付くもので、やさしいものなんて一つもない。言語学だって例外ではない。
でもこの本は難しくない。なぜならばこの本は「言語学は一つの科目である」というつもりで書かれているからである。
科目というのは本格的な学問への入り口という意味である。高校にも数学や科学といったようなものがある。科目は学問と違って無限に広がっているわけではない。ある一定の内容をしっかり押さえるだけでいい。だからそんなに難しいことにはならない。そしてそれを卒業したらまた先へ進めばいいのである。
黒田龍之助『はじめての言語学』p.3、強調はdlit
この後のどの章を飛ばすとしても、ここだけは飛ばしてはいけません。このエントリもここまで読んでいただけたら本望です。
他にも大事なところ
あといくつか「はじめに」から重要なところを抜粋。
とくに理解してほしいのは、言語に対する考え方である。知識ではない。言語をどう扱えるかということが大切なのだ。
黒田龍之助『はじめての言語学』p.5、強調はdlit
ということなので、トリビアの集積としてこの本を読まないようにお願いします。
世の中は広いのである。日本語と英語だけをもとに、世界の言語はこんなものか、と思っていただいては困る。ときどきそういう考えの《言語学者》がいて、もっと困る。
黒田龍之助『はじめての言語学』p.5-6
生成文法の研究者が言うんじゃねーよ、とお思いの方もいらっしゃるかもしれませんが、そういう生成文法のヒトがいたらどんどん批判していただいて結構。というか、僕もたまに頭が痛いことが。
さらに他にも
「はじめに」には他にも大事なことが書かれているのでぜひそこだけでも通して読んでみてください。「はじめに」は読めたけど全部は無理、という人でも頑張って「第1章 言語学をはじめる前に―ことばについて思い込んでいること―」を読んでもらえると嬉しいです。
あと、個人的には「第6章 言語学の使い方―言語学がわかると何の得になるか―」にある、「インチキな言語論に騙されない」も読んでほしいところです。
最後に、この記事のせいで本が売れなくなった、なんてことになると困るのでお金に余裕のある方は買ってじっくり読んでみてください。あと、名前の最後の「すけ」は「助」であることに注意してください(検索でうまく探せなかったりします)。
こういう本のおかげで、言語学の考え方、みたいなものが多くの人になんとなくでいいので広まってくれると嬉しいなあ。あ、もしゆっくり読んだ後でこれは何か解説した方がいいと思うところがあったら、改めてエントリをたてます。
さて、このシリーズのその2はいつになるのか。