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歯切れが悪いのは仕様です。

起点を表す(ように見える)「に」に関する先行研究

 「太郎 に/から 本を借りた」みたいなやつ。

 卒論でやったので先行研究のみ挙げておく。ちなみに、僕が卒論でこの現象にある程度以上言及している先行研究として挙げたもので再検討はしてないので、見落としとかその後出た研究とか、他にもあるのではないかと思う。あと、書式も特に揃えていない。

  • 池上嘉彦 1981『〈する〉と〈なる〉の言語学』大修館書店.
  • 井島正博 1997「授受動詞文の多層的分析」『成蹊大学文学部紀要』32 成蹊大学文学部 pp.63-94.
  • 松本曜 2000a「『教える/教わる』などの他動詞/二重他動詞ペアの意味的性質」山田進・菊地康人・籾山洋介編『日本語 意味と文法の風景:国広哲弥教授古希記念論文集』pp.79-95 ひつじ書房.
  • 松本曜 2000b「日本語における他動詞/二重他動詞ペアと日英語の使役交替」丸田忠雄・須賀一好編『日英語の自他の交替』 pp.167-207 ひつじ書房.
  • 柴谷方良 1978『日本語の分析』大修館書店.
  • 菅井三実 2000「格助詞「に」の意味特性に関する覚書」『兵庫教育大学研究紀要』第20巻 分冊2 pp.13-23.
  • 菅井三実 2001「現代日本語の「ニ格」に関する補考」『兵庫教育大学研究紀要』第21巻 分冊2 pp.13-23
  • 杉本 武 1986「格助詞―「が」「を」「に」と文法関係―」奥津敬一郎・沼田善子・杉本武『いわゆる日本語助詞の研究』凡人社.
  • 杉本武 1991「ニ格をとる自動詞―準他動詞と受動詞―」仁田義雄編『日本語のヴォイスと他動性』pp.233-250 くろしお出版.
  • 和気愛仁 1996「『に』の機能」『筑波日本語研究』創刊号 pp.59-72 筑波大学 文芸・言語研究科 日本語学研究室.
  • 和気愛仁 2000「ニ格名詞句の意味解釈を支える構造的原理」国立国語研究所『日本語科学』第7号 pp.70-93.

 うち、柴谷1978、杉本1991、井島1997はこのニ句を「動作主」であるとしている。菅井2000は動作主説は取らず起点の「に」が可能になるのは着点側(ガ格)からの「働きかけ」が重要な要因であるとしている。現象の指摘・記述だけでなくある程度の分析もしているのはこの辺り。あと松本2000a, bは、「に」にはあまり焦点を当てていないが、関連する動詞の意味構造についてかなり参考になった記憶がある。詳しい事は各文献を参照。

 ちなみに僕の卒論の主張は、菅井の論では説明できない現象があって、やっぱり動作主説の方が筋が良いのではないか、というものだった。