誰がログ

歯切れが悪いのは仕様です。

英語の敬語?の話:公的な場で質問する場合

※このエントリの内容は、非常に英語能力に乏しい僕の一年にも満たない留学(北米東海岸)の体験談に基づいています。過渡に一般化なさらないようご注意ください。
 さて、ずっと書こうと思ってた話題なんですが、きっかけは以下のエントリ↓

についた、id:mobanamaさんのブコメ

冒頭から『英語には、ほとんどと言っていいほど敬語の表現がありません』かよ。ひくわ。米語口語限定にしてもどうよ。最低限英語一般と混同しない方がいいんでは。アメリカだけが世界じゃない。/唐突なMoeって誰よ。
はてなブックマーク - もっと気楽に英語をしゃべりませんか : ライフハッカー[日本版], 仕事も生活も上手くこなすライフハック情報満載のブログ・メディア

「『英語には、ほとんどと言っていいほど敬語の表現がありません』かよ。ひくわ」って部分にはすでにスターを付けてます*1。以前から、いや、英語の敬語(に当たる表現)はあなどれないんですよ、ということは知識としては持っていたのですが、それを留学中に実感したことを書いておこうと思いまして。

 それは何かというと、少なくともアカデミックな環境では

  • ある程度公的な場で質問をする場合、Wh-word(What, How, Whyなど)から始まる疑問文は(ほとんど)使われない。

ということです。代わりに何を使うかというと、

  • I am/was wondering wh-(Yes-no疑問文の場合はwhether)

を使います。たまに

  • I wonder wh-

を使ってるのも聞きました*2
 少なくともアメリカの大学などの研究環境における人間関係では、教授と学生という関係でも名前で呼び合う、というのは有名な話です。そして実際にそうです。授業の直前や博論(dissertation)のディフェンスの直前でも非常にフランクな雰囲気でfacultyも交えて軽いジョークを飛ばしあっていたりしますし和気藹々としています。
 しかし、そんな文化の中で、数年間同じ学科(department)に所属している間柄であっても、質問する側が教授で答える側が学生であっても、授業の中の質問で上にあるような丁寧な質問の仕方が良く使われたりするのです。もちろん、人柄やその時の雰囲気みたいなものもありますから、時と場合によるという側面もあるのですが、僕が驚いたのは学会などでなく「ほとんど知り合いしかいない授業の中でさえ」そうだ、という点です。
 という話を以前僕より国際学会などへの出席経験が多いある後輩に話したら、そういう学会や分科会などでも上で書いたような傾向があるそうです。知らず知らずのうちにそういうちょっとした表現の使い分けで礼儀(マナー)を知らないやつ、という第一印象を持たれたらこわいね、という話もしました。
 もちろん、授業の中でさえ、というのは僕が行ってたUMassという大学の言語学科に限られた文化だという可能性もありますし、留学生が多いですから*3ストラテジーとしてより丁寧な表現を使っているという側面もあるのかもしれません。
 ただ、公的な場、ということに関して言うと結構この手の表現の使い分けってのはありますよ。洋画などを気をつけて見ていると、講演で聴衆が質問する、というような場合に上で挙げた丁寧な質問表現が使われるのを時折耳にします。
 日本語でも普段は愛称で呼び合っているのに授業の中で呼ぶ時はさん・君付けにしたり、普段なら「〜なの?」とか聞くところを「〜なんですか?」と聞いたりするのとほとんど同じ感じですよね。
 しかもこの表現、結構便利です。

  • Wh-wordの後は間接疑問文になるので、主語助動詞倒置をやらなくてよい。
  • I am/was wondering...と発言している間にその後の文を考えられる(し、この部分をゆっくり言えばさらに時間稼ぎできる*4)。

 もちろん、言語学以外の分野では、とかアカデミックな場以外ではどうなのか、とかアメリカの他の地域では、あるいはイギリス、オーストラリアなどでは?とかっていう疑問には僕は経験も知識も不足していて答えられませんし、場ごとにローカルルールがあったりするでしょうから一概には言えないのですが、英語にだって場/相手に合った表現というのは結構細かく存在しています。
 間違いを怖がって英語を口にしない、というのは確かに英語の能力を伸ばす上でマイナスになることがあるので、上で紹介した記事で言いたいことも分かるのですが、ビジネス、あるいはアカデミックといったより上級の、特定の場面に特化した英語を見据えるのであれば「英語には敬語はほとんど無い」なんて言っちゃうのはちょっと言いすぎかな、と。

*1:後半部分にも頷くところが多いです。

*2:ただ、特に発話の最初に顕著かもしれません。会話のやりとりの途中ではもっとフランクな質問表現を使っていたような気もします。

*3:ただアジア出身の留学生はほとんどいませんでした。

*4:特にwoderingのところでwonderしている感じを出すとか。