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歯切れが悪いのは仕様です。

東京オリンピック・パラリンピックのコンセプトは多言語化してほしい

追記(2021/07/22)

こちらの記事もぜひ合わせてお読み下さい。というか私の記事よりこちらを。

rikayamashita.hatenablog.com

--追記ここまで--

東京オリンピック・パラリンピックのコンセプトに関するインタビュー記事を読んでかなり驚いたので記録しておきます。2021年に行われるオリンピック・パラリンピックに関するイベントがこのような認識・方針の下で行われるというのは個人的には信じがたいので,もしかしたら記事が正確なところを伝えられていないのかもしれません。もし修正や補足が必要なら,早くした方が良いのではないでしょうか。

www.nikkansports.com

この記事については「復興五輪」の扱いやインタビューの聞き手に対する行動を問題視している指摘を複数見ました。

私が気になるのはやはり言語のことです。簡単にまとめると,ダイバーシティ(多様性)が重要というのなら,英語という1つの言語ではなく(できるだけ)多言語でやりましょうよとなるかな。

聞き手「コンセプトが全て英語だが高齢者の方も読むし、日本の新聞なので日本語表記がほしい」
日置氏「コンセプトの日本語は用意していない。世界に分かってもらいたいということで英語のみになった」
五輪パラ開閉会式統括、組織委日置貴之氏が共通コンセプトに込めた思いとは - 東京オリンピック2020 : 日刊スポーツ

できるだけ(方言も含めた)多言語でやるのが今の最低限というかスタートラインだというのが私の感覚です。「最低限」「スタートライン」と書いたのは,多言語対応が達成されたからといってそれだけでダイバーシティー(多様性)が保証されるとは限らないということです。私の感覚がおかしいのか,あるいは私が不勉強でさいきんの流れについていけてないのでしょうか。あと,インタビューの聞き手の方が指摘している問題も情報保障のことを考えると簡単には切り捨てられないポイントだと思います。

上にも書いたようにインタビューが端的過ぎるのかもしれませんけれども,「世界に分かってもらいたいということで英語のみ」という表現では一昔前の「グローバリズム(+英語帝国主義)」との違いがよく分かりません。ちなみに私の頭に最初に浮かんだ用語は「近代帝国主義(標準語の制定とか方言抑圧とか)」でした。

確かにオリンピック・パラリンピックに出るような選手や関係者には一般的な水準より英語ができる人が多そうですが,英語ダメという人はぜったいに含まれていないと言えるのでしょうか。そもそもオリンピック・パラリンピックは選手や関係者だけが関わるものではりませんよね。

一部のコンセプトについては英語としてどうなんだろうという指摘もTwitterで見かけましたけれども,私は英語に四苦八苦している人間なのでその辺りは詳しい人にお任せします。

邪推すると,関連しそうな要因としては時間がなかったという辺りが思い浮かびます。「参加国の公用語」辺りに限ったとしてもそれぞれで対応する表現を確認するのは大変そうですね。それにしても何かやりようはなかったのでしょうか。たとえば最初は用意できた数言語からはじめて,大会中にどんどん対応する言語を追加していくとか。それなら思わぬ言語・方言の情報も寄せられるかも。

まあ実際やるとなるとまずまとめるだけでも大変そうです。また,特定のフレーズ,特定の言語について「(短い表現では)うまく訳せません」というケースもけっこう出てくるのではないかと思います。しかしそういうことこそが,ダイバーシティ(多様性)の体現・体験なのではないでしょうか。

くどいようですけれどもまとめとして書いておくと,「ダイバーシティ(多様性)」と「英語だけでやる」というのは相反しているようにしか思えないので,必要なら関係者は追加の説明をした方が良いのではないかと思います。あとこちらも重要な用語である「インクルージョン」と対応する日本語表現を「調和」とするのは私には違和感があるのですけれども,これは定着した使い方なのでしょうか。

ちなみに,オリンピックの公式の言語としては英語以外にフランス語もありますけど…という話を書いておこうかと思ったらこんな記事を見つけました。記事の後半には東京大会に特に問題があるというわけではないというコメントなんかも紹介されていますけどね。そもそも2019年の記事なので今は改善されている可能性もあります。

www.usatoday.com

最後に,言うまでもないことであってほしいのですけれど,多言語の中にはもちろん手話も含まれます。しかしこんなニュースも出ていますので,あまり希望は持てないのかもしれません。しかしこの件自体そうとうひとく/まずくないですか。個別の調査・報告・説明が必要なレベルでは。

www.washingtonpost.com