誰がログ

歯切れが悪いのは仕様です。

2019年の年間ベスト(個人的おすすめ)記事

はじめに

もしかしたら年内もまだ何か書くかもしれませんが,もうまとめてしまいます。

この記事は自分がその年に書いたブログ記事の個人的おすすめのまとめで,id:gryphonさんの下記の提案に賛同してここ数年やっているものです。まとめる過程で自分の書いたものでも読んでいて面白かったりするのでおすすめですよ。あと私のブログは連続で更新したかと思うと数ヶ月休んだりという超不定期更新なので,比較的読みに来てくれる方でも見逃しているものがあるのではないかということも考慮しています。

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今年は2019年研究まとめの記事でも書いたように,比較的研究成果が形になった年だったので,少し報われた感がありました。でも私生活でも引越があったりでやっぱり1年通しで厳しかったような気がします。しかし今年の私以上の研究成果(量だけで言えばこれが平均以下だという分野もありそう)を継続的に出し続けている研究者はたくさんいるわけで,ほんとうにどういう生活をしてるのか想像もつきません。

年末年始締切のおしごともいろいろありましてあまりゆっくりできなそうですが,みなさまは良いお年をお迎え下さい。

過去のもの

読んでみてほしい記事

今年のトップはやはり「やさしい日本語」についての下記の記事でしょうか。私が書いたものではかなり読まれた方ですが,いくらでも少しでも宣伝し続けた方が良いことですので改めて。

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あと,かなり勇気を出して書いた割には公開後思ったより静かだったということで,『中動態の世界』に関する記事を上げておきます。まあ内容がぐだぐだなので,当然と言えば当然かも。

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最後は,毎回それほど読まれていないような気がするのですが私にとっては大切な沖縄に関する記事。

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残りは,カテゴリー毎に分けていくつか列挙していきます。

教育

今年は入試を中心に一般的にもかなり話題になったということもあって,(国語)教育に関しても少し書きました。

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研究

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言語学

上ですでに挙げた「やさしい日本語」と『中動態の世界』に関する記事がここに入るのですが,それ以外だと下記のものぐらいでしょうか。

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身の周りのことば

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読書案内やまとめ

自分が関わった本の紹介が多かった分?あまり書かなかったようです。

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ジェンダー

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子育て・生活

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おわりに

記事数だけ見ると例年より多かったのですが,宣伝や告知の記事も多かったので,まとめてみると例年並みかやや少なめという印象です。

2019年に買ってよかったものについてちょっとだけ(アプリ・サービス・サブスクリプションを含む)

今年もアイディアはありながら書けなかったネタはいくつかあるのですが,これぐらいはいちおう年内に書いておこうかなと。ガチで有用な記事はほかにたくさん出ていると思いますので,思い出せる分だけざっくりと。

モノ:Apple Watch (Series 5)

スマホをiPhoneに変えた

dlit.hatenablog.com

のをきっかけに,時計もFitbit BlazeからApple Watchに変えてみました。

www.apple.com

今のところ快適です。良い点は下記の辺りでしょうか。

  • 各種通知をスマホを取り出さないでも確認できるのはやっぱり便利。特にメール,LINE,カレンダーの予定,リマインダー
  • 通知がiPhoneと連動していてWatch側で消せる。また,メールの消去やリマインダーの完了等基本的な操作も可能
  • iPhoneでセットしたアラームやタイマーで音が鳴ったときにWatch側で止められる
  • 音楽のコントロール

アプリはそれほどいろいろ使っているわけではなく,通知以外だとカレンダーの予定が確認できるのが地味に便利です。大学の授業の教室がかなりばらばら(建物も構内にばらけてる)なのと学会や研究会ではじめての場所に行くことが多く,イベントの場所が確認できると助かるのです。ちなみに,授業の予定はぜんぶカレンダーアプリに入れてあります。学期の最初の登録作業がめんどうですが簡単な授業の記録や計画も書き込めるので便利ですよ。

運動,睡眠の記録やライフログ系もいちおう使っています。ただ私はそこまで細かくログを取る方ではありませんし,Fitbit Blazeでも満足していました。アプリがいろいろあるのと,iPhoneとの連携がスムーズなのは良いポイントなのかもしれません。休日に育児でへとへとになってる時に「今日そんなに運動してないんじゃない?まだ挽回できますよ」って言ってきたり,(筑波大学の)教室移動しているだけで「屋外ウォーキング中?」って聞いてきたりするのは煽られてる感じがして好きです。

期待していて思ったより便利じゃないなと思ったのが,Keynote等のスライドのコントロールです。私はけっこうノートも見ることがあるので,MacBookをプロジェクターにつないでiPhoneでリモート操作した方が使いやすかったです。

やっぱり心配なバッテリーは,常時点灯モードでも1日1, 2回の充電で済んでます。もちろんFitbit Blazeよりは気をつける必要があります。あと思ったよりモバイル用の充電関係アイテムがなくてちょっと驚きました。今は下記のものを念のため持ち歩いていますが,家での充電を忘れた時以外はほとんど使ってないです。

[asin:B07PPR3YKY:detail]

ちなみにバンドは下記のものに交換しました。革のものは今まで非スマートウォッチを含めほとんど使ってなかったのですが,思ったより良いです。Apple Watch本体が軽いので,こういうバンドと組み合わせるとものすごく軽くなりますね。時計にある程度の重量感がほしい方は金属製の方が良いのかもしれません。

サービス・サブスクリプション

Grammarly

www.grammarly.com

プレミアムユーザー継続中です。

ことしの前半は例年より英語で論文やら何やら書いてだいぶ使ったのでレビューを書こうと思っていたのですが,先延ばしにしている間に大幅なアップデートがあってどうしようってなってます。

原稿を英文校閲のサービスに出して「お前の英語良いじゃん」って言われるような人にはあまり必要ないのではないかと思いますが,査読のたびに高確率で「ところでお前の英語ちょっと気になるんだけど…」って一筆書かれるような私にとってはありがたいサービスです。以前は1Checkerとかを使ってたんですが,文法の基本的なところについては書いている途中にどんどん指摘してくれる方が良いですね。

実際,英文校閲に出した際に文法関係の修正がかなり減りました。悲しいことに私の英語力が上がったわけではないのは確かなので,Grammarlyのおかげかなと思います。

ただ,論文みたいな文書だとやっぱり人が見る英文校閲(あるいはそれと同レベルのネイティブチェック)がないと厳しいのではないかと思います。実は試しに追加料金を支払って人が見てくれるという特別チェックにも出してみました。確かに早くて専門的な英文校閲より安いんですが,論文のチェックには精度が足りないと思うので,最初からしっかりしたサービスに出した方が良いでしょう。

アプリやプラグイン関係で一番困るのがMacのWordプラグインがないことですね…私はけっこうWordで書かなきゃいけないことがあるので。ただ専用のエディタアプリはけっこう快適です。シンプルな分執筆に集中できますし,チェックも早いです。あと,さいきんのアップデートで書式がかなりいじれるようになったのも個人的には便利です(言語学だとイタリックをけっこう使います)。

学生の卒業論文の英文概要の添削にも使ってみたのですが,「そもそも日本語の無理な直訳なので,前後の文と合わせて構成を一から考え直した方が良い」みたいなケースの発見にはそれほど強くない印象を持ちました。それでも基本的な文法のチェックをかなりの部分お任せできるのはやっぱり楽ですね。

OmniFocus

www.omnigroup.com

私と仕事等したことがある方は,きっと「お前タスク管理サービス使ってあんな感じなのか」と思われるでしょう。使ってなんとかあんな感じに到達しているという感じです。

これの前はTodoist,2DOと使ってきたのですが,使用デバイスがアップル製品ばかりになったので試してみることにして,思ったより良かったので使い続けています。迷った末デバイスがいろいろあるのでアプリ毎の購入ではなくサブスクリプションに。

よく指摘される同期の遅さはあまり気になりませんね。確かにThingsとかに比べると遅いですけど。やはりパースペクティブが便利なので,使うならProが良いのではないかと。ただ高いですよね…

みてね

(家族との)写真や動画の共有サービス・アプリです。パソコンからも作業したいことがあるのでプレミアムユーザーに。

mitene.us

これまでは親にiPadをプレゼントしてLINEで子供(つまり孫)の写真や動画を送っていたのですが,LINEは一定期間過ぎるとダウンロードできなくなったりするので,慣れればこちらの方が便利かと思います。もちろん,人によっては他のクラウドサービスとかでも大丈夫でしょうけれど。

アプリ(iOS)

Moca

「Moca」は月表示機能(の見やすさ)に特化したカレンダーアプリです。

moca.aill.org

確かに見やすい。(ダークテーマの)きれいさならInformant 5とか,メモまで一覧できるという点ではGLANCAとかいろいろあるんですが,スマホはどうしても表示領域が小さいので見やすさが重要になってきます。ちなみにウィジェットへの表示ならFantasticalがいちばん見やすいと思います。ぜんぶこれ1つでいけるというカレンダーアプリってのはなかなか難しいですね。

アプリは今年購入してよく使っているものはこれぐらいで,後は以前から使い続けているものが多いですね。力尽きたのと意外と長くなりましたのでこの辺りで終わりにします。

「死ね」の丁寧語を文法的に考える

下記の記事及びその反応で挙げられているのは,おおよそ「「死ね」を丁寧にした表現」だと思うのですが,ここでは文法的に考えてみます。

anond.hatelabo.jp

以下,「死ぬ」で議論すると「死ぬ」およびその関連形態がたくさん出てきて嫌な感じになりましたので,述語を「眠る」に変えます。

具体的には,文法的な「丁寧」(形態としては「です」と「ます」,「尊敬」とは分けて考えます)と述語「眠る」の文法的な「命令」の可能な組み合わせを検討します。

「眠れです」

「眠る」のいわゆる命令形と丁寧語に関わる形式である「です」の組み合わせを考えると「眠れです」になります。サザエさんSSに出てくるタラちゃんが言ったりしているかもしれません。

おそらく命令形+「です」には気持ち悪さを覚える人が多いのではないかと思いますが,現代語では「です」がかなり多様な表現に付くようになっているという報告と研究があります。気になる方は学会誌『日本語文法』掲載の新屋映子 (2015)「新しいデス文—その機能と実態—」という論文などをご覧下さい。

ci.nii.ac.jp

ただ,この論文では「練習をするです」「冷え込んでましたです」のような表現は取り扱っていますが(p.68),命令形を含む命令表現には触れていないようです。

また,元々「です」には1) 名詞述語文に用いられるテンスを担えるもの(雨でした),2) 形容詞述語文に用いられるテンスが分化しないもの(赤いです),3) 「ます」+否定+「た」の組み合わせでテンスを形態的にサポートするようなもの(分かりませんでした)の3つがあることが知られていましたが,新屋 (2015)で指摘されている新しい「です」は「ピザは食べませんでしたです」のように他の「です」と一緒に用いられかつ構造的にかなり文の外側に出ることがあるようで,名詞述語文の「です」と一緒に「丁寧(語)」としてまとめてよいかどうかは議論の余地がありそうです。

実はほとんどこの「です」の話が書きたかっただけなので,以下は余談です。

他の形式

もう1つシンプルな案としては「眠る」をまず丁寧形「眠ります」にしてさらに命令形にした「眠りませ」が考えられますが,少なくとも現代日本語(共通語)では不可能な形態でしょう。妥協案として他の表現を挟み込んで良いと考えると,「眠って下さいませ」が最もシンプルかつ形態の組み合わせとして可能な表現かもしれません。

他の可能性としては,「命令」を広く取ってテ形やル形(いわゆる終止形),ノダ文による命令を使い,上で紹介した新しい「です」と組み合わせる可能性が考えられます(他にも「なさい」とか)。ただ,実際にやってみると「眠ってです」「眠るです」「眠るんです/眠るんだです」となって,私としてはあまり「命令」っぽさが感じられません。副詞でサポートしてやって「とっとと眠れです」ぐらいにすればなんかどこかで使われていそうな気もします。

役割語や特定のキャラが使う表現を対象にすると,さらに可能性は広がりそうですが(お嬢様ことばで「お眠り遊ばせ」とか?),あまりいろいろ浮かんでこないのでこの辺りで。

dlit.hatenadiary.com

追記(2019/12/26)

下記の論文集の補充法 (suppletion)に関する論文で少し書いたのですが,

レキシコンの現代理論とその応用

レキシコンの現代理論とその応用

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: くろしお出版
  • 発売日: 2019/11/27
  • メディア: 単行本

「死ぬ」は2モーラ語幹動詞では珍しく尊敬形が補充形(極端な不規則形)っぽくなります(×お-死に-になる/お-亡くなり-になる)。ほかの不規則形が出るやつはだいたい1モーラ語幹なんですよね(×お-着-になる/お-召し-になる,×お-見-になる/ご-覧-になる,…)。「死ぬ」という表現がその意味から忌避されやすいなんてことが関わっているのでしょうか。ややこしいことに私の論文ではテストをすると動詞の不規則な尊敬形は(典型的な)補充法ではないという結論を導いているのですが,この議論はさすがに専門的過ぎるのでここでは割愛。